「蛙化現象」というワードが流行っている。6月に発表された「Z世代が選ぶ2023年上半期の流行語ランキング」で1位になったことをきっかけに、じわじわと上の世代にも浸透してメディアでもよく耳にするようになった。
この「蛙化現象」とは、好きだった相手が自分に振り向いてくれた途端に、なぜか「気持ち悪い」と感じて冷めてしまう現象を指すようだ。醜い蛙が実は魔法をかけられた王子様だった、という童話の逆で、王子様だと思っていたら魔法が解けて蛙になってしまったというわけだ。
女性のための恋愛解決メディア『恋するうさぎ』(https://www.70-f.net/)は10代から50代の女性200名に「蛙化現象」についてのアンケートを実施した。その結果、50.5%の女性が「蛙化現象を経験したことがある」と回答した。
では100年の恋も冷めさせてしまうのは男性のどういう言動なのだろうか。アンケートに寄せられた意見を紹介しよう。
【蛙化現象が起きたとき・その1】
《高学歴でいい年をしているくせに、箸の持ち方が悪かったのを見たとき》
《私服がダサかったとき》
《飲食店で店員さんへの態度が悪かったとき》
《路上での煙草の吸殻やガムのポイ捨てを見たとき》
《彼がニートだということを知った瞬間》
《鼻毛》
《いつも仲良く遊んでいたのにある日突然、ふた周り以上も年下の子に対して急に『うるせぇよ!黙ってろや』と高圧的な言葉を吐いたとき。普段はまったくそんなことを言わない人だったので、急に「なに?」「ダサいなあ」と思ってしまいました》という意見もあった。これらの意見はわりと身に覚えがある人も多そうな内容だ。だが、こういった意見は実はごく一部。「えっ、こんなことで?」と言いたくなってしまうような回答が多い。女心は不可解だ。
【蛙化現象が起きたとき・その2】
《短髪が好きだったのに、髪の毛が伸びて長髪になってたとき》
《バレンタインのお返しに手作りのガトーショコラをもらった時。結構上手に焼けていて、なんか気持ち悪く感じてしまった》
《彼が家に来た時にソファに座ったのですが、彼の座り方が内股でした。そのまま肩にちょこんともたれかかれて冷めました》
《相手がとても綺麗好きでそれを目の当たりにしたとき》
《道案内を頼んだのに全然違っていたとき》
《LINEの絵文字がやたらと多い》
《それまでそんなことしたことなかったのに、急に頭を撫でられたりラインで「ずっと一緒にいようね」と言われるとぞわっとしますね^^;》
お菓子作りが上手だったり、綺麗好きなことのどこに罪があるのかと、つい言いたくなってしまう。だが、次にあげるような理不尽すぎる理由を見れば、これらの意見もまだまだマシなパターンのように思えてくるのだ。
【蛙化現象が起きたとき・その3】
《相手に好きと言われたとき》
《片思いだと思っていた相手から告白された時です》
《相手も好きになってくれて連絡をこまめにくれたり、誘わられるようになって》
《好きだったはずの人が、私への手紙をもって駆け寄ってくる姿をみて「きもっ」となりました》
《食事に二人で行くなど実際にデートをするとき》
《相手に好意があることが伝わったのか急に距離感をちぢめてグイグイ迫ってきたり触れてきたり良い所をみせようとしてきたりしたとき》
「好き」と言ったり、デートに誘うと嫌われるって、もはやどうしたらいいのかお手上げだ。この蛙化現象とは何なのか。これまでに15000件以上の恋愛や性に関するカウンセリングを行っている恋愛カウンセラーの西郷理恵子氏に話を聞いた。
「蛙化現象という言葉が流行ったせいか、単に好きだと思ってつき合ったけど、カッコ悪いところを見て冷めた、という一般的な現象と、本来の意味での蛙化現象がごっちゃになっている感じがしました。
私の理解では蛙化現象は主に10代から20代の女性に限定的な状況で起こる恋愛現象だと思っています。恋愛経験に乏しいことが大きな特徴です。なので、2~3人つき合った経験があるというならそれは蛙化現象ではなく、ただ冷めただけです」
では、実際にどういうときに起こるものなのだろうか。
「蛙化現象が起きてしまう女性にはさらに2つの特徴があります。1つは自己肯定感が低い人。多少コンプレックスがあるとか、あまり自分に自信がないとかっていうレベルじゃなくて、本当に『私、自分が大嫌い』と言い切ってしまうぐらい本当に自己肯定感が低い人です。
まさにこじらせてるっていう感じ。こういう人は『そんなことないよ。君のことが好きだよ』って言ってくれる男性に対しても不信感や違和感しか感じません。だから好きな男の子から告白されたり、好意を向けられたりして、片想いから両想いになったにもかかわらず、『嬉しい』ではなくて『気持ち悪い』になってしまうんです」
そしてもう1つは性的なものに関する嫌悪感からくるものだという。
「女性は同世代の男性と比べると、あまり自身の性欲に対して自覚がないんです。好きな男性をカッコイイと思って、ただドキドキしてるだけで満足で性的なものには免疫がない。だから、相手から向けられた好意の中に性的なイメージを感じると違和感を覚えてしまう。ちょっと手を繋がれただけで気持ち悪いとか、生理的に無理とかって言葉が出て来るんです。
こういった自己肯定感の低さと、性的に見られることの嫌悪感のどちらか、もしくは両方あるものが本来の蛙化現象だったはずなんです。このアンケートの回答で言うと、3つめのグループに蛙化現象だと思われるコメントが多いです」
だとすれば、男性側はいくら自分の言動に気をつけていても、「蛙化現象」を防ぐことは出来なさそうな気がするのだが…。
「結局、男性側の言葉とか態度とかじゃなくって、女の子が恋愛的に未熟な状態で、自己肯定感が低いことによって、蛙化が起こったわけです。男性のせいではないから、悲しいけど、どうにもできないし、やってあげられることがない。本人が克服するしかない。だからなんで振られたんだろうとかって思い悩まずに、仕方なかったんだなって、自分を慰めてもらいですね」