北海道蘭越町湯里の地熱発電調査現場で大量の蒸気が噴出している問題で、事業者の三井石油開発(東京)は、基準を大幅に上回る濃度のヒ素が確認された敷地内の水を、近くの大湯沼へ放出した。
金秀行町長は7日、「住民の健康を害する」として強く抗議した。
同社は6日、敷地内で採取した水から飲料水の基準の1590倍に相当する1リットルあたり15・9ミリ・グラムのヒ素が検出されたと発表。併せて、これらの水を敷地から約500メートル南西の大湯沼方面に流したことも明らかにした。
大湯沼は、巨大な鍋が煮たっているような景観で知られる温泉の沼で、周囲には遊歩道がある。隣接して温泉入浴施設「町交流促進センター雪秩父」もあり、日常的に観光客や地元住民が多く訪れる場所だ。
金町長は「住民の健康を害し、環境汚染に直結する深刻な事態である」として、すぐに放出をやめるよう抗議し、水処理について道と協議するよう求めた。
抗議を受け、同社は対応を検討している。
一方、町は7日、町の健康被害相談窓口に新たに1人から体調不良を訴える電話があったと明らかにした。これで、噴出により体調を崩したのは3人となった。蘭越土地改良区は7日、現場周辺河川の上流域に出していた農業用水の取水制限について、ヒ素の濃度が基準値を下回ったとして解除した。これで取水制限は全て解除されたことになる。