1日20時間眠り続ける中学生100万人に1人の希少疾患「クライネ・レビン症候群」診断が出づらく周囲の理解が得られない実態【news23】

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1日のうち20時間眠り続ける病気「クライネ・レビン症候群」。身近な家族でさえ「怠けている」と感じてしまうなど周囲に理解してもらうのが難しい病気といわれています。【写真を見る】1日20時間眠り続ける中学生100万人に1人の希少疾患「クライネ・レビン症候群」診断が出づらく周囲の理解が得られない実態【news23】父「成長期の子どもが何時間ぶり…」学校も欠席する日々が続く世界で約600例しか報告されていない希少疾患で、眠り続けるのは沖縄県に住む中学2年生のひろと君(仮名)です。ひろと君の父親「1日20時間眠り続けて、何をしても起きないような状況です。わけがわからないっていう混乱ですね。本当に5分おきに息しているかなって確認しているような状況がずっと2週間くらい続きました」

ひろと君は、2023年1月、突然、1日に20時間眠り続け、起きられなくなってしまいました。父親「(肩を叩きながら)おはよう。起きれない?」はじめは、ただ学校をさぼりたいだけだと思い、父親もひろと君に強く当たっていたといいます。しかし、診断された病名は、「クライネ・レビン症候群」(反復性過眠症)と呼ばれる過眠症でした。100万人に1~2人の割合で発病するといわれる希少疾患です。父親「病気になってから調べたら、こういう睡眠の記録を書いた方がいいと。一時は(睡眠時間が)11時間くらいの日もあったんですけど、翌日は20時間。睡眠時間が短い日の次は、逆に睡眠時間が長くなる」毎日の睡眠時間は16~20時間。学校も欠席する日々が続きました。一度起きてお茶を飲んだ記憶なしひろと君「3分くらい抗ったけど『眠い』と結局寝た」ある日の午前11時すぎ、ひろと君が起きてきました。すると、すぐにリビングのソファーで寝はじめました。父親「寝たら意味ないんだわ。お茶飲んで」ひろと君はお茶を飲むと、部屋に戻ります。父親「また寝る?」お父さんが布団をかけて、ひろと君はまた寝ました。約30分後、再び起きてきたひろと君。父親「トイレ?起きる?良かった」おもむろに冷蔵庫を開けるひろと君。お父さんが再び声をかけます。父親「お腹空いた?」ひろと君「うん」父親「今すぐご飯作るから、ちょっとソファーで座ってて」ひろと君の食事を作るお父さんはふと…父親「成長期の子どもが何時間ぶり…」そう言うとお父さんは、食事中のひろと君にこう質問します。父親「さっきソファーで、また寝ようとしたのは覚えてない?」ひろと君「わからん」父親「こっちでお茶飲んだの覚えてない?」ひろと君「……」一度起きてお茶を飲んだりした記憶が全くないと話すひろと君。強い眠気を引きずったまま、無意識にパンを口に入れるなど、危険な行動をとることも多いといいます。ーーー寝ないように抗ったことはある?ひろと君「ある。筋トレしたり、目が覚めるから」ーーー結果はどうだった?ひろと君「3分くらいもったけど、『眠い』ってなって結局寝た」クライネ・レビン症候群は、一般的に強い眠気をもよおす「過眠期」から「通常の睡眠」に戻るというサイクルを年に数回繰り返します。この「過眠期」は一般的に数日~数週間続くといい、ひろと君の場合は長く、3か月続きました。医師「冬眠に近いメカニズム」治まるまで平均14年見守る家族は琉球大学病院普天間国博医師「(発病の)原因はわかっていないんですけど、過眠の時期というのは、冬眠に近いメカニズムが働いているようです。見守りは必要になります。例えば寝ぼけて徘徊して外に出て、交通事故に遭ったりするリスクもある」現在、この「クライネ・レビン症候群」に効果的な治療方法は見つかっていません。症状が自然に治まるのを待つしかなく、治まるまでの期間は平均14年かかるといいます。見守りを続ける両親のために、社会福祉協議会などの支援も。ひろと君の家の壁には、小型の機器が取り付けられています。父親「これは『離床センサー』といって、人の動きを感知して動いたら音が鳴る」試しにセンサーの前に手をかざすと、音楽が流れました。父親「夜中に(ひろと君が)起きた時に、この音で起きて、見守りができる。親は常にどっちかが起きている状態だったのが、眠りながら、音が鳴れば起きる態勢になったので、睡眠時間が確保できた。非常に助かっています。」ひろと君「高校はやっぱり行きたい」過眠期が明けるも昼過ぎまで起きられずーーー最近変わったことや困ったことは?ひろと君(中学2年)「困ったことは『将来、高校は入ってほしい』と(両親に)言われているから、勉強をどうするのかなみたいな」ひろと君は現在、塾に通い、勉強の遅れを取り返そうとしていますが、両親の経済的負担も少なくありません。過眠期が明けた6月9日、取材陣とも積極的にコミュニケーションを取るようになりました。ーーー表情やしゃべり方が前より眠くなさそうに感じるひろと君「前よりは今のこの時間帯(夕方)は眠くない」ーーー何している時が楽しい?ひろと君「きょう友達の家に行った。学校が午後3時くらいに終わって、4時半くらいまで遊んでた」しかし、過眠期が明けたはずの今も、昼過ぎまで起きられない症状が度々あるといいます。琉球大学病院普天間国博医師「まだはっきりしたことは言えないんですけど、クライネ・レビン症候群以外にも、他の睡眠障害を含めた合併症や心理的要因の影響がないか、今、検査を進めているところ」6月27日、ひろと君に、他の睡眠障害があるかなどの検査入院がはじまりました。クライネ・レビン症候群以外の病気が見つかれば、その治療はできる可能性があるといいます。次にいつ過眠期が来るかわからない不安の中、勉強に励む日々。ーーーお父さん、お母さんが頑張ってくれている感じはする?ひろと君「(両親に)めちゃくちゃ心配されてるし、めちゃくちゃ頑張ってくれてると思っている。ありがたいなって感じではあるけど、恩返しみたいなことは全然できていない」ーーー勉強をする先に何か目標がある?ひろと君「高校はやっぱり行きたくて。大学も行けたらな。福祉(関係)とかお悩み相談、SOSみたいな、人と話す職業みたいなことをやってみたい」記憶はあるつもりだけど…ない完治したNPO元代表“4歳で発症”小川彩佳キャスター:改めましてここからは朝井香子さんとお伝えします。朝井さんは、クライネ・レビン症候群の理解を深める活動や、実際の患者さんや親御さんとも情報交換を行っています。そして1年半前までNPO法人「日本過眠症患者協会」の代表も務めました。朝井さんご自身も、この病気に悩まされてきた1人ということです。山本恵里伽キャスター:朝井香子さん(47)についてご紹介していきます。●4歳でクライネ・レビン症候群を発症→1日20時間ほど睡眠が必要になる「過眠期」が徐々に期間が長くなっていきました。●小学4年生、学校を1か月休むように●32歳、症状がピークに→1か月のうち、3週間の過眠期が訪れました。1か月のうち、1週間しか通常の生活ができない状態です。これが12回訪れたということなんです。●45歳、症状が治まる小川キャスター:今は完治されている、寛解されているということですけれども、朝井さんにとって、一番大変だったときというのはどんなときでしたか。NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:とにかくずっと寝ていましたので、何にもできないことですね。小川キャスター:過眠期には目が覚めているときもシャキッとした状態ではないわけですか?NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:違いますね。ぼーっとしていて、目もうつろで、食べるか、トイレに行くかしかできないので。小川キャスター:ご飯食べて、お手洗い行って、ぼーっとして、また寝てしまう。それが毎日繰り返されていくというのが「過眠期」なんですね。山本キャスター:そのときの記憶はあるんですか?NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:記憶はあるつもりでいるんですけど、やっぱりないですよね。つじつまが合わないですよね。「過眠期」が終わった後に、「こうだったよね」と言われても覚えていなかったりする。「怠けでも詐病でもない」診断までの33年医師も知らない病気で転々と山本キャスター:朝井さんの検査歴をこちらで見ていきます。〈朝井香子さんの主な検査歴〉●8歳、大学病院で検査⇒異常なし●29歳、内科→婦人科→心療内科⇒異常なし●37歳、内科→循環器内科→心療内科→精神科→総合診療科→睡眠科⇒別の睡眠障害と診断→体調変わらず再度検査⇒クライネ・レビン症候群と診断発症が4歳なので、診断を受けるまでに33年かかってるんですね。小川キャスター:検査歴を見ると、あらゆる科を回られたということが伝わってきますけれども、診断名がようやく出たときはどんなお気持ちでしたか?NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:とにかく安心しました。それまでにいろいろな科を回っているのでお医者さんですら、詐病じゃないかという扱いだった。私は怠けではなく、詐病でもなく、ちゃんとした病気を持っているという証明ができたような気がしたので、嬉しかったですね。小川キャスター:そもそもなぜ、診断されるまでこれだけ時間がかかるものなんでしょう。NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:まず睡眠科の先生が少ないというのがあるんですけれども、それに加え、最初寝ていると体調が悪くて寝てるんだろうと思うんですよね。そうすると内科や心療内科に行くんですけれども、現場のお医者さんもこの病気を知らない方も多い。そうするとそこで異常がないと。あるいは違う病名を与えられてしまうと、その病名に対する治療が始まってしまうので、それで満足してしまうというか、もう少し疑って違う病院に行ったりということがなかなかできない。小川キャスター:睡眠科自体を知らない方も多いですし、どこにでもあるものではないですよね。それでどんどん門戸が狭くなってしまうところもあり、ようやくたどり着いたというところは、本当に長い道のりがあるわけですね。小川キャスター:大体どれくらい時間かかると言われてるんですか?NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:海外の論文だと4年くらいというものがあるんですけど、日本の方だと10年くらいかかってるみたいですね。遅れた分の勉強のフォローは誰が…山本キャスター:その診断を受けても治療方法に関して、なかなか確立されていないという現状があるんですよね。症状を緩和させる薬はあるんですけれども、効果的な治療方法は見つかっていません。症状が治まるまでは、平均で14年かかります。また国が定めている「指定難病」になっていないんですよね。指定されるにはいくつかの要件があるんですが、この「クライネ・レビン症候群」は、診断基準が確立していないという理由で難病に指定はされていない。よって医療費の助成をはじめとする社会的な保障が確立されていないという現状なんですね。小川キャスター:難病の指定もされていない。そしてクライネ・レビン症候群自体、医師の方も知らない方がいらっしゃるという中で、どんなサポートというのが必要だと感じていらっしゃいますか。NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:やはり発症が10代なので、お勉強ですね。学校に行く時期に「過眠期」が来て、学校に行けなくなってしまい、出席日数が足りなかったり、勉強が増えたりする。なので、自治体から遅れた分のお勉強をフォローするような家庭教師を派遣してくれるようなもの、あるいはクライネ・レビン症候群だという診断書を持っていけば、出席日数を少し大目に見てくれるような学校側の対処だったり、そういったものがあればいいかなと思います。小川キャスター:現場のお医者さんにもこの病気を知ってもらいたい。そして患者さんにはどんなことを伝えたいですか?NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:ひろと君が出てましたけれども、絶対に寛解して普通の生活が送れるようになる病気なので、悲観的にならずに、「過眠期」とうまく付き合いながら寛解したときに普通の生活が送れるように準備をしていく。諦めないで欲しいということを言いたいですね。
1日のうち20時間眠り続ける病気「クライネ・レビン症候群」。身近な家族でさえ「怠けている」と感じてしまうなど周囲に理解してもらうのが難しい病気といわれています。
【写真を見る】1日20時間眠り続ける中学生100万人に1人の希少疾患「クライネ・レビン症候群」診断が出づらく周囲の理解が得られない実態【news23】父「成長期の子どもが何時間ぶり…」学校も欠席する日々が続く世界で約600例しか報告されていない希少疾患で、眠り続けるのは沖縄県に住む中学2年生のひろと君(仮名)です。ひろと君の父親「1日20時間眠り続けて、何をしても起きないような状況です。わけがわからないっていう混乱ですね。本当に5分おきに息しているかなって確認しているような状況がずっと2週間くらい続きました」

ひろと君は、2023年1月、突然、1日に20時間眠り続け、起きられなくなってしまいました。父親「(肩を叩きながら)おはよう。起きれない?」はじめは、ただ学校をさぼりたいだけだと思い、父親もひろと君に強く当たっていたといいます。しかし、診断された病名は、「クライネ・レビン症候群」(反復性過眠症)と呼ばれる過眠症でした。100万人に1~2人の割合で発病するといわれる希少疾患です。父親「病気になってから調べたら、こういう睡眠の記録を書いた方がいいと。一時は(睡眠時間が)11時間くらいの日もあったんですけど、翌日は20時間。睡眠時間が短い日の次は、逆に睡眠時間が長くなる」毎日の睡眠時間は16~20時間。学校も欠席する日々が続きました。一度起きてお茶を飲んだ記憶なしひろと君「3分くらい抗ったけど『眠い』と結局寝た」ある日の午前11時すぎ、ひろと君が起きてきました。すると、すぐにリビングのソファーで寝はじめました。父親「寝たら意味ないんだわ。お茶飲んで」ひろと君はお茶を飲むと、部屋に戻ります。父親「また寝る?」お父さんが布団をかけて、ひろと君はまた寝ました。約30分後、再び起きてきたひろと君。父親「トイレ?起きる?良かった」おもむろに冷蔵庫を開けるひろと君。お父さんが再び声をかけます。父親「お腹空いた?」ひろと君「うん」父親「今すぐご飯作るから、ちょっとソファーで座ってて」ひろと君の食事を作るお父さんはふと…父親「成長期の子どもが何時間ぶり…」そう言うとお父さんは、食事中のひろと君にこう質問します。父親「さっきソファーで、また寝ようとしたのは覚えてない?」ひろと君「わからん」父親「こっちでお茶飲んだの覚えてない?」ひろと君「……」一度起きてお茶を飲んだりした記憶が全くないと話すひろと君。強い眠気を引きずったまま、無意識にパンを口に入れるなど、危険な行動をとることも多いといいます。ーーー寝ないように抗ったことはある?ひろと君「ある。筋トレしたり、目が覚めるから」ーーー結果はどうだった?ひろと君「3分くらいもったけど、『眠い』ってなって結局寝た」クライネ・レビン症候群は、一般的に強い眠気をもよおす「過眠期」から「通常の睡眠」に戻るというサイクルを年に数回繰り返します。この「過眠期」は一般的に数日~数週間続くといい、ひろと君の場合は長く、3か月続きました。医師「冬眠に近いメカニズム」治まるまで平均14年見守る家族は琉球大学病院普天間国博医師「(発病の)原因はわかっていないんですけど、過眠の時期というのは、冬眠に近いメカニズムが働いているようです。見守りは必要になります。例えば寝ぼけて徘徊して外に出て、交通事故に遭ったりするリスクもある」現在、この「クライネ・レビン症候群」に効果的な治療方法は見つかっていません。症状が自然に治まるのを待つしかなく、治まるまでの期間は平均14年かかるといいます。見守りを続ける両親のために、社会福祉協議会などの支援も。ひろと君の家の壁には、小型の機器が取り付けられています。父親「これは『離床センサー』といって、人の動きを感知して動いたら音が鳴る」試しにセンサーの前に手をかざすと、音楽が流れました。父親「夜中に(ひろと君が)起きた時に、この音で起きて、見守りができる。親は常にどっちかが起きている状態だったのが、眠りながら、音が鳴れば起きる態勢になったので、睡眠時間が確保できた。非常に助かっています。」ひろと君「高校はやっぱり行きたい」過眠期が明けるも昼過ぎまで起きられずーーー最近変わったことや困ったことは?ひろと君(中学2年)「困ったことは『将来、高校は入ってほしい』と(両親に)言われているから、勉強をどうするのかなみたいな」ひろと君は現在、塾に通い、勉強の遅れを取り返そうとしていますが、両親の経済的負担も少なくありません。過眠期が明けた6月9日、取材陣とも積極的にコミュニケーションを取るようになりました。ーーー表情やしゃべり方が前より眠くなさそうに感じるひろと君「前よりは今のこの時間帯(夕方)は眠くない」ーーー何している時が楽しい?ひろと君「きょう友達の家に行った。学校が午後3時くらいに終わって、4時半くらいまで遊んでた」しかし、過眠期が明けたはずの今も、昼過ぎまで起きられない症状が度々あるといいます。琉球大学病院普天間国博医師「まだはっきりしたことは言えないんですけど、クライネ・レビン症候群以外にも、他の睡眠障害を含めた合併症や心理的要因の影響がないか、今、検査を進めているところ」6月27日、ひろと君に、他の睡眠障害があるかなどの検査入院がはじまりました。クライネ・レビン症候群以外の病気が見つかれば、その治療はできる可能性があるといいます。次にいつ過眠期が来るかわからない不安の中、勉強に励む日々。ーーーお父さん、お母さんが頑張ってくれている感じはする?ひろと君「(両親に)めちゃくちゃ心配されてるし、めちゃくちゃ頑張ってくれてると思っている。ありがたいなって感じではあるけど、恩返しみたいなことは全然できていない」ーーー勉強をする先に何か目標がある?ひろと君「高校はやっぱり行きたくて。大学も行けたらな。福祉(関係)とかお悩み相談、SOSみたいな、人と話す職業みたいなことをやってみたい」記憶はあるつもりだけど…ない完治したNPO元代表“4歳で発症”小川彩佳キャスター:改めましてここからは朝井香子さんとお伝えします。朝井さんは、クライネ・レビン症候群の理解を深める活動や、実際の患者さんや親御さんとも情報交換を行っています。そして1年半前までNPO法人「日本過眠症患者協会」の代表も務めました。朝井さんご自身も、この病気に悩まされてきた1人ということです。山本恵里伽キャスター:朝井香子さん(47)についてご紹介していきます。●4歳でクライネ・レビン症候群を発症→1日20時間ほど睡眠が必要になる「過眠期」が徐々に期間が長くなっていきました。●小学4年生、学校を1か月休むように●32歳、症状がピークに→1か月のうち、3週間の過眠期が訪れました。1か月のうち、1週間しか通常の生活ができない状態です。これが12回訪れたということなんです。●45歳、症状が治まる小川キャスター:今は完治されている、寛解されているということですけれども、朝井さんにとって、一番大変だったときというのはどんなときでしたか。NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:とにかくずっと寝ていましたので、何にもできないことですね。小川キャスター:過眠期には目が覚めているときもシャキッとした状態ではないわけですか?NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:違いますね。ぼーっとしていて、目もうつろで、食べるか、トイレに行くかしかできないので。小川キャスター:ご飯食べて、お手洗い行って、ぼーっとして、また寝てしまう。それが毎日繰り返されていくというのが「過眠期」なんですね。山本キャスター:そのときの記憶はあるんですか?NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:記憶はあるつもりでいるんですけど、やっぱりないですよね。つじつまが合わないですよね。「過眠期」が終わった後に、「こうだったよね」と言われても覚えていなかったりする。「怠けでも詐病でもない」診断までの33年医師も知らない病気で転々と山本キャスター:朝井さんの検査歴をこちらで見ていきます。〈朝井香子さんの主な検査歴〉●8歳、大学病院で検査⇒異常なし●29歳、内科→婦人科→心療内科⇒異常なし●37歳、内科→循環器内科→心療内科→精神科→総合診療科→睡眠科⇒別の睡眠障害と診断→体調変わらず再度検査⇒クライネ・レビン症候群と診断発症が4歳なので、診断を受けるまでに33年かかってるんですね。小川キャスター:検査歴を見ると、あらゆる科を回られたということが伝わってきますけれども、診断名がようやく出たときはどんなお気持ちでしたか?NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:とにかく安心しました。それまでにいろいろな科を回っているのでお医者さんですら、詐病じゃないかという扱いだった。私は怠けではなく、詐病でもなく、ちゃんとした病気を持っているという証明ができたような気がしたので、嬉しかったですね。小川キャスター:そもそもなぜ、診断されるまでこれだけ時間がかかるものなんでしょう。NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:まず睡眠科の先生が少ないというのがあるんですけれども、それに加え、最初寝ていると体調が悪くて寝てるんだろうと思うんですよね。そうすると内科や心療内科に行くんですけれども、現場のお医者さんもこの病気を知らない方も多い。そうするとそこで異常がないと。あるいは違う病名を与えられてしまうと、その病名に対する治療が始まってしまうので、それで満足してしまうというか、もう少し疑って違う病院に行ったりということがなかなかできない。小川キャスター:睡眠科自体を知らない方も多いですし、どこにでもあるものではないですよね。それでどんどん門戸が狭くなってしまうところもあり、ようやくたどり着いたというところは、本当に長い道のりがあるわけですね。小川キャスター:大体どれくらい時間かかると言われてるんですか?NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:海外の論文だと4年くらいというものがあるんですけど、日本の方だと10年くらいかかってるみたいですね。遅れた分の勉強のフォローは誰が…山本キャスター:その診断を受けても治療方法に関して、なかなか確立されていないという現状があるんですよね。症状を緩和させる薬はあるんですけれども、効果的な治療方法は見つかっていません。症状が治まるまでは、平均で14年かかります。また国が定めている「指定難病」になっていないんですよね。指定されるにはいくつかの要件があるんですが、この「クライネ・レビン症候群」は、診断基準が確立していないという理由で難病に指定はされていない。よって医療費の助成をはじめとする社会的な保障が確立されていないという現状なんですね。小川キャスター:難病の指定もされていない。そしてクライネ・レビン症候群自体、医師の方も知らない方がいらっしゃるという中で、どんなサポートというのが必要だと感じていらっしゃいますか。NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:やはり発症が10代なので、お勉強ですね。学校に行く時期に「過眠期」が来て、学校に行けなくなってしまい、出席日数が足りなかったり、勉強が増えたりする。なので、自治体から遅れた分のお勉強をフォローするような家庭教師を派遣してくれるようなもの、あるいはクライネ・レビン症候群だという診断書を持っていけば、出席日数を少し大目に見てくれるような学校側の対処だったり、そういったものがあればいいかなと思います。小川キャスター:現場のお医者さんにもこの病気を知ってもらいたい。そして患者さんにはどんなことを伝えたいですか?NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:ひろと君が出てましたけれども、絶対に寛解して普通の生活が送れるようになる病気なので、悲観的にならずに、「過眠期」とうまく付き合いながら寛解したときに普通の生活が送れるように準備をしていく。諦めないで欲しいということを言いたいですね。
世界で約600例しか報告されていない希少疾患で、眠り続けるのは沖縄県に住む中学2年生のひろと君(仮名)です。
ひろと君の父親「1日20時間眠り続けて、何をしても起きないような状況です。わけがわからないっていう混乱ですね。本当に5分おきに息しているかなって確認しているような状況がずっと2週間くらい続きました」
ひろと君は、2023年1月、突然、1日に20時間眠り続け、起きられなくなってしまいました。
父親「(肩を叩きながら)おはよう。起きれない?」
はじめは、ただ学校をさぼりたいだけだと思い、父親もひろと君に強く当たっていたといいます。
しかし、診断された病名は、「クライネ・レビン症候群」(反復性過眠症)と呼ばれる過眠症でした。100万人に1~2人の割合で発病するといわれる希少疾患です。
父親「病気になってから調べたら、こういう睡眠の記録を書いた方がいいと。一時は(睡眠時間が)11時間くらいの日もあったんですけど、翌日は20時間。睡眠時間が短い日の次は、逆に睡眠時間が長くなる」
毎日の睡眠時間は16~20時間。学校も欠席する日々が続きました。
ある日の午前11時すぎ、ひろと君が起きてきました。すると、すぐにリビングのソファーで寝はじめました。
父親「寝たら意味ないんだわ。お茶飲んで」
ひろと君はお茶を飲むと、部屋に戻ります。
父親「また寝る?」
お父さんが布団をかけて、ひろと君はまた寝ました。
約30分後、再び起きてきたひろと君。
父親「トイレ?起きる?良かった」
おもむろに冷蔵庫を開けるひろと君。お父さんが再び声をかけます。
父親「お腹空いた?」ひろと君「うん」父親「今すぐご飯作るから、ちょっとソファーで座ってて」
ひろと君の食事を作るお父さんはふと…
父親「成長期の子どもが何時間ぶり…」
そう言うとお父さんは、食事中のひろと君にこう質問します。
父親「さっきソファーで、また寝ようとしたのは覚えてない?」ひろと君「わからん」父親「こっちでお茶飲んだの覚えてない?」ひろと君「……」
一度起きてお茶を飲んだりした記憶が全くないと話すひろと君。強い眠気を引きずったまま、無意識にパンを口に入れるなど、危険な行動をとることも多いといいます。
ーーー寝ないように抗ったことはある?ひろと君「ある。筋トレしたり、目が覚めるから」ーーー結果はどうだった?ひろと君「3分くらいもったけど、『眠い』ってなって結局寝た」
クライネ・レビン症候群は、一般的に強い眠気をもよおす「過眠期」から「通常の睡眠」に戻るというサイクルを年に数回繰り返します。この「過眠期」は一般的に数日~数週間続くといい、ひろと君の場合は長く、3か月続きました。
琉球大学病院普天間国博医師「(発病の)原因はわかっていないんですけど、過眠の時期というのは、冬眠に近いメカニズムが働いているようです。見守りは必要になります。例えば寝ぼけて徘徊して外に出て、交通事故に遭ったりするリスクもある」
現在、この「クライネ・レビン症候群」に効果的な治療方法は見つかっていません。症状が自然に治まるのを待つしかなく、治まるまでの期間は平均14年かかるといいます。
見守りを続ける両親のために、社会福祉協議会などの支援も。ひろと君の家の壁には、小型の機器が取り付けられています。
父親「これは『離床センサー』といって、人の動きを感知して動いたら音が鳴る」
試しにセンサーの前に手をかざすと、音楽が流れました。
父親「夜中に(ひろと君が)起きた時に、この音で起きて、見守りができる。親は常にどっちかが起きている状態だったのが、眠りながら、音が鳴れば起きる態勢になったので、睡眠時間が確保できた。非常に助かっています。」
ーーー最近変わったことや困ったことは?ひろと君(中学2年)「困ったことは『将来、高校は入ってほしい』と(両親に)言われているから、勉強をどうするのかなみたいな」
ひろと君は現在、塾に通い、勉強の遅れを取り返そうとしていますが、両親の経済的負担も少なくありません。
過眠期が明けた6月9日、取材陣とも積極的にコミュニケーションを取るようになりました。
ーーー表情やしゃべり方が前より眠くなさそうに感じるひろと君「前よりは今のこの時間帯(夕方)は眠くない」
ーーー何している時が楽しい?ひろと君「きょう友達の家に行った。学校が午後3時くらいに終わって、4時半くらいまで遊んでた」
しかし、過眠期が明けたはずの今も、昼過ぎまで起きられない症状が度々あるといいます。
琉球大学病院普天間国博医師「まだはっきりしたことは言えないんですけど、クライネ・レビン症候群以外にも、他の睡眠障害を含めた合併症や心理的要因の影響がないか、今、検査を進めているところ」
6月27日、ひろと君に、他の睡眠障害があるかなどの検査入院がはじまりました。クライネ・レビン症候群以外の病気が見つかれば、その治療はできる可能性があるといいます。
次にいつ過眠期が来るかわからない不安の中、勉強に励む日々。
ーーーお父さん、お母さんが頑張ってくれている感じはする?ひろと君「(両親に)めちゃくちゃ心配されてるし、めちゃくちゃ頑張ってくれてると思っている。ありがたいなって感じではあるけど、恩返しみたいなことは全然できていない」
ーーー勉強をする先に何か目標がある?ひろと君「高校はやっぱり行きたくて。大学も行けたらな。福祉(関係)とかお悩み相談、SOSみたいな、人と話す職業みたいなことをやってみたい」
小川彩佳キャスター:改めましてここからは朝井香子さんとお伝えします。朝井さんは、クライネ・レビン症候群の理解を深める活動や、実際の患者さんや親御さんとも情報交換を行っています。
そして1年半前までNPO法人「日本過眠症患者協会」の代表も務めました。朝井さんご自身も、この病気に悩まされてきた1人ということです。
山本恵里伽キャスター:朝井香子さん(47)についてご紹介していきます。●4歳でクライネ・レビン症候群を発症→1日20時間ほど睡眠が必要になる「過眠期」が徐々に期間が長くなっていきました。●小学4年生、学校を1か月休むように●32歳、症状がピークに→1か月のうち、3週間の過眠期が訪れました。1か月のうち、1週間しか通常の生活ができない状態です。これが12回訪れたということなんです。●45歳、症状が治まる
小川キャスター:今は完治されている、寛解されているということですけれども、朝井さんにとって、一番大変だったときというのはどんなときでしたか。
NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:とにかくずっと寝ていましたので、何にもできないことですね。
小川キャスター:過眠期には目が覚めているときもシャキッとした状態ではないわけですか?
NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:違いますね。ぼーっとしていて、目もうつろで、食べるか、トイレに行くかしかできないので。
小川キャスター:ご飯食べて、お手洗い行って、ぼーっとして、また寝てしまう。それが毎日繰り返されていくというのが「過眠期」なんですね。
山本キャスター:そのときの記憶はあるんですか?
NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:記憶はあるつもりでいるんですけど、やっぱりないですよね。つじつまが合わないですよね。「過眠期」が終わった後に、「こうだったよね」と言われても覚えていなかったりする。
山本キャスター:朝井さんの検査歴をこちらで見ていきます。〈朝井香子さんの主な検査歴〉●8歳、大学病院で検査⇒異常なし●29歳、内科→婦人科→心療内科⇒異常なし●37歳、内科→循環器内科→心療内科→精神科→総合診療科→睡眠科⇒別の睡眠障害と診断→体調変わらず再度検査⇒クライネ・レビン症候群と診断
発症が4歳なので、診断を受けるまでに33年かかってるんですね。
小川キャスター:検査歴を見ると、あらゆる科を回られたということが伝わってきますけれども、診断名がようやく出たときはどんなお気持ちでしたか?
NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:とにかく安心しました。それまでにいろいろな科を回っているのでお医者さんですら、詐病じゃないかという扱いだった。私は怠けではなく、詐病でもなく、ちゃんとした病気を持っているという証明ができたような気がしたので、嬉しかったですね。
小川キャスター:そもそもなぜ、診断されるまでこれだけ時間がかかるものなんでしょう。
NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:まず睡眠科の先生が少ないというのがあるんですけれども、それに加え、最初寝ていると体調が悪くて寝てるんだろうと思うんですよね。そうすると内科や心療内科に行くんですけれども、現場のお医者さんもこの病気を知らない方も多い。そうするとそこで異常がないと。
あるいは違う病名を与えられてしまうと、その病名に対する治療が始まってしまうので、それで満足してしまうというか、もう少し疑って違う病院に行ったりということがなかなかできない。
小川キャスター:睡眠科自体を知らない方も多いですし、どこにでもあるものではないですよね。それでどんどん門戸が狭くなってしまうところもあり、ようやくたどり着いたというところは、本当に長い道のりがあるわけですね。
小川キャスター:大体どれくらい時間かかると言われてるんですか?
NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:海外の論文だと4年くらいというものがあるんですけど、日本の方だと10年くらいかかってるみたいですね。
山本キャスター:その診断を受けても治療方法に関して、なかなか確立されていないという現状があるんですよね。症状を緩和させる薬はあるんですけれども、効果的な治療方法は見つかっていません。症状が治まるまでは、平均で14年かかります。
また国が定めている「指定難病」になっていないんですよね。指定されるにはいくつかの要件があるんですが、この「クライネ・レビン症候群」は、診断基準が確立していないという理由で難病に指定はされていない。よって医療費の助成をはじめとする社会的な保障が確立されていないという現状なんですね。
小川キャスター:難病の指定もされていない。そしてクライネ・レビン症候群自体、医師の方も知らない方がいらっしゃるという中で、どんなサポートというのが必要だと感じていらっしゃいますか。
NPO法人「日本過眠症患者協会」元代表朝井香子さん:やはり発症が10代なので、お勉強ですね。学校に行く時期に「過眠期」が来て、学校に行けなくなってしまい、出席日数が足りなかったり、勉強が増えたりする。なので、自治体から遅れた分のお勉強をフォローするような家庭教師を派遣してくれるようなもの、あるいはクライネ・レビン症候群だという診断書を持っていけば、出席日数を少し大目に見てくれるような学校側の対処だったり、そういったものがあればいいかなと思います。
小川キャスター:現場のお医者さんにもこの病気を知ってもらいたい。そして患者さんにはどんなことを伝えたいですか?

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