「ふざけるな。軽すぎる」娘を殺された父親の怒りが法廷に・・・ 女子高生誘拐・殺害で知人夫婦に判決、懲役23年・18年 東京地裁

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「ふざけるな」「軽すぎる」閉廷後の法廷には遺族の怒りの声が響き渡った。女子高生が誘拐され、その後殺害された事件。殺人などの罪に問われていた夫婦に言い渡された判決は、死刑を求めていた遺族にとっては軽すぎる判決だった。
判決の内容に触れる前に、事件・裁判を振り返りたい。
小森章平被告(29)と妻の和美被告は(30)はおととし8月、当時18歳の女子高生(Aさん)を車で連れ去り、山梨県内の小屋で首をロープで絞め、ナイフで背中を複数回刺して殺害した罪などに問われている。
初公判で章平被告、和美被告ともに「間違いありません」と起訴内容を認めた。
一方で弁護側は妻・和美被告について、「依存性パーソナリティー障害などの精神障害で、章平被告が“絶対的な存在”であり、言われたら従うしかなかった」と主張。「心神耗弱状態だった」として責任能力を争う姿勢を示していた。
事件の経緯については検察が「もともとSNSでやりとりをしていた章平被告とAさんだったが、章平被告と和美被告の結婚後、Aさんは妻がいる章平被告から次第に距離を置くことになった。Aさんに好意を持っていた章平被告はこのことを裏切られたと思い、“逆恨み”して復讐のためにAさんを誘拐し、発覚を恐れて殺害した」と主張していた。
Aさんの父親や母親は「娘のいなくなった人生は絶望でしかない」「自分の命よりも大事な娘だった」などと法廷で意見陳述を行い、遺族側は死刑を求めた。
しかし、検察の求刑は章平被告が懲役25年、和美被告が懲役22年だった。この求刑を受けて、Aさんの父親は「今回の検察の求刑に関して、改めて親である自分の無力さを思い知らされました」「前例との公平を保つのではなく、ひとつひとつの犯罪に対して正しい判断をするべきではないでしょうか」などとコメントしていた。
20日に東京地裁が言い渡した判決は、章平被告については懲役23年、和美被告については懲役18年だった。求刑よりもさらに軽くなった形だ。
東京地裁は判決理由で、「18歳という未来ある被害者の尊い命が奪われた結果が重大であることはいうまでもない」「一連の犯行により被害者が味わった恐怖や苦痛は想像を絶するものである」と指摘した。
その上で章平被告については、「一連の犯行に至る直接的要因は妻がいるにもかかわらず、被害者との関係を維持したいという身勝手極まりない動機にあった。犯行を主導しており刑事責任は非常に重い」とした。
一方、責任能力が争点になっていた和美被告については「章平被告の思いを被害者から自らに向けさせたいという自分自身の目的のもと、自ら判断して合理的な行動を選択している」などとして「障害の影響は限定的で完全責任能力があった」と認定した。ただ量刑については「従属的な立場だった」ことなどを考慮したとしている。
判決の言い渡しが終わり裁判長が「閉廷します」と告げた直後、法廷には「ふざけるな」「軽すぎる」という怒号が響き渡った。その言葉を発したのはAさんの父親だった。判決をどう受け止めたのか、Aさんの父親は判決後に代理人弁護士を通じてコメントを発表した。
Aさんの父親:被害者の命が軽く扱われすぎている。今の日本の司法は間違っている。娘は残虐かつ卑劣な殺人にあってしまった。それに対する量刑がたった20年足らずでは平等だとは思わない。公正であるべきである。この量刑は罪に対して見合わない。刑罰が軽すぎる。
「前例との公平性を保つ考えが時代遅れ。本件を個別に考えたら死刑であってもおかしくないのではないか」とも訴えていた遺族側。今回の判決で確定するのか、今後の控訴判断が注目される。
(フジテレビ社会部・司法担当 高沢一輝)

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