三浦瑠麗氏に勝訴した「テレ朝・社員弁護士」が法廷闘争記を出版 「不倫された側が足掻く姿を正直に書きました」

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国際政治学者の三浦瑠麗氏(42)にTwitter投稿でプライバシーを侵害されたとして、最高裁まで争って勝訴したテレビ朝日法務部社員の西脇亨輔さん(52)が、3年8カ月に及んだ裁判闘争記を出版した。タイトルは『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎)。なぜ不倫された男の“意地をかけた闘い”を本に残そうと思ったのか。本人に話を聞いた。
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【写真】20年に離婚した西脇亨輔さんと元テレ朝アナウンサーの村上祐子氏。仲が良かった頃のツーショット始まりは元妻の「不倫報道」だった きっかけは、2019年4月に三浦氏が投稿したツイートだった。

当時、西脇さんは元妻で元テレ朝アナウンサーの村上祐子氏と離婚裁判中だった。その最中、『週刊ポスト』が村上氏とNHK政治部記者が同棲生活を送っている姿を写真入りでスクープする。突然、妻の不倫を報道で知らされた西脇さんが混乱する中、三浦氏はこうTwitterで呟いた。著書を手にするテレビ朝日法務部社員の西脇亨輔さん〈そもそも何年も別居し離婚調停後、離婚訴訟係争中の人を不倫疑惑とする方が間違い。新しいパートナーと再スタートを切り子供を作ることさえ、離婚しにくい日本では難しい。これは本来多くの人が抱える問題のはずなのに。村上祐子さんを朝まで生テレビから下ろすべきではない〉(2019年4月23日)〈週刊ポストは村上さんの相手が破綻事由でないことも、離婚訴訟中であることも知ってて敢えて隠して不貞行為のように書いたでしょ〉(2019年4月25日) テレ朝は『週刊ポスト』の不倫報道の後、「朝まで生テレビ!」のMCをしていた村上氏の出演を当面見合わせると発表したが、三浦氏は共演者として親しくしていた村上氏を擁護するツイートをして、夫婦間のプライバシーを暴露したのだった。西脇さんがこの時の心境を振り返る。「当時、私たちが離婚訴訟していることは誰にも知られていませんでした。なのに、三浦さんはそれを暴露するばかりか、“不貞行為”が夫婦関係の破綻事由ではないと勝手に決めつけるようなツイートをした。難しい段階にあった私たち夫婦の問題に土足で踏み込んできたのです。訴訟を起こしてプライバシー侵害を主張すれば、勝てると思いました」周囲の反対を押し切って始めた裁判闘争 だが、西脇さんはテレビ朝日法務部に所属する現役のサラリーマンで、相手はテレ朝の看板番組「朝まで生テレビ!」のレギュラー出演者である。職場の上司や同僚は皆、「バカなことをするな」と止めに入った。だが、西脇さんは己の信じる道を突き進んだ。〈ここでうなだれていては、向こうの思う壺だ。何もなかった振りをして、自分で自分を騙しちゃいけない。逃げちゃいけない〉〈この裁判は経済的な損得ではなく、自分自身を守り抜くための、気持ちの闘いだった。勝負よりも「自分は全力を尽くした」と自分の手足で実感できるかどうかが何よりも大切だった〉(『孤闘』より) かくして、サラリーマン弁護士の1345日に及ぶ長き闘争が始まったのだった。西脇さんは「自分で自分の弁護をすべきではない」との周囲の反対を押し切り、自ら弁護士として法廷に立った。テレ朝に勤務しながら、退勤後や土日にワンルームマンションの一室にこもって1000ページ以上の裁判資料を執筆。最高裁まで争って勝利したのである。 その結末は、最高裁が三浦氏の上告を棄却した際、各社が報じ、「デイリー新潮」でも記事にした。なぜあえて本にしようと思ったのか。「実はデイリー新潮さんが書いてくれた記事を幻冬舎の編集者の方がたまたま目にして、『ぜひ本にしませんか』と連絡してくださったんです。二つ返事で『やらせてください』とお返事しました」自分の尊厳をかけた闘争の記録を残したかった 声をかけられたのが4月初旬。それからわずか10日で第一稿を書き上げた。さらに編集者の意見を聞き入れながら2週間かけて加筆修正して脱稿。“寝取られた男”のプライドをかけた戦いを、西脇氏はゴーストライターの力に頼らず自ら書き下ろした。「世の中には不倫した側の話はよく記事にされていますが、不倫されちゃった側の話はあまり表に出てきません。でも、私が経験したように、されちゃった方は絶望的な苦しみを強いられながら乗り越えていかないといけないのです。三浦さんのツイートは容赦なく私のプライバシーを晒すものでしたし、裁判では『原告はサラリーマンに過ぎない』などと見下すような表現を用いて私を攻撃してきました。自分の尊厳をかけて戦い抜いたこの闘いをちゃんと形に残したかった」 本を書きながら、かつてアナウンサーとして「ニュースステーション」などで伝える仕事をしていた頃を思い返したという。「私が読み上げていたニュース原稿は大きな事件ばかりでしたが、実際、世の中ではこのような小さな軋轢が多く存在し、苦しんでいる人が大勢いることを身をもって痛感しました。一番難しかったのは、専門用語が飛び交う法廷闘争をわかりやすく伝えることでした。最初は教科書的に一から裁判の流れを説明しすぎてしまったのですが、何度も読み直し、無駄な箇所を削った。ニュースステーションで働いていた頃、番組責任者から『文字数を使ってニュースを解らせることは誰にでもできる。いかに文字を絞って伝えるかがこの仕事の見せどころ』と教育されたことを思い出しながらの作業でした」印税は全て犯罪被害者支援団体に寄付 本書では、三浦氏が主張した膨大な量の主張書面や陳述書、控訴審で三浦氏側に立って擁護した憲法学者の木村草太氏が書いた意見書の内容も掲載。それらを西脇さんがことごとく論破し、勝利に導いていく経緯が詳細に再現されている。弁護士は裁判について記録として残そうと思っても、依頼者との守秘義務があるのでなかなか難しいが、「その点、私は自分で自分を弁護したので、気兼ねなく書けました」(西脇さん)。 西脇さんは本書の出版で得た印税はすべて犯罪被害者の遺児支援を行う公益財団法人に寄付すると宣言している。「この本は自分のみっともないところをさらけ出した1345日間の記録です。そんな自分の人生の一部をお金に変えて売ってしまったら、惨めな思いしか残らないと思ったのです。私はテレ朝法務部の仕事と並行して、これまで公益活動として国選弁護人としても活動して参りました。そこで目の当たりにしてきたのは、救われない犯罪被害者や遺族の存在です。こんな自分がお金をいただくくらいだったら、少しでも犯罪被害者の方々のお役に立てていだだく方が正しいだろう思って、寄付させていただくことにしました」 一介のサラリーマンが巨大な影響力を持つコメンテーターに戦いを挑み、勝利を掴み取るまでのサクセスストーリーをテンポよく描いた一冊である。西脇さんは「不倫された側の立場の人だけでなく、社会の中で不条理な仕打ちを受けながらも耐え忍んでいる人たちにぜひ読んで欲しい」と語っている。デイリー新潮編集部
きっかけは、2019年4月に三浦氏が投稿したツイートだった。
当時、西脇さんは元妻で元テレ朝アナウンサーの村上祐子氏と離婚裁判中だった。その最中、『週刊ポスト』が村上氏とNHK政治部記者が同棲生活を送っている姿を写真入りでスクープする。突然、妻の不倫を報道で知らされた西脇さんが混乱する中、三浦氏はこうTwitterで呟いた。
〈そもそも何年も別居し離婚調停後、離婚訴訟係争中の人を不倫疑惑とする方が間違い。新しいパートナーと再スタートを切り子供を作ることさえ、離婚しにくい日本では難しい。これは本来多くの人が抱える問題のはずなのに。村上祐子さんを朝まで生テレビから下ろすべきではない〉(2019年4月23日)
〈週刊ポストは村上さんの相手が破綻事由でないことも、離婚訴訟中であることも知ってて敢えて隠して不貞行為のように書いたでしょ〉(2019年4月25日)
テレ朝は『週刊ポスト』の不倫報道の後、「朝まで生テレビ!」のMCをしていた村上氏の出演を当面見合わせると発表したが、三浦氏は共演者として親しくしていた村上氏を擁護するツイートをして、夫婦間のプライバシーを暴露したのだった。西脇さんがこの時の心境を振り返る。
「当時、私たちが離婚訴訟していることは誰にも知られていませんでした。なのに、三浦さんはそれを暴露するばかりか、“不貞行為”が夫婦関係の破綻事由ではないと勝手に決めつけるようなツイートをした。難しい段階にあった私たち夫婦の問題に土足で踏み込んできたのです。訴訟を起こしてプライバシー侵害を主張すれば、勝てると思いました」
だが、西脇さんはテレビ朝日法務部に所属する現役のサラリーマンで、相手はテレ朝の看板番組「朝まで生テレビ!」のレギュラー出演者である。職場の上司や同僚は皆、「バカなことをするな」と止めに入った。だが、西脇さんは己の信じる道を突き進んだ。
〈ここでうなだれていては、向こうの思う壺だ。何もなかった振りをして、自分で自分を騙しちゃいけない。逃げちゃいけない〉
〈この裁判は経済的な損得ではなく、自分自身を守り抜くための、気持ちの闘いだった。勝負よりも「自分は全力を尽くした」と自分の手足で実感できるかどうかが何よりも大切だった〉(『孤闘』より)
かくして、サラリーマン弁護士の1345日に及ぶ長き闘争が始まったのだった。西脇さんは「自分で自分の弁護をすべきではない」との周囲の反対を押し切り、自ら弁護士として法廷に立った。テレ朝に勤務しながら、退勤後や土日にワンルームマンションの一室にこもって1000ページ以上の裁判資料を執筆。最高裁まで争って勝利したのである。
その結末は、最高裁が三浦氏の上告を棄却した際、各社が報じ、「デイリー新潮」でも記事にした。なぜあえて本にしようと思ったのか。
「実はデイリー新潮さんが書いてくれた記事を幻冬舎の編集者の方がたまたま目にして、『ぜひ本にしませんか』と連絡してくださったんです。二つ返事で『やらせてください』とお返事しました」
声をかけられたのが4月初旬。それからわずか10日で第一稿を書き上げた。さらに編集者の意見を聞き入れながら2週間かけて加筆修正して脱稿。“寝取られた男”のプライドをかけた戦いを、西脇氏はゴーストライターの力に頼らず自ら書き下ろした。
「世の中には不倫した側の話はよく記事にされていますが、不倫されちゃった側の話はあまり表に出てきません。でも、私が経験したように、されちゃった方は絶望的な苦しみを強いられながら乗り越えていかないといけないのです。三浦さんのツイートは容赦なく私のプライバシーを晒すものでしたし、裁判では『原告はサラリーマンに過ぎない』などと見下すような表現を用いて私を攻撃してきました。自分の尊厳をかけて戦い抜いたこの闘いをちゃんと形に残したかった」
本を書きながら、かつてアナウンサーとして「ニュースステーション」などで伝える仕事をしていた頃を思い返したという。
「私が読み上げていたニュース原稿は大きな事件ばかりでしたが、実際、世の中ではこのような小さな軋轢が多く存在し、苦しんでいる人が大勢いることを身をもって痛感しました。一番難しかったのは、専門用語が飛び交う法廷闘争をわかりやすく伝えることでした。最初は教科書的に一から裁判の流れを説明しすぎてしまったのですが、何度も読み直し、無駄な箇所を削った。ニュースステーションで働いていた頃、番組責任者から『文字数を使ってニュースを解らせることは誰にでもできる。いかに文字を絞って伝えるかがこの仕事の見せどころ』と教育されたことを思い出しながらの作業でした」
本書では、三浦氏が主張した膨大な量の主張書面や陳述書、控訴審で三浦氏側に立って擁護した憲法学者の木村草太氏が書いた意見書の内容も掲載。それらを西脇さんがことごとく論破し、勝利に導いていく経緯が詳細に再現されている。弁護士は裁判について記録として残そうと思っても、依頼者との守秘義務があるのでなかなか難しいが、「その点、私は自分で自分を弁護したので、気兼ねなく書けました」(西脇さん)。
西脇さんは本書の出版で得た印税はすべて犯罪被害者の遺児支援を行う公益財団法人に寄付すると宣言している。
「この本は自分のみっともないところをさらけ出した1345日間の記録です。そんな自分の人生の一部をお金に変えて売ってしまったら、惨めな思いしか残らないと思ったのです。私はテレ朝法務部の仕事と並行して、これまで公益活動として国選弁護人としても活動して参りました。そこで目の当たりにしてきたのは、救われない犯罪被害者や遺族の存在です。こんな自分がお金をいただくくらいだったら、少しでも犯罪被害者の方々のお役に立てていだだく方が正しいだろう思って、寄付させていただくことにしました」
一介のサラリーマンが巨大な影響力を持つコメンテーターに戦いを挑み、勝利を掴み取るまでのサクセスストーリーをテンポよく描いた一冊である。西脇さんは「不倫された側の立場の人だけでなく、社会の中で不条理な仕打ちを受けながらも耐え忍んでいる人たちにぜひ読んで欲しい」と語っている。
デイリー新潮編集部

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