「私は貧困じゃない!」身体を売って貢いでも埋められない女性たち心の飢餓感

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JR新宿駅から歌舞伎町方面へ15分ほど歩みを進めるとたどり着くのが「大久保公園」。日が暮れると公園周辺には10代や20代前半の若い女性たちが現れ、一定の距離を保ちながら並び出す。
彼女たちは「立ちんぼ」と呼ばれる女性たちだ。スマホ片手にうつむく彼女たちの前には、粘着質な視線を送る男性たちがひっきりなしにやってくる。さらにその様子を収めようとする「動画配信者」らがスマホ片手に吸い寄せられるように集まってくる。
待ち合わせなのか、交渉なのか、雨の中で語る男女の姿があちこちに見られた
「キモいオッサンの客は、みんな『金』でしかないですね」
そう冷笑し、語るのは、加奈子さん(22歳・仮名)。明るく染めた髪はキレイに巻かれ、フリルがあしらわれた白いブラウスにその毛先が絡みつく。顔立ちはまだあどけなさが残り、一瞥すると10代にしか見えない。
黒のミニスカートに厚底の靴、白のショートソックスといったいわゆる「量産型」や「地雷型」と称されるファッションに身を包む加奈子さんは、週2~3回ほど大久保公園周辺に出没し、声をかけてきた男たちと価格交渉をして個人売春をしているという。
「これもホスト(クラブ)に行くため。別に私は貧困なんかじゃありません」
路上売春といえば、生活困窮が理由だとイメージする人も多いだろうが、加奈子さんは即座にそれを否定する。
「昼間はデリヘルで働いてます。客はただの金です、気持ち悪い客にも慣れました(笑)。デリヘルもラクだけど、コロナで収入ゼロの時期もあったから、どうしてもすぐにお金がほしいので、この仕事が一番手っ取り早いんです」(加奈子さん、以下同)
迷いのない言葉が続く。新潟県出身の加奈子さんは18歳のとき進学を機に上京、美容系の専門学校に入学した。しかし1年後、ほどなくして退学したという。
「別にそこまで美容系に進みたかったわけじゃないんですよね。親とは仲が良くなかったし、なんとなく入れそうな学校に入っただけ。19歳のとき、学校で友達になった子がホストにハマったんです。最初は『なにがおもしろいんだろう』と彼女の話をぼんやり聞いてたけど、そのうち彼女から『一緒に行ってみない?』と誘われて。何度か通ううちに、私もハマっちゃったんです(笑)。昔からキラキラした華やかな世界に密かな憧れがありました。だからといって自分からアイドルになりたいと言い出すタイプでもないんですけど」
流されたのか、導かれたのか。女友達の誘いがきっかけで加奈子さんはホストクラブにたどり着いた。
「何軒か通っているうちに出会ったのが今の担当Aです(担当ホスト:指名するホストのこと)です。Aは別にイケメンってわけでもないし、話も上手いわけじゃない、でもなぜか妙にハマってしまって(笑)。もちろん身体の関係はないし、付き合いたいとも思わない。でも担当を1番にするためにパーッとお金を使うのがとにかく気持ちいい、そのために通っているんですよ(笑)」 1日に使うのは最低でも5万円ほど。一時は週に7日も通った。
「月末の締め日直前やバースデーイベントでは奮発しますね。これまでトータル1000万円以上は使ったんじゃないかな。それに彼のお店にも300万円くらいの借金があるんですけどね(笑)」
借金とは、ツケ払いである「売掛金」のこと。ホストクラブでは、客の飲食代を店やホストが一時的に立て替えて、後日客から返却してもらうシステムが常態化している。当然ながら、昼の仕事ではそんな大金を賄えるはずもない。
大久保公園周辺で客をとった女性たちは近くの安いラブホやレンタルスペース、ネットカフェなどに消えていく※写真はイメージ
加奈子さんはデリヘル嬢となり、それでも稼げないときは、「立ちんぼ」として軍資金を調達することにした。
大久保公園周辺に立つ女性たちが明かす、どれだけ推しにお金を使っても埋められない心の空洞――。後半記事『東京・新宿で貢ぐために身体が売る彼女たちが憤る「私たちの何が悪いの?」』では専門家の意見も聴きながら彼女たちの内面に迫る。

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