高知県内外の和菓子店などから、看板商品を高額で転売され「誤ったイメージがつき、本来の商品の楽しみ方を変えられてしまう」などと困惑する声が相次いでいる。
転売時に商品の包装が不十分で、店側に苦情が寄せられる事態も起きており、専門家は「インターネットサイトの運営側は店側と連携し、不当な転売を繰り返す事業者への対策を練る必要がある」と指摘する。(北島美穂)
「元祖ケンピ(5個入) 3650円」「梅不(うめぼ)し(8個入) 3810円」
高知市北竹島町の「西川屋老舗」で約300年前から愛されている看板商品が3月、ヤフーショッピングに定価の6、7倍で出品された。自社の商品画像と説明がそのまま引用されていたという。
転売者は注文が入ると、西川屋が正規に契約を結んでいるアマゾンで商品を購入。送り先に注文客の住所などを記入し、商品を直送させる。注文客に正規の価格が伝わらないよう、「依頼主」として「ギフトなので明細や納品書など金額のわかるものは入れないでください」と注意書きをつけるという手口だ。
西川屋によると、これまで計5業者による転売を確認。通販サイトの運営者に問い合わせるなどして出品をいずれも差し止めた。池田真浩・経営企画部長(33)は「恋人や親しい友人らにいくつか買って分け合うような菓子なのに、楽しみ方を変えられてしまい、高額だと吹聴され客足が遠のくかもしれない。広い客層に末永く付き合ってもらえる価格設定なのに、腹立たしい」と話す。
金沢市の「森八」では1、2年前、葛切りや羊羹(ようかん)が本来の約1・5倍で転売された。サイトの投稿欄には購入客とみられる人物から「届いた箱が潰れていた」「菓子が中でバラバラになっていた」「賞味期限が切れていた」と書き込まれ、店にクレームの電話が寄せられたという。
担当者は「購入客が納得して買っているなら問題ないと思うが、商品に問題があれば誤解を呼び信頼を失いかねない。運営サイトに通報しても、業者は店の名前を変えて転売を繰り返す。イタチごっこだ」とこぼす。
楽天市場では、消費者向けに販売された食品の転売を禁止。違反を発見すれば出店者に注意し、掲載削除を指示する。菓子製造販売の「クラブハリエ」(滋賀県近江八幡市)や「鎌倉紅谷」(神奈川県鎌倉市)など27社と連携協定を結び、転売に関する情報共有も行う。ただ、規約に違反した出店者への罰則については、「事案ごとに対応し厳正に対処する」との表現にとどめている。
■違法行為にあたる可能性
インターネット上の法律問題に詳しい福井健策弁護士は「転売行為は原則自由だが、希少な商品などで買い占めをされると健全な市場が壊される」と指摘する。
賞味期限切れなど健康を損なう恐れがある商品の転売は食品衛生法違反、「転売目的での購入禁止」などと明示されている商品の転売は詐欺罪や偽計業務妨害罪に問われる可能性がある。
転売禁止と表示すれば独占禁止法違反に問われると不安視するメーカー側には、「正当な目的のある転売禁止の表示なら、違法となる恐れは少ない」とし、「不当な買い占め商品の出品を繰り返す事業者を活動停止にするなど踏み込んだ対策を取らなければ、現状は変わらない」と警鐘を鳴らす。