「アプリで20人以上の男性とホテルに…」年収1200万の“美人女医”(44)が「セフレ的関係」も受け入れる複雑な事情

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「年下イケメンにやり逃げされた」“菜々緒系の元モデル美女”(35)がマッチングアプリを3年使っても結婚できない理由 から続く
今や婚活者の5人に1人がマッチング・アプリでの出会いで結婚していく。消費者庁の「マッチングアプリの動向整理」によると、アプリを2年以上利用している人は20代が12.6パーセント、30代が17.5パーセント、40代が24パーセントとかなり多い。年齢が上がるにつれて利用期間も長くなるので、全世代では約4人に1人が2年以上アプリに入会している計算になる。婚活より自己肯定感の補完にハマり、“マッチング・アプリの沼”から抜け出せなくなってしまった男女が数多く存在するのだ。
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ここでは、そんな“沼”にハマった人々を取材したジャーナリスト・速水由紀子氏の著書『マッチング・アプリ症候群 婚活沼に棲む人々』(朝日新書)より一部抜粋。都内の大学病院で働く44歳の“エリート女医”が男性との「セフレ的関係」を受け入れる事情を紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)
写真はイメージです iStock.com
◆◆◆
都内の大学病院で働く44歳の女医、マリさんは、アプリに登録してから20数人の男性と会ってホテルにいったという。こんなエリート女性がなぜ? と驚いたが、それは彼女が付き合う候補者に求めるどうしても譲れない必須テストだったのだ。
「一緒にいい時間を過ごせる方を募集します。最終ゴールは結婚に限りません」
マリさんのプロフィールにはこんな自己紹介が書かれている。
一部の男性はセフレ募集? と勘違いするだろう。
そもそもマリさんを知ったきっかけは、友人男性Cさんのアカウントで、彼がマッチングした相手である女性会員のプロフィールを見せてもらった時だ。
アイコン写真には理知的で物静かな感じの女性が写っていて、プロフィールには「医師42歳 年収1200万円 独身」と書かれている。
その時のCさんの言葉がひどく心に引っかかった。
「マッチングしてマリさんと会った時、こう言われた。私は婦人科の病気で2年後に子宮と卵巣の全摘出を控えている。ずっと仕事が忙しくて独身だったし、セックスの経験が少なくてオーガズムもよくわからない。このまま女でなくなるのは淋しいので、誰か良い人と付き合って後悔しないように経験しておきたい」
マリさんに異性としても惹かれていたCさんは「自分でよければ」と引き受け、2度目のデートでCさんのGOサインをもらい部屋に遊びにいって男女の関係になった。
「僕の今までの女性経験は90人ぐらい。それなりにはスキルがあるので精一杯がんばり、2回目のセックスで、少しわかったような気がすると言ってもらえた」
このまま関係を続けていけばいつかは……という期待を持ったが、3回目のセックスの後、別れのメールが来た。
「あなたとのセックスは好きだが、ちゃんとコミュニケーションが取れない関係が精神的に負担なので、これ以上踏み込めないと。つまり体はいいけど、人間的にはダメと言われたようで結構ショックでしたね」
タイムリミット内に「女性としての幸福」を体験してみたい気持ちを聞いてみたくなった私は、マリさんに連絡を取り、多忙な病院の仕事の合間にリモートで話を聞くことに成功した。セミロングを後ろで結んだマリさんはメイクは薄く理知的な美人だ。
「今もお相手を募集中ですか?」と尋ねると、「2、3人とたまに会ったりビデオトークしている」との答えが返ってきた。
「女性としての幸せを実感できる相手と出会えたか?」という質問には、「難しい」との苦笑が返ってきた。
「私の経験が少ないせいか、少しでも心理的に距離を感じると接触が苦痛になってしまって。本当は長く付き合って信頼してから性的に関係を持てばいいのだが、その時間がない」
子宮摘出したら、もうセックスはできなくなるのか? 疑問に思って聞いてみた。
「妊娠ができなくなるだけで子宮卵巣摘出後もセックスはできる。でもやはり欲望を感じにくくなったとか性交痛が出てしまうとかの声もかなり聞く。心理的なものもあるのかもしれないが。今の状態でそうなってしまうのは女として淋しい」
セックスの満足度と関係性への満足度は別物だ。
結婚していても夫とのセックスに満足を感じたことがない、相手に悪いから演技しているという女性も結構いる。これまで長年にわたって取材してきたアラフォー、アラフィフ女性たちの「夫のセックス」への気持ちを総合すると「セックスはあまり……だが、夫としては満足している」、もしくは「若い頃はよくしたがもうセックスレスになっている。それでも、人柄的には好きなので今さら別れる気はない」という声が一番多かった。
つまりセックスの相性やスキルは大切だが必ずしもセックスが相手の価値を左右するわけではなく、逆にセックスがいまいちでも人柄や価値観が合えば夫として満足できうる、ということだ。
しかし……これは女性がある程度、結婚前に経験を積み、セックスと人柄や価値観を天秤にかけられるようになっていることがポイントだ。マリさんのように交際やセックス経験が少なくタイムリミットがある場合は、女の幸せの象徴としてセックスの比重が高くなるかもしれない。
皮肉なことにセックスの相性が最高なのに精神的な相性は最悪、ということもよくある。
それどころか酷い遊び人だったり誠実さのカケラもない相手なのに、セックスだけは達人、というケースだって珍しくない。
そうなるとどこで相手との相性を測ればいいのか?
マリさんは3つのアプリを使って相手を探しているうちに様々な男性と知り合い、中には結婚相手としては合格点の男性とも出会ったという。
「大学の先生とか研究者とか……。性格もいいし教養もあって話し相手としては良かった。でもそういう人との関係は非性的で、なぜかそもそもセックスしたくならない。Cさんのセックスには希望が持てたけど、彼のコミュニケーションの取り方が自己中心的で長くは付き合えないと思った」
セックスと結婚。本当は女性として体の状態に沿った結婚相手を、誰もがこんなふうにきちんと考えるべきなのだろう。なのに今まで誰もきちんと語ってこなかったのはなぜなのか?
おそらくミソジニー(女性嫌悪)バイアスの強いこの国では、女性たちが女性目線で結婚相手にセックスの相性を求めることが許されなかったのだろう。
いまだにアイドルに処女性とか清楚さとかを求める日本の中高年男性たち。彼らは自分たちが関係性の主導権を握っていないと、性的アイデンティティが崩壊してしまうのだ。
だから妻たちは夫を傷つけないように感じないセックスを隠して演技するし、それについて夫と話し合うことを避ける。
一番大切なことが一番センシティヴだから、お互いに話すことを回避する絶対的なタブーになってしまう。
結果、セックスレス、不倫、熟年離婚へとがっていく。
むしろマリさんのように、正面から相手にこの課題をぶつけたほうがずっと解決に近づくはず……なのだが、なぜうまくいかないのだろう。
「ただでさえ男は自分のがんばったセックスが合格か不合格かをとても気にする生き物。最初から合格点を出してほしいという女性側のプレッシャーがあると、一緒に生活するのは精神的にキビしいかもしれない」
Cさんの言葉には納得できた。気持ちいいセックスに知識やスキル、経験が大切なのはもちろんだが、物理的には同じことをしていても、感情も快感も個人のストーリーによってまったく別物になる。
だからセックスで競技のように他人と競い合ったり、点数をつけることは難しい。
マリさんが本当に探しているのはセックスの快感を共有できるだけでなく、彼女の生きてきたストーリーに共感してくれる人なのだ。
そういう相手と出会うために、「エリート女医でスペックも年収も高いが、セフレ的関係もあり」と受け取られかねない自己紹介を、「おたがいにサポートし合えるパートナーを探しています」に変えるべきだろう。子宮がなくなっても、マリさんが変わってしまうわけではないから、焦る必要はまったくないのでは? そう言ったら考え込んでいたが、1週間後、プロフィールが私の提案したように変わっていた。 個人の事情やわがままをとことん受け入れるのがマッチング・アプリの本質で、だかここそユーザーにとって唯一無二のコミュニティになる。(速水 由紀子/Webオリジナル(外部転載))
そういう相手と出会うために、「エリート女医でスペックも年収も高いが、セフレ的関係もあり」と受け取られかねない自己紹介を、「おたがいにサポートし合えるパートナーを探しています」に変えるべきだろう。子宮がなくなっても、マリさんが変わってしまうわけではないから、焦る必要はまったくないのでは? そう言ったら考え込んでいたが、1週間後、プロフィールが私の提案したように変わっていた。
個人の事情やわがままをとことん受け入れるのがマッチング・アプリの本質で、だかここそユーザーにとって唯一無二のコミュニティになる。
(速水 由紀子/Webオリジナル(外部転載))

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