「65歳以上というだけで門前払い」家を借りられない高齢者が増加、4人に1人が賃貸の“入居拒否”を経験

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生活が苦しくとも誰にも相談できない―。そんな孤独を抱えながら貧困に苦しむ中高年が増えている。特に同居家族がいない独居中高年の場合、身近に助けを求められる人すらいなく、苦しい状況を一人で抱えたまま心を病んでしまう人もいる。中高年を襲う孤独と貧困の実情に迫った。◆増加する高齢者の「賃貸難民」
高齢者の住まいは持ち家というイメージが強い。しかし、「高齢社会白書」によれば、65歳以上の単身世帯の場合、3人に1人は持ち家ではないという結果になっている。そういった賃貸暮らしの高齢者につきまとうのが、「家を貸してもらえない」という問題だ。
「65歳以上の場合、資産の有無にかかわらず高齢というだけで不動産業者から門前払いされることが珍しくない」
そう話すのは、高齢者向けの賃貸紹介サービスを手がける「R65不動産」代表の山本遼氏だ。
◆65歳以上の4人に1人が入居拒否に
近年、家を借りられない「賃貸難民」とも呼べる高齢者が増えているという。
「弊社の調べでは、65歳以上の4人に1人が賃貸住宅の入居拒否を経験していて、そのうち13.4%は5回以上も断られているという結果になりました。特に借りづらいのが、年金が少なくアルバイトなどでギリギリの生活をしている人たちです。
むしろ生活保護受給者のほうが『収入が安定している』と判断されて、借りやすくなっているという状況なのです」
◆孤独死や家賃滞納のリスク
賃貸物件のオーナーたちが懸念しているのは、孤独死や家賃滞納のリスクだ。仮に孤独死が起きた場合、100万円超の原状回復費用がかかる。
「ただ、高齢入居者のうちそういったケースになるのは実際にはごくわずか。それなのに、『高齢者を入居させた経験がないので、なんとなく怖い』という漠然とした不安から拒否することが多いのです」
◆老朽化アパートから追い出される高齢者
また、今後は木造アパートの老朽化問題というリスクも。
「現在、全国には築40年以上の木造賃貸住宅が280万戸超あるといわれています。木造建物は50年ほどで建て替える必要があるので、こうした老朽化アパートに住んでいる人は、今後は建て替えに伴い、立ち退かなければいけなくなる。
そして、こうした老朽化アパートの住人には高齢者が多く、次の住居を見つけられなくなるリスクが高いのです。実際に弊社にも立ち退きを理由とした部屋探しの相談が増えています」
◆要配慮者をサポートする民間企業ができるも…
こうした現状に鑑み、’17年には住宅セーフティネット法が改正。各地域に地域包括センターや都道府県の指定を受けた居住支援法人という高齢者などの要配慮者をサポートする民間企業ができている。
「ただ、高齢者が賃貸住宅を借りにくいことに変わりはない。孤独死防止の見守りサービスや孤独死保険なども広がりつつあるので、こういったサービスを使いつつ、貸し手側の心証が変わっていくのに期待したいです」
【「R65不動産」代表 山本 遼氏】65歳以上の部屋探し専門の不動産会社を設立。全国40社以上の不動産会社との連携を通じて年間数百件の賃貸仲介を支援
取材・文/週刊SPA!編集部

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