感染力が非常に強いはしか(麻疹)の流行が懸念されている。
新型コロナウイルスの5類感染症への移行で海外との往来が復活するなか、感染者の報告が相次いでいる。専門家によると、はしかは潜伏期間が10日~12日と長く、ほかの感染症との区別が難しいため、発見が遅れるケースもある。
国立感染症研究所が発表した6月7日までの感染症発生動向調査週報によると、令和5年第1週からの累計は東京都で5人のほか、大阪で3人、兵庫で2人、千葉、茨城、神奈川、北海道でそれぞれ1人で、合わせて14人が感染した。
はしかは、麻疹ウイルスに感染して起こる感染症で、発熱や発疹などが主な症状となる。免疫をつけるためには2回の予防接種「麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)」が必要とされる。
はしかは感染力が強く、空気感染するため、手洗いやマスクのみで予防ができず、予防接種が最も有効な予防法とし、厚生労働省は、海外渡航を計画している成人やはしかの罹患歴がなく、2回の予防接種歴が明らかでない場合は予防接種を検討するよう呼びかけている。
風邪、風疹、りんご病…区別難しく
宮城大看護学群の風間逸郎教授(病態生理学)によると、典型的なはしかの経過は、初期が「カタル期」と呼ばれ、鼻水や熱、せきなどの症状が出て、粘膜に白い斑点「コプリック斑」が表れることがある。その後にいったん解熱するが、「発疹期」になると全身性の発疹や高熱が出現し、カタル期の症状が強くなることもある。これらの症状は3日程度持続した後、やがて改善し「回復期」に向かうという。
風間教授は「初期のカタル期は風邪の症状に似ているために見過ごされる可能性がある」と明かす。発疹についてもはしかの場合、発疹同士が融合することが特徴だが、1回だけのワクチン接種など、はしかに対する免疫が不完全な人が発症する軽症で典型的な症状が出現しない不全型の「修飾麻疹」の場合には、風疹などとの鑑別が難しくなると指摘する。
ほかにも、発疹が出る「りんご病(伝染性紅斑)」や、2歳以下でかかることが多い「突発性発疹」、薬の内服や注射によって起きる「薬疹」などとも間違われやすいという。こうしたことから、はしかの見落としを防ぐため、医療機関では、麻疹特異的IgM抗体などの血清抗体価の測定や、行政ではPCRなどの遺伝子検査が求められている。
厚生労働省は、はしかの疑いがある場合、かかりつけ医または医療機関に電話などで伝え、受診の要否や注意点を確認してから指示に従うことを求めている。また、周囲への感染を広げないため、医療機関に移動するときは、必ずマスクを着用し、公共交通機関の利用を可能な限り、避けるよう呼びかけている。(本江希望)