日本では6割の夫婦が陥ると言われるセックスレス。「周りからは夫婦仲がいいと思われているんですが、もう20年以上レスで悩んでいます」と語るのは美容師として働く摩季さん(仮名・50代)。20代の頃にレスになり、30代では夫の浮気を乗り越えて、いよいよ夫婦の絆が深まったと感じられていた40代。今度は健康診断で夫に病気が見つかりました。
接待で使っていたガールズバーの店員にドハマりし、最終的に別れて家族のもとへ戻って来た30代の夫。それ以降は帰宅時間も早くなり、夫婦仲も良好。家族で幸せな時間を過ごしていました。
そして時は流れ、もう40代。私としてはレスのまま、女性としてのかけがえのない時間を無為に過ごしていくのかな…と寂しさがよぎることはありました。精神的に不安定になったりするほどではないけれど、そういう関係がないと、夫への当たりが強くなってしまうこともしばしば。
そんなある日、夏休みに家族でキャンプに来ていたときです。夫の携帯が鳴りました。知らない番号からでした。
電話をきった後、「だれから?」と聞くと、「この間受けた健康診断の検査をしてくれた病院の看護師さんだった。なんかヘモグロビンの数値が高いから、すぐに再検査を受けてくださいって言われたんだけど、健康診断の結果が戻ってくる前に電話かかってきちゃうなんてことある? 俺、死ぬのかな?」とショックを受けていた様子でした。
ヘモグロビンとは、赤血球に含まれる赤色素タンパク質のことで、私は若いときにこの数値が逆に低くすぎて「貧血気味ですね~」と医師に言われたことがありました。
口では「ヘモグロビン高くて死んだとか聞いたことないから大丈夫よ~」と明るく言いつつも内心は穏やかではいられません。ヘモグロビンが高い病気ってなんだろう? と思い、ネットで検索。多血症や脱水症などの疑いがあるときや、ストレスがかかったときにも数値は上昇するというような情報が目に入ってきて、うわ~もっと夫に優しくすればよかった…! とここ数年の自分の強い物言いを反省しました。
県内にある大学病院で丸一日かけて詳しい検査をした結果、とある数値が異常に高くなっていて、糖尿病の一歩手前にあることが分かりました。暴飲暴食もしないし、タバコも吸わない。ジャンクフードもほとんど食べないし、痩せ型なのに、糖尿病? とびっくりしました。
医師からは「食事療法で改善できる年齢ですから、経過を観察しながら治療していきましょう」と言われて、私は夫のためにお弁当づくりをはじめました。糖尿病の人にはどういう食事がいいのかも、本をたくさん読んで、健康的なレシピを勉強しながら手作づくりしました。「これで次の検査のときまでによくなりますように」と願うような気持ちでした。
「摩季も仕事してるんだから、無理しなくていいよ」と言いながらも、毎朝うれしそうにお弁当を持って出かける夫。子どもがいないときに抱きしめてくれたり、キスをしたりする場面も増えていき、夜も寝る時間が一緒のときは求められることが増えていきました。子どもも大きくなって自分の部屋で寝られるようになり、寝室は2人きりになったのもよかったです。ですが夫の体力がガクンと落ちていて、結局、最後までできなくなってしまっていました。
あとで調べてみると、糖尿病の人の半数がEDで悩んでいるとのこと。「ごめん」としょんぼりする夫に、「謝らなくていいよ。たまにこういう時間がもてるだけで幸せ」と伝えることが精いっぱい。けれど、せっかく夫との距離がまた近づいたのに、本音は私もかなり切なかったです。
夫との行為がうまくいかない日が続いたある日、今度は私の腰痛が悪化。なかなか痛みが引かなくなってしまいました。腰痛は美容師の職業病みたいなものなので、治りが悪いのも「年かなぁ~」と言って痛み止めを処方してもらうくらいの軽い気持ちで近所の整形外科へ。
「もしかしたらヘルニアかもしれないからMRIを撮っておきましょう」と言われて検査をしたら、なんと大きな子宮筋腫が写っていたのです。ショックなことって続くものですね…。結局、夫と同じ大学病院へ私も通うことになったお話は次回したいと思います。