殉職の警察官2人に「ありがとう」 住民ら悲しみ 長野立てこもり

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長野県中野市で男女4人が殺害された事件は1日、発生から1週間を迎えた。この事件では、通報を受けていち早く現場に駆けつけた警察官2人が殉職した。地域を愛し街の安全を守り続けた2人の死に、住民らの間で悲しみが広がっている。
【写真】立てこもりがあった家には犬をなでる人影も… 亡くなったのは、県警中野署地域課で自動車警ら班に所属していた玉井良樹警部補(46)=警視に2階級特進=と池内卓夫巡査部長(61)=警部に2階級特進。2人はパトカーで地域を巡回する際にコンビを組んでいた。

「人が刺された」。5月25日午後4時25分ごろ、110番に2人が素早く反応し、池内さんがパトカーの運転席、玉井さんが助手席に乗り込んで現場へ向かった。これが署員に見せた最後の姿となった。県警捜査本部によると、2人は現場に到着してすぐに青木政憲容疑者(31)に猟銃と刃物で襲われたとみられ、間もなく死亡した。 中野署の宮本忠義次長によると、玉井さんは若手に職務質問の方法やパトカーの運転を指導するなど面倒見がよく、「何事にも積極的で気が利く」と評判だった。今年からコンビを組む年上の部下である池内さんに対しては、先輩として敬意を示しながら的確に指示を出していたという。 池内さんは中野署の前に県警本部の自動車警ら隊に所属していた。3月まで同隊の副隊長だった宮本次長によると、事故や不審者情報などで隊員に出動を要請すると、近くをパトロールしているのはいつも池内さんだった。 「たまたまです」。センスや勘の良さを評価しても、池内さんは謙遜気味に答えるだけだった。宮本次長は「事件事故の発生状況を分析し、各署との連携をとれているからこそ。偶然ではない」と信頼を寄せていた。 加えて、池内さんにはドラム(パーカッション)演奏の特技があった。県警音楽隊に40年間所属し、演奏技術の高さから定年後に再任用されてからも続けていた。 地域の子どもたちと触れ合う機会も多い。自身にも孫がおり、幼稚園児や小学生の児童を見かけると、パトカーのスピーカーで「気をつけて帰ってね」「車道に飛び出してはいけないよ」と優しく見守ってきた。交通ボランティアの人たちにもねぎらいの言葉を忘れなかった。 「警察官は初動が大切。2人は特に腰が軽くて動きが速かった。貴重な存在を失い残念だ」。宮本次長は2人の死を悔やんだ。 事件現場には「ありがとう お疲れ様でした」などのメッセージが添えられた花束が供えられているほか、中野署には献花台が設けられた。 事件現場を訪れ、趣味で栽培している花を供えた男性(73)は「亡くなられた人も、残された家族も気の毒。地獄だと思う」と肩を落とした。 中野署に献花に訪れた女性(84)は、息子が署員だという。「被害に遭ったのは息子だったかもしれなかった。玉井さんと池内さんの家族のことを考えると、どう言ったらいいのか……」と複雑な心境を吐露した。事件は地域に大きな傷痕を残している。【井上知大、白川徹、鈴木英世】
亡くなったのは、県警中野署地域課で自動車警ら班に所属していた玉井良樹警部補(46)=警視に2階級特進=と池内卓夫巡査部長(61)=警部に2階級特進。2人はパトカーで地域を巡回する際にコンビを組んでいた。
「人が刺された」。5月25日午後4時25分ごろ、110番に2人が素早く反応し、池内さんがパトカーの運転席、玉井さんが助手席に乗り込んで現場へ向かった。これが署員に見せた最後の姿となった。県警捜査本部によると、2人は現場に到着してすぐに青木政憲容疑者(31)に猟銃と刃物で襲われたとみられ、間もなく死亡した。
中野署の宮本忠義次長によると、玉井さんは若手に職務質問の方法やパトカーの運転を指導するなど面倒見がよく、「何事にも積極的で気が利く」と評判だった。今年からコンビを組む年上の部下である池内さんに対しては、先輩として敬意を示しながら的確に指示を出していたという。
池内さんは中野署の前に県警本部の自動車警ら隊に所属していた。3月まで同隊の副隊長だった宮本次長によると、事故や不審者情報などで隊員に出動を要請すると、近くをパトロールしているのはいつも池内さんだった。
「たまたまです」。センスや勘の良さを評価しても、池内さんは謙遜気味に答えるだけだった。宮本次長は「事件事故の発生状況を分析し、各署との連携をとれているからこそ。偶然ではない」と信頼を寄せていた。
加えて、池内さんにはドラム(パーカッション)演奏の特技があった。県警音楽隊に40年間所属し、演奏技術の高さから定年後に再任用されてからも続けていた。
地域の子どもたちと触れ合う機会も多い。自身にも孫がおり、幼稚園児や小学生の児童を見かけると、パトカーのスピーカーで「気をつけて帰ってね」「車道に飛び出してはいけないよ」と優しく見守ってきた。交通ボランティアの人たちにもねぎらいの言葉を忘れなかった。
「警察官は初動が大切。2人は特に腰が軽くて動きが速かった。貴重な存在を失い残念だ」。宮本次長は2人の死を悔やんだ。
事件現場には「ありがとう お疲れ様でした」などのメッセージが添えられた花束が供えられているほか、中野署には献花台が設けられた。
事件現場を訪れ、趣味で栽培している花を供えた男性(73)は「亡くなられた人も、残された家族も気の毒。地獄だと思う」と肩を落とした。
中野署に献花に訪れた女性(84)は、息子が署員だという。「被害に遭ったのは息子だったかもしれなかった。玉井さんと池内さんの家族のことを考えると、どう言ったらいいのか……」と複雑な心境を吐露した。事件は地域に大きな傷痕を残している。【井上知大、白川徹、鈴木英世】

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