“獄中出産”した女性が語るリアル 釈放後は「外で産めてなんて幸せなんだろうと」

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24日、フィリピンを拠点とした大規模特殊詐欺事件で「かけ子」の男女4人がフィリピンから移送され、逮捕された。
【映像】妊娠中? お腹が膨らんでいる女性容疑者(画像あり) 話題になったのは、移送される女性容疑者の姿だ。膨らんだお腹に、Twitterでは「お腹…妊娠してる?」「収監されたらどこで出産?」などの声が寄せられた。女性容疑者は健康上の理由から釈放され、任意で捜査を受けているという。 ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した廣瀬伸恵さんは、29歳の時に獄中出産を経験した一人だ。

「当時はまだ監獄法があったので、腰縄と手錠をしたまま出産した。私の場合、29歳で初めての出産だったので、何もかもが分からなかった。妊婦でも刑務作業はやらないといけない。工場内で破水した時は、尿を漏らしたのかと焦った。勝手に立つのは規則違反になるので、手を挙げて担当刑務官に『漏れてズボンがびちゃびちゃになった』と伝えた。刑務官からは『座りなさい。落ち着きなさい』と言われて、なかなか病院に行かせてもらえない状態が続いた」 今は、建設請負会社の代表として出所者の雇用を行っている廣瀬さん。当時はすでにお腹も大きく、刑務官も廣瀬さんの妊娠を知っていた。「刑務官は破水だと分かっていなかったと思う。とにかく刑務所の中は厳しい。しょうがないからそのまま作業を続けていたが、どんどん破水するので『何かおかしい』としつこく担当刑務官に訴えた。ナプキンをもらってつけても、すぐびちゃびちゃになった。担当刑務官にナプキンを渡して医務課に持って行ってもらって、ようやく羊水だと分かった」 その後、着替えをし、手錠と腰縄を付け、刑務官3人と外の病院に行った。「破水が先で、なかなか陣痛が来なかった。記憶がうろ覚えだが、陣痛促進剤を打ってから、痛みに耐えて8時間くらいかけて産んだ。子どもとの対面時間は3分くらいで、すぐ乳児院に送られた。私もすぐ刑務所に戻された。母乳は一度もあげられなかった」 手錠と腰縄を付けて行った獄中出産に、廣瀬さんは「もう2度と刑務所の中で産みたくない」と振り返る。「刑務所を出てから、外で普通に子どもを出産したが『なんて幸せなんだろう』と感じた。獄中出産は、精神的にも肉体的にもつらいの一言だ。せめて半日くらい、赤ちゃんと過ごさせてほしかった。一瞬だけ子どもを抱っこしたが、もっとゆっくり子どもの顔を見たり、抱きかかえたりしたかった」 子どもの名前はパートナーと一緒に決めた。パートナーも刑務所にいたため、やりとりはすべて手紙で行ったという。「母乳をあげられなくて情けないと思った。産んだ後、ぼたぼたと母乳が垂れてきた。医務課で母乳を止める薬を飲まされて無理やり止められる。母乳が出ているのに子どもに飲ませられない。母親として、むなしかった」 満期釈放後に対面したとき、子どもは1歳6カ月ほどになっていた。「子どもにとっては『この人誰?』って感じで、ぎゃんぎゃん泣いた。私も『本当にこの子は私の子なんだろうか』という思いが出た」■「獄中出産」去年から分娩室内で“手錠使用”を例外なく禁止に 現在、獄中出産の現場はどのようになっているのか。受刑者の出産や生活環境について研究・発信する矢野恵美氏(琉球大学法科大学院教授)は、こう話す。「廣瀬さんがご出産になられた時は、病院で手錠を使用することもあったと思う。基本的に、2014年からは分娩室の中で手錠をつけたり、おなかに縄を巻いたりすることはなくなった。さらに今は子どもを抱っこしたり、お風呂に入れたり、授乳のときも手錠や縄をしない決まりになっている。出産も病院で行う。若いと薬物で服役する女性も多い。もちろん、他の犯罪で捕まった人もいるが、健康リスクがある妊婦は刑務所でもすごく気を付けていると思う」 法律では、受刑者が申請をすれば1年から1年半まで、子どもと一緒に暮らすことが可能になっているが、現実には認められないケースもあるという。 矢野氏は「設備の問題や人員配置などで希望が通らないことがある」と話す。「正直なところ、1年半子どもと一緒にいられるほど設備が整った刑務所は増えてはいない。そもそも女性刑務所や女性刑務官の数が非常に少ない。今でこそ女性刑務官は1割いるが、長い間5%くらいしかいなかった。獄中出産の数もそれほど多くない」 その上で、矢野氏は「日本の刑務所の中がすごく混んでいた時期がある」と指摘する。「特に女性の刑務所がものすごく混んでいて、栃木刑務所は一番混んでいる時で140%くらいの定員がいた。子育てするスペースを確保することが、現実的に無理だったのではないか。本当は刑務所が混んでいても、親がどうでも、子どもの権利を中心に考えるべき。2014年に女子施設地域連携事業が始まったことで、助産師や看護師が非常勤で入って、妊婦の受刑者に指導できるようになった。子どもが誰からどこで生まれても、同じような状態にできるといいと思う」(「ABEMA Prime」より)
話題になったのは、移送される女性容疑者の姿だ。膨らんだお腹に、Twitterでは「お腹…妊娠してる?」「収監されたらどこで出産?」などの声が寄せられた。女性容疑者は健康上の理由から釈放され、任意で捜査を受けているという。
ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した廣瀬伸恵さんは、29歳の時に獄中出産を経験した一人だ。
「当時はまだ監獄法があったので、腰縄と手錠をしたまま出産した。私の場合、29歳で初めての出産だったので、何もかもが分からなかった。妊婦でも刑務作業はやらないといけない。工場内で破水した時は、尿を漏らしたのかと焦った。勝手に立つのは規則違反になるので、手を挙げて担当刑務官に『漏れてズボンがびちゃびちゃになった』と伝えた。刑務官からは『座りなさい。落ち着きなさい』と言われて、なかなか病院に行かせてもらえない状態が続いた」
今は、建設請負会社の代表として出所者の雇用を行っている廣瀬さん。当時はすでにお腹も大きく、刑務官も廣瀬さんの妊娠を知っていた。
「刑務官は破水だと分かっていなかったと思う。とにかく刑務所の中は厳しい。しょうがないからそのまま作業を続けていたが、どんどん破水するので『何かおかしい』としつこく担当刑務官に訴えた。ナプキンをもらってつけても、すぐびちゃびちゃになった。担当刑務官にナプキンを渡して医務課に持って行ってもらって、ようやく羊水だと分かった」
その後、着替えをし、手錠と腰縄を付け、刑務官3人と外の病院に行った。
「破水が先で、なかなか陣痛が来なかった。記憶がうろ覚えだが、陣痛促進剤を打ってから、痛みに耐えて8時間くらいかけて産んだ。子どもとの対面時間は3分くらいで、すぐ乳児院に送られた。私もすぐ刑務所に戻された。母乳は一度もあげられなかった」
手錠と腰縄を付けて行った獄中出産に、廣瀬さんは「もう2度と刑務所の中で産みたくない」と振り返る。
「刑務所を出てから、外で普通に子どもを出産したが『なんて幸せなんだろう』と感じた。獄中出産は、精神的にも肉体的にもつらいの一言だ。せめて半日くらい、赤ちゃんと過ごさせてほしかった。一瞬だけ子どもを抱っこしたが、もっとゆっくり子どもの顔を見たり、抱きかかえたりしたかった」
子どもの名前はパートナーと一緒に決めた。パートナーも刑務所にいたため、やりとりはすべて手紙で行ったという。
「母乳をあげられなくて情けないと思った。産んだ後、ぼたぼたと母乳が垂れてきた。医務課で母乳を止める薬を飲まされて無理やり止められる。母乳が出ているのに子どもに飲ませられない。母親として、むなしかった」
満期釈放後に対面したとき、子どもは1歳6カ月ほどになっていた。
「子どもにとっては『この人誰?』って感じで、ぎゃんぎゃん泣いた。私も『本当にこの子は私の子なんだろうか』という思いが出た」
現在、獄中出産の現場はどのようになっているのか。受刑者の出産や生活環境について研究・発信する矢野恵美氏(琉球大学法科大学院教授)は、こう話す。
「廣瀬さんがご出産になられた時は、病院で手錠を使用することもあったと思う。基本的に、2014年からは分娩室の中で手錠をつけたり、おなかに縄を巻いたりすることはなくなった。さらに今は子どもを抱っこしたり、お風呂に入れたり、授乳のときも手錠や縄をしない決まりになっている。出産も病院で行う。若いと薬物で服役する女性も多い。もちろん、他の犯罪で捕まった人もいるが、健康リスクがある妊婦は刑務所でもすごく気を付けていると思う」
法律では、受刑者が申請をすれば1年から1年半まで、子どもと一緒に暮らすことが可能になっているが、現実には認められないケースもあるという。
矢野氏は「設備の問題や人員配置などで希望が通らないことがある」と話す。
「正直なところ、1年半子どもと一緒にいられるほど設備が整った刑務所は増えてはいない。そもそも女性刑務所や女性刑務官の数が非常に少ない。今でこそ女性刑務官は1割いるが、長い間5%くらいしかいなかった。獄中出産の数もそれほど多くない」
その上で、矢野氏は「日本の刑務所の中がすごく混んでいた時期がある」と指摘する。
「特に女性の刑務所がものすごく混んでいて、栃木刑務所は一番混んでいる時で140%くらいの定員がいた。子育てするスペースを確保することが、現実的に無理だったのではないか。本当は刑務所が混んでいても、親がどうでも、子どもの権利を中心に考えるべき。2014年に女子施設地域連携事業が始まったことで、助産師や看護師が非常勤で入って、妊婦の受刑者に指導できるようになった。子どもが誰からどこで生まれても、同じような状態にできるといいと思う」
(「ABEMA Prime」より)

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