「働けるうつ病」になりやすい人の特徴。泣きながらも働いてしまう謎

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うつ状態なのに体が勝手に動いて働けてしまう。だからこそ、苦しいー心と体が限界を突破しているのに動いてしまうその状態はゾンビにも喩えることができる。そんな人々が増えているという。その実態を追った。
◆まるで“ゾンビ”!?うつでも体は動き続ける現象の謎
どこか調子が悪いのに、働けてしまう。気になってついに病院に行ったら「うつ病です」と診断された――。昨今、そんな人が急増しているという。体が動かず、働けなくなってしまう通常のうつ病とは何が違うのか?
自身もうつ病で治療中の精神科医である岡本浩之氏は、「通常うつ」と「働けるうつ」の症状の差を明確に分類する。
「私自身も今から10余年前、31歳のときに抑うつ状態に陥りました。そのときは医師としての信頼の失墜を恐れるあまり、働き続けてしまったせいで健康を壊してしまいました。いわば、働けるうつの人は性格的にしんどいと言えない、自分を追い込んでしまう、休むことをストレスと感じてしまうといった傾向が強いように思いますね」
◆泣きながらでも働き続けてしまう
産業医としてビジネスマンのメンタルヘルスに関わる精神科医の内田栄一氏も同様の意見だ。
「前進あるのみで休むことができない。だから泣きながらでも働き続けてしまうと同時に、どこかでその状態を楽しいと感じていることも少なくありません」
内田氏が診察してきた「働けるうつ」症状の人は強迫性格(※規律性、完璧さなどへのとらわれが強い性格)の持ち主が圧倒的に多く、真面目で頑固、対外的には仕事ができ出世コースに乗っている特徴があると話す。
また、中には、いつもニコニコした表情を浮かべている人も多く、周囲は余計に気づかないどころか元気なのだと勘違いしてしまう。これは「『ほほえみうつ』という働けるうつの一形態。心では泣いている状態」(内田氏)という。
◆「他人に迷惑をかけてはいけない」日本人特有の文化が基盤に
個人の性格とともに、日本人特有の文化が基盤にあると考えているのは、産業カウンセラーの片田智也氏。
「うつ状態は、簡単に言えば精神の疲れです。疲れているなら休めばよいのですが、他人に迷惑をかけてはいけない、怠けることは悪だという教育が根づいているから休めないというのがまず根底にあると思いますね。そこに職場環境、昇進や昇給の問題、他人の評価を気にするなどの要因も当然絡んでくるでしょう」
確かに「勤勉」と評価されることの多い日本人は、そもそも休むことが苦手なのかもしれない。だからセーブすることを忘れて働き続け、ある日突然「電池切れ」を起こすハメになってしまうのだ。
【岡本浩之氏】精神科医、産業医。東京大学医学部卒業後、勤務医を経て北本心ノ診療所院長。自身のうつ病経験をもとに患者にアドバイスを行う。スポーツ精神医学会所属
【内田栄一氏】日本精神神経学会指導医・専門医。日本産業衛生学会指導医・専門医。医学博士。大塚・栄一クリニック院長。心体のストレスを緩やかに解放する治療を行う
【片田智也氏】感情マネージメント協会代表理事、産業カウンセラー。著書『メンタル弱いが一瞬で変わる本 何をしてもダメだった心が強くなる習慣』(PHP研究所)など
取材・文/週刊SPA!編集部

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