“年収500万円でカツカツ”52歳の後悔。昇進のチャンスを断り…年下上司になじられる不満の日々

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

今サラリーマンの出世に対する価値観は大きく揺らいでいる。収入と仕事量、責任が合わずコスパが悪いとされる管理職より、ライフバランスを優先、悠々自適なヒラ社員人生を好む人も。アラフィフ、年収500万ヒラ社員と年収700万円管理職ならどっちが「得」なのか? 今回は50代ヒラ社員を例に考える。◆仕事が楽しいと思った瞬間は一度もない
「月の手取りが26万円で、生活費は22万円ほど。ボーナスは、毎月の赤字の補に充てています。家のローンもあと20年あるし、老後資金も子供2人の大学費用も厳しい。唯一の楽しみであるタバコも、やめる覚悟です」
やけに小さく見える背中でこう話すのは、兵庫県で妻と中学生2人の子を養う久米弘和さん(仮名・52歳・年収509万円)。下水処理を担う企業に22歳から勤め、現在は自宅から30劼曚瀕イ譴申萢施設でオペレーター業務を行っている。
「もう30年働いていますが、楽しいと思った瞬間は一度もありません。毎日変わらないメンツで同じ作業の繰り返しなうえ、数年前にうどん店から転職してきた年下上司に、小さいミスを延々となじられる。僕にとって、ここは監獄と同じです」
◆昇給のチャンスを逃してしまい…
この道ひと筋の久米さんにも、昇進の機会が皆無だったわけではない。
「30代前半で施設の所長にと打診があったんですが、タイミング悪く身内が倒れ、リハビリに付き添うために断りました。おそらく受けていれば手取り35万円はもらえたんでしょうね。
やっと介護が落ち着いた頃に当たった上司は、僕を目の敵にする男で、当然、人事考課が悪くなって出世は絶望的になりました」
◆50歳を超えた今、立たされた岐路
運に見放され続けた久米さんだが、へそを曲げずに周囲の信頼を固め、地道に基本給を上げてきた。そして50歳を超えた今、ある岐路に立たされている。
「処理施設の工事や、機械の修理などを行うエンジニアリング部門に移る話が来ています。今の代わり映えのない維持管理の業務よりはよっぽどやりがいがあるだろうなと思い、数年前から上に異動願を出していた結果です」
だが、「監獄」から解放されるとはいえ、異動すれば給料は大きく下がる見込みだ。ならばここは、奥さんにもひと肌脱いでもらうしかない。
◆妻が正社員になれば願いは叶うが…
妻は所得税を取られない範囲内でのパート勤めで、ほぼ全額を自分の小遣いにしている。彼女が正社員になって2馬力で家計を支えれば久米さんの願いは叶うだろう。
「実は妻にプロポーズしたとき、『もし仲違いして離婚することになっても慰謝料なんかろくに払えない。せめて、自分で稼いだカネは自由に使ってくれ』と言ってしまった。妻が家計を支えてくれたら助かりますが、今さらあの言葉を撤回できません……」
◆ヒラ社員の収入では…
生活は苦しいが、土日ともなれば子供をキャンプに連れていったり、公文や進研ゼミ、パソコン教室に通わせる子煩悩な一面もあるという。
収入の伸び悩むヒラ社員ともあれば、夫単独での切り盛りは不可能。妻も含めた家族のマネジメントが必須だ。
取材・文/田中慧(清談社) 写真/PIXTA Adobe Stock

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。