住宅街にヒグマ、8日で目撃8件…足跡が向かう先に戸建て

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北海道室蘭市の住宅街でクマの出没が相次いでいる。
12日以降、8日間で目撃情報は計8件。現場近くの小中学校5校では、児童が保護者に付き添われて下校したり、生徒の部活動が中止になったり、影響が出ている。
JR東室蘭駅から2・5キロ北にある知利別南公園。周囲の道路上に、クマの両足の足跡がくっきりと残っていた。長さ30センチ、幅15センチ。7歳以上のオスの可能性が高いとみられる。足跡が向かう先には戸建て住宅が立ち並んでいる。住民は「愕然(がくぜん)としました。子どもが遊ぶ公園に現れるなんて」と不安を隠さない。
道警室蘭署によると、クマの目撃情報は12日夜、同市中島本町3で1頭が道路を横切って以降、13日早朝までに市街地で4件続いた。15日は2件、16日には散歩中の男性が市道沿いの草むらにクマがいるのを目撃し、交番に駆け込んだ。19日にもバスの乗客がクマのような動物を目撃した。
「室蘭」の語源は「モ・ルエラニ」。アイヌ語の「小さな、下り坂」という言葉に由来する。その名の通り坂道が多い。港に面した埋め立て地を除けば大部分は山がちで、尾根と尾根に挟まれた沢に沿って市街地が作られた。クマが山林を移動すれば市街地に迷い込む可能性がある。5~7月の繁殖期はオスが行動範囲を広げて動き回る。
市地域生活課の中野茂樹課長は「出没が相次ぐのは地形が関係しているかもしれない」と話す。
胆振総合振興局は、目撃情報があった場所周辺に動くものに反応して動画や静止画を撮影するカメラ8台を設置した。移動経路(獣道)の特定が目的だ。
市街地での発砲は鳥獣保護法で禁止されており、電気柵や捕獲檻(おり)の設置などが検討されている。中野課長は「農地やごみ箱の被害は確認されておらず、クマが食べ物を探している形跡はない。このままおとなしく山に帰ってほしい」と話している。
■生ごみに執着保管は家の中
酪農学園大の佐藤喜和教授(野生動物生態学)は「若いクマは安定して餌を確保するために他のクマがいない場所を探して移動する習性がある。その過程で偶然、市街地まで出てきたのではないか。今回発見が相次いでいる場所のすぐ近くに山があり、クマの生息地になっている可能性がある。クマが市街地まで出てきてしまってもあまり不思議ではない」とし、「市街地に出たクマは生ごみなどに執着しやすい。ごみは収集日の朝に出し、極力家の中で保管することが望ましい」としている。
■札幌でも民家近くに
札幌市内の民家近くでもクマの出没は相次いでいる。
今月13日には、西区西野の畑でクマの足跡が見つかり、18日には畑の近くでクマの親子が目撃された。いずれも民家から約100メートルほどだったという。
また4月上旬以降、南区白川周辺で複数回にわたってクマが目撃され、同21日に、ハンターが雑木林でクマ1頭を駆除した。
3月19日には、住宅街にある南区南沢の南沢スワン公園で、犬を散歩中の夫婦が体長2メートルほどのクマを目撃した。いずれもけがはなかった。
道警地域企画課によると、クマ目撃に関する通報は2020年に1816件あり、21年は2197件、22年は2240件と増加している。今年は5月16日現在、速報値で前年同期比74件増の411件の目撃があり、死者1人、負傷者2人となっている。

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