「急速に出回り始めた『ウンスン』」「規制濃厚の大麻グミ」…元売人が明かす「Z世代の最新麻薬事情」

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「去年の7月ごろから、急速に『ウンスン』が出回り始めたんです。それ以来、末端価格は上がりっぱなし。ここ10年で最高額になっているんじゃないですかね」
声を潜めながらそう明かすのは、麻薬密売歴が15年を超える元売人のX氏だ。「ウンスン」とは、ここ1年で急速に広まった「紛いもの」の覚醒剤を指す。摂取しても「うんともすんとも言わない」ことから、その通称がつけられたという。
今、覚醒剤をめぐる状況は大きな転換点を迎えている。一番の変化は末端価格の高騰だ。昨年まで1gあたり3~4万円だった価格が、現在は5~6万円と約1.5倍も急上昇しているという。その背景には、冒頭に紹介した「ウンスン」が、市場に大量流入した影響が大きい。(以下、「」内の発言はすべてX氏)
「ニセモノが出回ったことで、ホンモノの希少性が上がり、結果として価格が跳ね上がったんです。中でも『ウンスン』は、あまりに精巧で、ほとんどの売人が騙されました。見た目はもちろん、味などもホンモノそっくり。いい覚醒剤の条件の一つは、結晶を割ると縦に亀裂が入ることで、純度が高いとして玄人に好まれる。『ガンコロ』とか『縦割り』なんて言うんですけど、『ウンスン』は見事な結晶なんです。味も完璧。覚醒剤って舌先がチリチリする独特の苦さがあるんですけど、 確かにちょっとほろ苦かったんです。少し薄かったけど、砂糖でも塩でもなかった。水にも溶けて静脈注射もできる。そんなわけで、ベテランの密売人もみんな、何かもわからない粗悪品をつかまされてしまったってわけです」
多くの売人が騙されたという「ウンスン」だが、その正体はいまだに分かっていないという。
「誰が日本に持ち込んだのか、特定されていません。あくまで噂ですが……海外では市販薬から覚醒剤を精製する技術が確立されたらしいのですが、それを真似した失敗作が出回ってるんじゃないかなんて言われています。ただ、本当のところはわからないですね」
精巧なニセモノの登場は、ある皮肉な結果を生んでいる。今まではどれだけ取り締まりを強化しても覚醒剤の被害は後をたたなかったが、今回の「ウンスン」の登場により、手を引く常習者や、密売人が増えているという。
「信頼している売人から買った客も、まったく効かないって、半ばあきらめてますよ。僕の知り合いの女の子も、一回6万円を計3回も買って、すべて『ウンスン』だったから、もう馬鹿らしくて覚醒剤をやめるって。自分の知り合いだけで、長年やっている人でも、何人もやめていくヤツがいますよ。
仕入れ方法も変わりました。今まではリスクを減らすため、1回でなるべく多く仕入れてきましたが、今はまとめて仕入れるヤツはいません。偽物を大量につかまされるのは怖いですからね。だから毎日、1グラムずつ仕入れ先から買ってくるんです。手間だし摘発されるリスクも上がりますが、それでも大損するよりいいですからね」
一方で、若者を中心に急速に広まりつつある別の薬物があるという。それが「合法大麻グミ」だ。食べられるという意味の英単語「エディブル(edible)」というキーワードで浸透し、クッキーやアイスもあるという。「CBD」や「THCH」といった大麻草由来の成分が一定量入っており、爆発的に利用者が増えている。
「合法を謳っているだけあって、もちろん成分などはギリギリ基準値に収まっていますが、特殊な調合で従来の大麻と同じ効果を得られるようになっています。僕も試したけど、すぐ規制されるだろうなっていうぐらいの効き目でした。味はコーラのグミだったけど、半分食っただけで大麻と同じ“マンチ状態”になって驚いた。マンチっていうのは、ハイになっている状態の一つで、食べるものがなんでもうまくて、いくらでも食えるような状態です」
若者に人気の理由は他にもある。SNSが普及し、フリマアプリで気軽に買える環境があるからだ。店舗で買ってきたブツを転売しているX氏も、出品するそばから売れていく状況だと話す。
「知り合いで一文なしだったヤツが、この合法大麻グミを扱う店で働くようになってから急に羽振りが良くなった。中には月に300万円も稼いでいるヤツまで出てきて、本当に売れているんだなって感じます。
合法大麻関連の商品は見た目も普通のお菓子と同じで、注射や炙りがないから、若い人でも抵抗なく摂取しやすい。それでいて合法だって言われれば、違和感なく使えますからね。大麻はゲートウェイドラッグなんて言われていて、他の麻薬へ手を出すきっかけになると危険視されますが、こっちは合法だから警察に捕まることもありません」
覚醒剤の高騰に贋作の大量流通、さらに新たなトレンド商品の誕生と、日々変わり続ける令和の麻薬事情。薬物の脅威が日本を蝕む今だからこそ、改めてその問題を真剣に考えなければならない。

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