世界遺産の一部で国史跡の石垣、無許可修復…奈良・下北山村「範囲外と勘違い」

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奈良県下北山村が昨年12月、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部で、村を通る国史跡「大峯奥駈道(おくがけみち)」にある石垣を無許可で修復していたことがわかった。
村は「史跡範囲外だと勘違いしていた」と釈明している。県は無許可での現状変更を禁じた文化財保護法に抵触する可能性があるとして、詳しい経緯を調べている。
修復されたのは、村内の大峯奥駈道の道沿いにある「前鬼(ぜんき)集落跡」の石垣(高さ約1・8メートル、幅約5メートル)。かつて立っていた修験者用の宿坊の関連遺構という。
村は昨年8月頃、樹木の成長などで石垣が崩れているのを確認した。同12月中旬、村の予算で石積みの専門家を招いて修復の講習会を開き、受講した地域住民らが崩れた部分の大半を積み直したという。
残った崩落箇所について、再度、講習会を開いて修復しようと考えた村は今年4月下旬、県に「支援を受けられないか」と相談した。その際、県から「石垣は国史跡に含まれるのではないか」と指摘されたという。
文化財保護法では、国史跡の現状変更は市町村が都道府県に相談した上で、文化庁長官の許可を得るよう定められている。村は取材に対し、「景観を良くしようと実施したが、認識が甘かった」としている。
県の担当者は「村が史跡の範囲を認識しておく必要があるが、文化財の専門職員が少ないという実情があるのだろう」とし、「昨年も事前に相談があれば、助言できたのだが」と話す。修復済みの石垣への対応策は未定という。
大峯奥駈道 奈良県の吉野山と和歌山県の熊野本宮大社を結ぶ約80キロの山岳道。修験道の開祖とされる役行者(えんのぎょうじゃ)が8世紀初め頃に開いたとされ、道中には、修験者向けの神仏の礼拝所や修行場所が点在する。

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