インバウンドで「温泉難民」が続出 タトゥーある外国人お断りは差別なのか

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「温泉入れないなんて悲しすぎるよ」「タトゥーフリーの施設を探すだけで一苦労なんだけど」。ネット上では、湯での癒しを求めて来日した外国人観光客から、このような声があがっている。事情を知らずに訪問して断られ、ショックを受ける人もいるようだ。
BIGLOBEが2023年2月にインターネット上でおこなったアンケート調査(対象:全国の20代~60代までの男女1000人)によると、温泉でのタトゥーは「一律で禁止すべき」(43.9%)がもっとも多く、続いて「一律ではなく、個々で対応を検討すべき」(33.7%)、「時代に合わせて変容すべき」(22.4%)と並んだ。
賛否両論あるものの、ルールに肯定的な日本人からも「外国人に対しては融通をきかせるべきでは」などの意見がある。時代や「入れ墨」に対するイメージが変わり、観光客が戻りつつある中、入浴を断ることに問題はないのか。猪野亨弁護士に聞いた。
「民間施設には、営業の自由がある。本来、誰を入浴させて、誰を拒否するのかという選択は自由」と前置きしたうえで、猪野弁護士は次のように説明する。
「不合理な差別的扱いは、国際人権B規約や人種差別撤廃条約にも違反します。憲法が定める『法の下の平等』の理念に反することになると、不法行為として違法と評価されることもあります。
以前、小樽の銭湯で外国人を一律に拒否した銭湯に対して、2002年に札幌地裁で損害賠償請求が認められています。民間であっても公共性が強くなれば、違法とされる可能性も高くなります。
もちろん、施設側にも一定の合理的な理由はあります。日本人、外国人を問わず、タトゥーを含む入れ墨をしている人が入浴していると、他の入浴客が不快になったり、それがきっかけで客離れを招きかねないからです」
ただ、想定されている「入れ墨」について考える必要があるという。
「入れ墨の習慣のない日本人には特殊なイメージですが、海外ではごく当たり前の習慣だという国も少なからずあります。民族の風習であれば、是非はともかく特殊性はありません。この場合、入れ墨(タトゥーを含む)だから一律に拒否するのは、『外国人だから拒否しているのと変わらず、違法だ』と判断されるのではないでしょうか。
また、入れ墨といえば確かに、龍の彫り物などまさにヤクザのイメージですが、タトゥーという呼ばれ方もしています。タトゥーは従来の入れ墨と異なり、ワンポイントのイメージです。日本でも、小さなタトゥーをしている人はそれほど珍しくなくなりました。こうした状況から、日本人でも外国人でも一律禁止は行き過ぎです」
【取材協力弁護士】猪野 亨(いの・とおる)弁護士札幌弁護士会所属。離婚や親権、面会交流などの家庭の問題、DVやストーカー被害、高齢者や障害者、生活困窮者の相談など、主に民事や家事事件を扱う。事務所名:いの法律事務所事務所URL:http://inotoru.blog.fc2.com/

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