「分家に出されてから80年にわたる恨み」青森六戸一家全焼 事件直前に92歳親族と被害者一家の間に生じていた「異変」

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青森県六戸町で自宅が全焼し、5人の焼死体が見つかった。9歳の子供までが亡くなる凄惨な事件になってしまったが、警察は一家の親族にあたる92歳男性が放火に関与した疑いで捜査を進めている。この一家との間に何があったのか。現地を徹底取材した。【前後編の前編】
【写真13枚】目を覆いたくなる現場の様子 抄知さんは子供との幸せな日常を綴っていた 青森県六戸町犬落瀬で十文字利美さん(68)宅が全焼し、焼け跡から5人の遺体が見つかった。4月20日には現場で消防署による火災調査が行なわれ、近隣住民にも聞き込みをする様子が見られた。

火災が起きたのは4月13日午前1時頃。近隣住民によると、「2時前くらいに消防団員が来たんだけど、まったく家屋には近づくことができず。十文字家の建物の倍くらいまで、炎が上に向かって燃えていた。防火水槽の水が尽きてようやく消火できた」ほどの大火災だったという。 十文字家は田畑などの土地持ちの裕福な家として知られ、現在は利美さん夫婦、次女・抄知さん(39)夫婦、抄知さんの子供3人、そして利美さんの義母・和子さん(88)の4世代8人が住んでいた。現場からは5人の遺体が発見され、青森県警は4月20日、うち4人が利美さんの妻・弘子さん(67)、次女の抄知さん、抄知さんの子供の弥羽さん(9)、義母の和子さん(88)と発表した。 そして残る遺体の1人は、現場から170メートルほど離れたところに住む砂渡好彦氏(92)だとみられている。好彦氏らしき遺体は玄関で発見。現場の付近には好彦氏の車が停まっていて、後部座席からは灯油が入っていたポリタンクが見つかっている。県警は事件翌日に容疑者不詳のまま現住建造物等放火容疑で、好彦氏の自宅に家宅総捜査を行なった。 好彦氏は亡くなった和子さんの兄にあたる。一家を古くから知る住民が語る。「80年ほど前、近くの集落に住んでいた好彦と和子の母親が十文字家の男を好きになり、押しかけて家に入り、正妻は追われるように出ていって、婚姻関係を結んだ。好彦は資産家の十文字家の跡継ぎになれるかもしれないと思ったんだろうが、母親は夫になった男と、正妻との子(男)と和子を結婚させた。その結果、好彦は“かまど(分家)”に出されたんだ。 好彦は亡くなった和子だけでなく、姉との3人きょうだい。ただ、その姉はすでに亡くなっている。好彦と和子も昔は仲が良かったころもあったんだけど、少なくともここ10年以上は仲が悪かったようだ」 好彦氏は妹である和子さんへの不満を恒常的に漏らしていたというが、その矛先は和子さんだけでなく一家全員に向けられていた。「かまどになったのはもう80年近くも前のことだけど、ずっと恨みを募らせていたようだ。昔からことあるごとに『やっつける』『かたきを取る』と(言っていた)。たいてい和子に対して怒っていたが、時折『孫までやっつける』という不穏な言葉を口にしていた。『火をつける』という言葉も何回も聞いた。まさか……」(近隣住民) 好彦氏は長年、十文字一家への恨みを募らせていたことが窺えるが、事件に至る決定的なきっかけがあったのかなど詳細はわかっていない。だが、一家と親しい人は不穏な動きを感じ取っていた。「十文字さん家は毎年花見をやっていたのに、今年、利美さんはやろうと言わず、どこか様子もおかしかった。今になってみると、いつもと違っていたのは、好彦さんから私生活について言いがかりをつけられていたからかもしれない。小さな子供もいるから好彦になにかされたら危ないと思ったんだろう」 事件から10日以上経つが現場には献花に訪れる人が絶えない。【後編に続く】
青森県六戸町犬落瀬で十文字利美さん(68)宅が全焼し、焼け跡から5人の遺体が見つかった。4月20日には現場で消防署による火災調査が行なわれ、近隣住民にも聞き込みをする様子が見られた。
火災が起きたのは4月13日午前1時頃。近隣住民によると、「2時前くらいに消防団員が来たんだけど、まったく家屋には近づくことができず。十文字家の建物の倍くらいまで、炎が上に向かって燃えていた。防火水槽の水が尽きてようやく消火できた」ほどの大火災だったという。
十文字家は田畑などの土地持ちの裕福な家として知られ、現在は利美さん夫婦、次女・抄知さん(39)夫婦、抄知さんの子供3人、そして利美さんの義母・和子さん(88)の4世代8人が住んでいた。現場からは5人の遺体が発見され、青森県警は4月20日、うち4人が利美さんの妻・弘子さん(67)、次女の抄知さん、抄知さんの子供の弥羽さん(9)、義母の和子さん(88)と発表した。
そして残る遺体の1人は、現場から170メートルほど離れたところに住む砂渡好彦氏(92)だとみられている。好彦氏らしき遺体は玄関で発見。現場の付近には好彦氏の車が停まっていて、後部座席からは灯油が入っていたポリタンクが見つかっている。県警は事件翌日に容疑者不詳のまま現住建造物等放火容疑で、好彦氏の自宅に家宅総捜査を行なった。
好彦氏は亡くなった和子さんの兄にあたる。一家を古くから知る住民が語る。
「80年ほど前、近くの集落に住んでいた好彦と和子の母親が十文字家の男を好きになり、押しかけて家に入り、正妻は追われるように出ていって、婚姻関係を結んだ。好彦は資産家の十文字家の跡継ぎになれるかもしれないと思ったんだろうが、母親は夫になった男と、正妻との子(男)と和子を結婚させた。その結果、好彦は“かまど(分家)”に出されたんだ。
好彦は亡くなった和子だけでなく、姉との3人きょうだい。ただ、その姉はすでに亡くなっている。好彦と和子も昔は仲が良かったころもあったんだけど、少なくともここ10年以上は仲が悪かったようだ」
好彦氏は妹である和子さんへの不満を恒常的に漏らしていたというが、その矛先は和子さんだけでなく一家全員に向けられていた。
「かまどになったのはもう80年近くも前のことだけど、ずっと恨みを募らせていたようだ。昔からことあるごとに『やっつける』『かたきを取る』と(言っていた)。たいてい和子に対して怒っていたが、時折『孫までやっつける』という不穏な言葉を口にしていた。『火をつける』という言葉も何回も聞いた。まさか……」(近隣住民)
好彦氏は長年、十文字一家への恨みを募らせていたことが窺えるが、事件に至る決定的なきっかけがあったのかなど詳細はわかっていない。だが、一家と親しい人は不穏な動きを感じ取っていた。
「十文字さん家は毎年花見をやっていたのに、今年、利美さんはやろうと言わず、どこか様子もおかしかった。今になってみると、いつもと違っていたのは、好彦さんから私生活について言いがかりをつけられていたからかもしれない。小さな子供もいるから好彦になにかされたら危ないと思ったんだろう」
事件から10日以上経つが現場には献花に訪れる人が絶えない。【後編に続く】

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