「中国に乗っ取られる」とまで…釧路湿原、伊東市で注目のメガソーラー建設 温暖化が進む、環境壊すとの批判の真相

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北海道の釧路湿原は、日本最大の湿原であり、豊かな自然環境を有し、国立公園にも指定されている。動植物の宝庫として知られ、多くの人々がその保護を願っている。
しかし現在、その湿原の外側に位置する民有地において、メガソーラー(大規模な太陽光発電所)の建設計画が進められている。この計画に対しては住民から反対の声が上がっており、開発を進める企業の代表が「立ち止まることはできない」と発言したことが、さらなる議論を呼んでいる。
なぜ、このような状況が生まれたのだろうか。
日本でメガソーラーが急速に普及したきっかけは、2012年に始まった「固定価格買取制度(FIT)」にある。これは、太陽光などの再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定の価格で買い取る制度であり、再エネ普及を大きく後押しした。
しかし、その急激な広がりの一方で、計画がずさんであったり、自然環境への配慮が不足していたりするケースも増え、各地で問題が起こるようになった。
こうした事態を受けて、2017年には改正FIT法により事前認定制度が必要となった。2021年には外国資本による土地取得の監視制度・重要土地等調査法が、2022年には盛土(もりど)規制法などが整備され、国の方針は「普及優先」から「適切な管理」へと大きく転換した。
そのような中で浮上したのが、釧路市の湿原地帯におけるメガソーラー建設計画である。計画地は国立公園の外にあり、法律による保護対象外であったため、制度の「すき間」を利用した開発が進められている。
さらに、環境影響評価(アセスメント)の対象にならないよう、出力を40メガワット未満に抑えて計画を分割するケースも指摘されており、現行制度の不備が問題視されている。
この状況を受け、釧路市は2023年7月に「自然と共生する太陽光発電施設の設置に関するガイドライン」を施行した。さらに2024年9月には、10キロワット以上の太陽光発電施設を許可制とする条例案を市議会に提出している。蝦名大也市長は「ノーモア・メガソーラー宣言」を掲げ、地域の自然と生態系を守る姿勢を明確にしている。
同様の懸念は、静岡県伊東市でも見られる。伊豆高原や小室山周辺にメガソーラー建設の計画が持ち上がり、観光や温泉に依存する地域経済への悪影響、土砂災害のリスクなどを理由に、市議会は繰り返し反対決議を行っている。住民の一部は裁判にも踏み切っており、問題は深刻である。
ただし、伊東市では田久保真紀市長に関する学歴詐称や市議会の解散など、別の問題で市政が混乱し、メガソーラーの議論が十分に注目されないという課題もある。
こうした地域ごとの対立が注目される一方で、誤解や誤情報の拡散も問題となっている。
たとえば「メガソーラーが地球温暖化を進める」という主張がある。たしかに、太陽光パネルが地面の反射を抑え、周囲の気温を上昇させる「PVヒートアイランド現象」は確認されている。だが、地球全体の温暖化を進めるほどの影響はなく、むしろ温室効果ガスを削減する効果のほうが大きいとされている。
また「中国資本に日本のメガソーラー事業が乗っ取られている」といった声もあるが、これは誤解である。たしかに、太陽光パネルの製造には中国企業への依存があるが、日本国内では土地取得や事業実施に関する規制が強化されており、資本による直接的な支配とは異なる。
さらに、2021年7月に静岡県熱海市で発生した大規模な土石流について「メガソーラーが原因だった」という説も広まった。しかし、公的な調査では違法な盛土が主な原因であり、太陽光発電施設は直接的な関与がなかった。この事故を契機に、先に挙げた盛土に関する法整備が進められたというのが正しい理解である。
このような混乱を防ぐためにも、事業計画や環境調査の内容を誰もが確認できる情報公開の仕組み、一次資料を誰でも閲覧できる「ダッシュボード」の整備などが必要だろう。
もちろん、環境アセスメント制度の見直しなど、制度そのものの再設計を踏まえての話だ。
地域の特性を尊重しながら、環境にも配慮した持続可能なエネルギー開発のあり方を再検討していく必要がある。

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