言われてみればその通りかもと誰もが納得するが、どうやら“好色ジジイ”は長生きするらしい。こんな俗説を証明する研究結果が発表された。山形大学医学部看護学科の櫻田香教授らのグループによる研究で、「異性への関心が高い人は長生きする」とする論文が昨年12月、米科学誌『プロスワン』に掲載されたのだ。
櫻田教授は、山形県全域にわたり地域に密着して疫学等の研究を行なってきた。そのデータ解析から、過去には「よく笑うほど寿命が延びる」とする論文を報告したこともあるが、今回も山形県内に住む男女約2万人の、最大9年間にわたる追跡調査からの報告となる。
研究では、40歳以上の男女約1万9000人(男性7668人、女性1万1386人)を対象に、調査が行なわれた。
対象者に対してはアンケート調査を実施し、異性への関心について「はい(ある)」「いいえ(ない)」の2択で回答を求め、男性の8.3%、女性の16.1%が、「関心がない」と答えた。
こうしたデータをもとにした分析の結果、異性に「関心がない人」の死亡率は9.6%となり、「関心がある人」の5.6%を上回ったのだ。櫻田教授が説明する。
「加齢や高血圧など、寿命を左右する他の影響を取り除くように調整したところ、異性に関心がなかった男性は関心があった男性に比べて、全死亡のリスクが1.69倍高かった。一方女性については、異性への関心の高さと死亡リスクに関連はありませんでした」
なぜ男性においてのみ、異性への関心が寿命に関係するのか。
「日本において男性は、既婚者より離婚及びパートナーと死別した人のほうが死亡リスクが高いという過去の研究もあります。男性の異性への関心は、心理的な幸福や生きがいに関連している可能性があります。異性を含めて様々なことに関心がないと幸せを感じられず、生きがいがなくなってしまい、死亡リスクも上がるのではないかと推測しています」(櫻田教授)
男性の場合、生きる活力と異性への関心がリンクしていると考えられる。
「異性への関心を失った男性は不健康な生活を送りやすく、心理面にも良くない影響を及ぼす可能性がある。その結果、炎症傾向の上昇や、内分泌系や免疫反応に悪影響が出ることも考えられます」(同前)
“好色な男性は長生きする”という研究は、海外からも出ている。
1997年、イギリスの研究チームが発表した論文では、45歳から59歳までの918人の男性が10年間追跡調査されている。性的興奮の頻度が「月1回未満」だと回答したグループの10年後の死亡率は、「週に2度以上」と回答したグループの約2倍だったという。
医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が語る。
「この調査では実際に性行為に至らなくても、性的興奮を覚えるだけでOKとされている。性的なことを考えることそのものが、死亡率を下げていると推測できます。
今回の櫻田氏の研究は、イギリスの研究の20倍以上の対象を扱っている点で優れている。海外でも高く評価されています」
「セックスが健康につながる」とする研究論文は、他にもある。
「ハーバード大学の研究によると、月に21回以上射精している男性は、月に4~7回の同年代男性に比べ、約22%、前立腺がんのリスクが低かったという結果が出ています。
その他、カナダのローリエ大から、出勤前にキスをして出かけるカップルは、しないカップルに比べ寿命が5年長いという研究報告が出ています。高齢者の性と健康寿命の関連については、今後も注目分野として研究が進むでしょう」(室井氏)
高齢にもかかわらずお達者な人といえば、かつて“銀座の帝王”として名を馳せたみのもんた氏(78)である。パーキンソン病を患っていることを公表後表舞台から姿を消し、“クラブ活動”も自粛していたが、最近になって銀座の飲み歩きを再開したという。3月上旬、本人に話を聞くと、足取りはしっかりして、表情は豊かだった。
「(再婚相手を)毎日、毎日探してるよ」
「(健康状態は)まぁまぁだね。銀座には週に2、3日行けるくらいだよ。(仕事については)若い連中に道を譲ってやらないとね。銀座は譲らないけどね(笑)」
“好色ジジイ”は長生きする?
※週刊ポスト2023年4月28日号