【二階堂 運人】高齢者の「免許返納」はじつは年々減っていた! 深刻化する高齢ドライバー問題の「シビアな現実」

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高齢ドライバーの運転操作のミスや、逆走による事故が多発している。悲惨な事故がこれだけ大きく報道されているにもかかわらず、高齢ドライバーによる事故は減らない。もはや社会問題といってもいいだろう。ひとつの解決策として、運転免許証の自主返納が求められているが、実態はどうなっているのか。また、自主返納以外の対策はどうなっているのか。ドライバー不足なうえに高齢化が進む、職業ドライバーの現状もあわせてみてみたい。
高齢者による交通事故が多発する中、行政も黙っているわけにはいかない。昨年の5月13日から高齢者の免許更新制度が厳しくなった。具体的には、今まで75歳以上に義務付けられてきた内容を70歳まで引き下げ、高齢者講習を受講しなければならなくなった。
しかし、高齢者による事故は一向に減らない。
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高齢ドライバーによる事故を防ぐ方法は果たしてあるのか。真っ先に思い浮かぶのが、高齢者による運転免許証の自主返納である。事故を起こすリスクが高い高齢ドライバーに、運転をさせないという選択である。それでは、高齢者による運転免許証の自主返納の現状はどうなのか。警察庁の発表によると、近年の高齢者による運転免許の返納者は、母子らが犠牲となった池袋暴走事故が起きた2019年には60万1022人と過去最多を記録したが、2021年の返納者は51万7040人、2022年は44万8476人となっており、その後は年々減少している。高齢ドライバーが起こす事故は、どのような要因のものが多いのか。運転免許証の返納が多かった2019年に発生した、75歳以上の高齢運転者による死亡事故は358件である。以下、要因の順位である(出典:警察庁「令和元年における交通死亡事故の発生状況等について」)。「操作不適(ハンドルの操作不適、ブレーキとアクセルの踏み間違いを含む)」30%「安全不確認」19%「内在的前方不注意(漫然運転等)」19%「外在的前方不注意(脇見等)」10%「判断の誤り」7%事故原因のうち「操作不適」が一番多いところをみてわかるように、歳を重ねるにつれて、認知能力や瞬時の判断速度が著しく落ちていく。しかし、そのことを認識している高齢ドライバーがどれほどいることか。NEXCO東日本の調査によると、高齢になればなるほど運転に自信があるという調査結果が出ている。66~69歳は73.5%、70~74歳は75%、75歳以上にいたっては79.4%、実に約8割の人が運転に自信を持っているのだ。その自信の表れか、世間を賑わす高齢者の事故は他人事、自分は事故など起こすはずもないと思っている高齢ドライバーは多い。万が一事故が起こったとしても自らに落ち度はなく、「車が故障した」や「相手が急に飛び出してきた」など周りに責任転換してしまうのであろう。こうした高齢者の「運転に自信あり」という幻想が、免許証返納者の数字にあらわれている。「サポカー限定免許」で事故は減るのか運転免許証の返納以外に、高齢ドライバーが事故を起こすリスクを減らすものはないのか。運転免許証を返納せずに安全に車を運転することができるものがある。それが安全運転サポート車限定免許(サポカー限定免許)である。安全運転サポート車(サポカー)とは、目の前の歩行者や障害物などを感知し、ドライバーに警告したり自動でブレーキを作動させる「衝突被害軽減ブレーキ」や、アクセル・ブレーキなどのペダルを踏み間違えた時に急発進を抑える「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」などの機能が備わっている車両のことをいう。Photo by iStock また、任意自動車保険料が割引になるなどメリットがある。サポカー限定免許では、上記の安全運転支援装置が搭載された普通自動車(サポカー)のみ、運転することができる免許制度のことをいう。ただし、後付けの装置の車両は対象外となる。この免許制度は、高齢者限定ではなく、年齢や性別に関係なく申請できる。運転に自信がない人にとっても、家族など周囲を安心させるにはいいであろう。ただ、サポカーは決して万能ではない。自動運行装置とは異なり、全てが適切に作動するわけではない。あくまでもドライバーに対する技術支援であり、周囲の状況に応じた運転操作をしなければならない。サポカー限定免許は、高齢で運転に不安がありつつも、生活上車が必要で免許返納をためらう人を想定して作られた制度だが、普通免許からサポカー限定免許に切り替えるような強制力は一切なく任意的なものである。その強制力のなさが、制度を宙ぶらりんにしているように感じてならない。深刻になっている職業ドライバーの高齢化一般ドライバーより、職業ドライバーの高齢化はより深刻である。昨今、騒がれている法律改正により起こるであろう「2024年問題」(*2024年4月以降からドライバーの年間時間外労働の上限が960時間に制限されることで発生する問題)よりも、ドライバーの高齢化の問題がより深刻である。*参考記事:「宅配クライシス」再び?ドライバー不足の物流業界に迫る「2つの大問題」2020年の調査によると、道路貨物運送業に従事する人のうち40~50代前半が44%と半数近くを占める。若年層の29歳以下の割合は10%に対し、60代以上は16%を占めている。タクシー業界にいたっては、65歳以上となると全体の46.2%も占めており、タクシードライバーの半数近くが高齢ドライバーである。Photo by iStock また、勤務延長制度や再雇用制度のある企業も産業全体平均77%に比べ81.8%もあり、高齢者の力に頼らざるを得ないのが現状である(出典:総務省「労働力調査」及び全国ハイヤー・タクシー連合会)。この数字は今後減ることはなく、10年後、20年後にはさらに高齢化が加速していくことが予想される。他業種に比べて高齢者が多く働くタクシー業界。たまたま乗ったタクシーのドライバーが高齢者で、おぼつかない運転でヒヤヒヤした人も少なくないであろう。ドライバーからの乗車拒否ではなく、不安になった乗客からの乗車拒否の話も聞くことがある。各タクシー会社は、高齢ドライバーに対してどのような対応をとっているのか。全国ハイヤー・タクシー連合会のアンケート調査によると、タクシー特有の隔日日勤ではなく、昼日勤中心にしたり、休日の設定を多くするなどして、高齢ドライバーの身体の負担を軽くしたり、集中力を維持できる対策をとっている会社も多い。また、いざとなったらドライバーから事務仕事などの内勤に配置換えを提案する会社もある。これからは、高齢ドライバーを雇用するにあたっては、勤務時間や勤務日数をどのように設定するかが重要である。パートタイマー制は高齢ドライバーの救世主か今年3月に日本交通株式会社が「GO Crew(ゴークルー)」を新設した。これはタクシー業界で今までになかったパートタイマー制を導入した、アプリ配車のみの迎車営業である。Photo by iStock タクシー営業の基本である流し営業による「急ハンドル」「急ブレーキ」などの「急」の付く危険な動作を回避でき、精神的にも肉体的にも負担をかけない働き方ができる。現在は、主婦層やフリーランスをターゲットにしたドライバー募集だが、今後は高齢者ドライバーにもターゲットを向けていくかもしれない。大きな割合を占める高齢ドライバーがいなくなれば、物の移動にも人の移動にも多大な影響を与える。今の職業ドライバー不足の状況からみて、高齢ドライバーのリスクや負担を最小限に抑える対策をしながら凌いでいくしかないであろうか。ある年齢に達したら強制的に免許証を返納すべきという意見もある。しかし、法律で決めてしまえば解決するような単純な問題ではない。「2024年問題」や職業ドライバー不足、過疎地の交通難民、ドライバーが唯一の収入源といった家庭の事情など、複雑に絡み合っている。過疎地の交通手段や環境を整備することはもちろんのことであるが、高齢者が車の運転をしなくていい環境整備、また個人個人に対して免許証返納による目に見える何かしらのメリットを施策するなど、行政側には積極的に動いてほしいものだ。運転免許証返納、サポカー限定免許。それぞれに強制力がない故に、あなたがそれを選択する意思によって大事な相手に思いが伝わるかもしれない。
高齢ドライバーによる事故を防ぐ方法は果たしてあるのか。真っ先に思い浮かぶのが、高齢者による運転免許証の自主返納である。事故を起こすリスクが高い高齢ドライバーに、運転をさせないという選択である。
それでは、高齢者による運転免許証の自主返納の現状はどうなのか。
警察庁の発表によると、近年の高齢者による運転免許の返納者は、母子らが犠牲となった池袋暴走事故が起きた2019年には60万1022人と過去最多を記録したが、2021年の返納者は51万7040人、2022年は44万8476人となっており、その後は年々減少している。
高齢ドライバーが起こす事故は、どのような要因のものが多いのか。運転免許証の返納が多かった2019年に発生した、75歳以上の高齢運転者による死亡事故は358件である。以下、要因の順位である(出典:警察庁「令和元年における交通死亡事故の発生状況等について」)。
「操作不適(ハンドルの操作不適、ブレーキとアクセルの踏み間違いを含む)」30%
「安全不確認」19%
「内在的前方不注意(漫然運転等)」19%
「外在的前方不注意(脇見等)」10%
「判断の誤り」7%
事故原因のうち「操作不適」が一番多いところをみてわかるように、歳を重ねるにつれて、認知能力や瞬時の判断速度が著しく落ちていく。しかし、そのことを認識している高齢ドライバーがどれほどいることか。
NEXCO東日本の調査によると、高齢になればなるほど運転に自信があるという調査結果が出ている。66~69歳は73.5%、70~74歳は75%、75歳以上にいたっては79.4%、実に約8割の人が運転に自信を持っているのだ。
その自信の表れか、世間を賑わす高齢者の事故は他人事、自分は事故など起こすはずもないと思っている高齢ドライバーは多い。万が一事故が起こったとしても自らに落ち度はなく、「車が故障した」や「相手が急に飛び出してきた」など周りに責任転換してしまうのであろう。
こうした高齢者の「運転に自信あり」という幻想が、免許証返納者の数字にあらわれている。
運転免許証の返納以外に、高齢ドライバーが事故を起こすリスクを減らすものはないのか。運転免許証を返納せずに安全に車を運転することができるものがある。それが安全運転サポート車限定免許(サポカー限定免許)である。
安全運転サポート車(サポカー)とは、目の前の歩行者や障害物などを感知し、ドライバーに警告したり自動でブレーキを作動させる「衝突被害軽減ブレーキ」や、アクセル・ブレーキなどのペダルを踏み間違えた時に急発進を抑える「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」などの機能が備わっている車両のことをいう。
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また、任意自動車保険料が割引になるなどメリットがある。サポカー限定免許では、上記の安全運転支援装置が搭載された普通自動車(サポカー)のみ、運転することができる免許制度のことをいう。ただし、後付けの装置の車両は対象外となる。この免許制度は、高齢者限定ではなく、年齢や性別に関係なく申請できる。運転に自信がない人にとっても、家族など周囲を安心させるにはいいであろう。ただ、サポカーは決して万能ではない。自動運行装置とは異なり、全てが適切に作動するわけではない。あくまでもドライバーに対する技術支援であり、周囲の状況に応じた運転操作をしなければならない。サポカー限定免許は、高齢で運転に不安がありつつも、生活上車が必要で免許返納をためらう人を想定して作られた制度だが、普通免許からサポカー限定免許に切り替えるような強制力は一切なく任意的なものである。その強制力のなさが、制度を宙ぶらりんにしているように感じてならない。深刻になっている職業ドライバーの高齢化一般ドライバーより、職業ドライバーの高齢化はより深刻である。昨今、騒がれている法律改正により起こるであろう「2024年問題」(*2024年4月以降からドライバーの年間時間外労働の上限が960時間に制限されることで発生する問題)よりも、ドライバーの高齢化の問題がより深刻である。*参考記事:「宅配クライシス」再び?ドライバー不足の物流業界に迫る「2つの大問題」2020年の調査によると、道路貨物運送業に従事する人のうち40~50代前半が44%と半数近くを占める。若年層の29歳以下の割合は10%に対し、60代以上は16%を占めている。タクシー業界にいたっては、65歳以上となると全体の46.2%も占めており、タクシードライバーの半数近くが高齢ドライバーである。Photo by iStock また、勤務延長制度や再雇用制度のある企業も産業全体平均77%に比べ81.8%もあり、高齢者の力に頼らざるを得ないのが現状である(出典:総務省「労働力調査」及び全国ハイヤー・タクシー連合会)。この数字は今後減ることはなく、10年後、20年後にはさらに高齢化が加速していくことが予想される。他業種に比べて高齢者が多く働くタクシー業界。たまたま乗ったタクシーのドライバーが高齢者で、おぼつかない運転でヒヤヒヤした人も少なくないであろう。ドライバーからの乗車拒否ではなく、不安になった乗客からの乗車拒否の話も聞くことがある。各タクシー会社は、高齢ドライバーに対してどのような対応をとっているのか。全国ハイヤー・タクシー連合会のアンケート調査によると、タクシー特有の隔日日勤ではなく、昼日勤中心にしたり、休日の設定を多くするなどして、高齢ドライバーの身体の負担を軽くしたり、集中力を維持できる対策をとっている会社も多い。また、いざとなったらドライバーから事務仕事などの内勤に配置換えを提案する会社もある。これからは、高齢ドライバーを雇用するにあたっては、勤務時間や勤務日数をどのように設定するかが重要である。パートタイマー制は高齢ドライバーの救世主か今年3月に日本交通株式会社が「GO Crew(ゴークルー)」を新設した。これはタクシー業界で今までになかったパートタイマー制を導入した、アプリ配車のみの迎車営業である。Photo by iStock タクシー営業の基本である流し営業による「急ハンドル」「急ブレーキ」などの「急」の付く危険な動作を回避でき、精神的にも肉体的にも負担をかけない働き方ができる。現在は、主婦層やフリーランスをターゲットにしたドライバー募集だが、今後は高齢者ドライバーにもターゲットを向けていくかもしれない。大きな割合を占める高齢ドライバーがいなくなれば、物の移動にも人の移動にも多大な影響を与える。今の職業ドライバー不足の状況からみて、高齢ドライバーのリスクや負担を最小限に抑える対策をしながら凌いでいくしかないであろうか。ある年齢に達したら強制的に免許証を返納すべきという意見もある。しかし、法律で決めてしまえば解決するような単純な問題ではない。「2024年問題」や職業ドライバー不足、過疎地の交通難民、ドライバーが唯一の収入源といった家庭の事情など、複雑に絡み合っている。過疎地の交通手段や環境を整備することはもちろんのことであるが、高齢者が車の運転をしなくていい環境整備、また個人個人に対して免許証返納による目に見える何かしらのメリットを施策するなど、行政側には積極的に動いてほしいものだ。運転免許証返納、サポカー限定免許。それぞれに強制力がない故に、あなたがそれを選択する意思によって大事な相手に思いが伝わるかもしれない。
また、任意自動車保険料が割引になるなどメリットがある。
サポカー限定免許では、上記の安全運転支援装置が搭載された普通自動車(サポカー)のみ、運転することができる免許制度のことをいう。ただし、後付けの装置の車両は対象外となる。
この免許制度は、高齢者限定ではなく、年齢や性別に関係なく申請できる。運転に自信がない人にとっても、家族など周囲を安心させるにはいいであろう。
ただ、サポカーは決して万能ではない。自動運行装置とは異なり、全てが適切に作動するわけではない。あくまでもドライバーに対する技術支援であり、周囲の状況に応じた運転操作をしなければならない。
サポカー限定免許は、高齢で運転に不安がありつつも、生活上車が必要で免許返納をためらう人を想定して作られた制度だが、普通免許からサポカー限定免許に切り替えるような強制力は一切なく任意的なものである。
その強制力のなさが、制度を宙ぶらりんにしているように感じてならない。
一般ドライバーより、職業ドライバーの高齢化はより深刻である。昨今、騒がれている法律改正により起こるであろう「2024年問題」(*2024年4月以降からドライバーの年間時間外労働の上限が960時間に制限されることで発生する問題)よりも、ドライバーの高齢化の問題がより深刻である。*参考記事:「宅配クライシス」再び?ドライバー不足の物流業界に迫る「2つの大問題」
2020年の調査によると、道路貨物運送業に従事する人のうち40~50代前半が44%と半数近くを占める。若年層の29歳以下の割合は10%に対し、60代以上は16%を占めている。
タクシー業界にいたっては、65歳以上となると全体の46.2%も占めており、タクシードライバーの半数近くが高齢ドライバーである。
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また、勤務延長制度や再雇用制度のある企業も産業全体平均77%に比べ81.8%もあり、高齢者の力に頼らざるを得ないのが現状である(出典:総務省「労働力調査」及び全国ハイヤー・タクシー連合会)。この数字は今後減ることはなく、10年後、20年後にはさらに高齢化が加速していくことが予想される。他業種に比べて高齢者が多く働くタクシー業界。たまたま乗ったタクシーのドライバーが高齢者で、おぼつかない運転でヒヤヒヤした人も少なくないであろう。ドライバーからの乗車拒否ではなく、不安になった乗客からの乗車拒否の話も聞くことがある。各タクシー会社は、高齢ドライバーに対してどのような対応をとっているのか。全国ハイヤー・タクシー連合会のアンケート調査によると、タクシー特有の隔日日勤ではなく、昼日勤中心にしたり、休日の設定を多くするなどして、高齢ドライバーの身体の負担を軽くしたり、集中力を維持できる対策をとっている会社も多い。また、いざとなったらドライバーから事務仕事などの内勤に配置換えを提案する会社もある。これからは、高齢ドライバーを雇用するにあたっては、勤務時間や勤務日数をどのように設定するかが重要である。パートタイマー制は高齢ドライバーの救世主か今年3月に日本交通株式会社が「GO Crew(ゴークルー)」を新設した。これはタクシー業界で今までになかったパートタイマー制を導入した、アプリ配車のみの迎車営業である。Photo by iStock タクシー営業の基本である流し営業による「急ハンドル」「急ブレーキ」などの「急」の付く危険な動作を回避でき、精神的にも肉体的にも負担をかけない働き方ができる。現在は、主婦層やフリーランスをターゲットにしたドライバー募集だが、今後は高齢者ドライバーにもターゲットを向けていくかもしれない。大きな割合を占める高齢ドライバーがいなくなれば、物の移動にも人の移動にも多大な影響を与える。今の職業ドライバー不足の状況からみて、高齢ドライバーのリスクや負担を最小限に抑える対策をしながら凌いでいくしかないであろうか。ある年齢に達したら強制的に免許証を返納すべきという意見もある。しかし、法律で決めてしまえば解決するような単純な問題ではない。「2024年問題」や職業ドライバー不足、過疎地の交通難民、ドライバーが唯一の収入源といった家庭の事情など、複雑に絡み合っている。過疎地の交通手段や環境を整備することはもちろんのことであるが、高齢者が車の運転をしなくていい環境整備、また個人個人に対して免許証返納による目に見える何かしらのメリットを施策するなど、行政側には積極的に動いてほしいものだ。運転免許証返納、サポカー限定免許。それぞれに強制力がない故に、あなたがそれを選択する意思によって大事な相手に思いが伝わるかもしれない。
また、勤務延長制度や再雇用制度のある企業も産業全体平均77%に比べ81.8%もあり、高齢者の力に頼らざるを得ないのが現状である(出典:総務省「労働力調査」及び全国ハイヤー・タクシー連合会)。
この数字は今後減ることはなく、10年後、20年後にはさらに高齢化が加速していくことが予想される。
他業種に比べて高齢者が多く働くタクシー業界。たまたま乗ったタクシーのドライバーが高齢者で、おぼつかない運転でヒヤヒヤした人も少なくないであろう。ドライバーからの乗車拒否ではなく、不安になった乗客からの乗車拒否の話も聞くことがある。
各タクシー会社は、高齢ドライバーに対してどのような対応をとっているのか。全国ハイヤー・タクシー連合会のアンケート調査によると、タクシー特有の隔日日勤ではなく、昼日勤中心にしたり、休日の設定を多くするなどして、高齢ドライバーの身体の負担を軽くしたり、集中力を維持できる対策をとっている会社も多い。
また、いざとなったらドライバーから事務仕事などの内勤に配置換えを提案する会社もある。これからは、高齢ドライバーを雇用するにあたっては、勤務時間や勤務日数をどのように設定するかが重要である。
今年3月に日本交通株式会社が「GO Crew(ゴークルー)」を新設した。これはタクシー業界で今までになかったパートタイマー制を導入した、アプリ配車のみの迎車営業である。
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タクシー営業の基本である流し営業による「急ハンドル」「急ブレーキ」などの「急」の付く危険な動作を回避でき、精神的にも肉体的にも負担をかけない働き方ができる。現在は、主婦層やフリーランスをターゲットにしたドライバー募集だが、今後は高齢者ドライバーにもターゲットを向けていくかもしれない。大きな割合を占める高齢ドライバーがいなくなれば、物の移動にも人の移動にも多大な影響を与える。今の職業ドライバー不足の状況からみて、高齢ドライバーのリスクや負担を最小限に抑える対策をしながら凌いでいくしかないであろうか。ある年齢に達したら強制的に免許証を返納すべきという意見もある。しかし、法律で決めてしまえば解決するような単純な問題ではない。「2024年問題」や職業ドライバー不足、過疎地の交通難民、ドライバーが唯一の収入源といった家庭の事情など、複雑に絡み合っている。過疎地の交通手段や環境を整備することはもちろんのことであるが、高齢者が車の運転をしなくていい環境整備、また個人個人に対して免許証返納による目に見える何かしらのメリットを施策するなど、行政側には積極的に動いてほしいものだ。運転免許証返納、サポカー限定免許。それぞれに強制力がない故に、あなたがそれを選択する意思によって大事な相手に思いが伝わるかもしれない。
タクシー営業の基本である流し営業による「急ハンドル」「急ブレーキ」などの「急」の付く危険な動作を回避でき、精神的にも肉体的にも負担をかけない働き方ができる。
現在は、主婦層やフリーランスをターゲットにしたドライバー募集だが、今後は高齢者ドライバーにもターゲットを向けていくかもしれない。
大きな割合を占める高齢ドライバーがいなくなれば、物の移動にも人の移動にも多大な影響を与える。今の職業ドライバー不足の状況からみて、高齢ドライバーのリスクや負担を最小限に抑える対策をしながら凌いでいくしかないであろうか。
ある年齢に達したら強制的に免許証を返納すべきという意見もある。しかし、法律で決めてしまえば解決するような単純な問題ではない。「2024年問題」や職業ドライバー不足、過疎地の交通難民、ドライバーが唯一の収入源といった家庭の事情など、複雑に絡み合っている。
過疎地の交通手段や環境を整備することはもちろんのことであるが、高齢者が車の運転をしなくていい環境整備、また個人個人に対して免許証返納による目に見える何かしらのメリットを施策するなど、行政側には積極的に動いてほしいものだ。
運転免許証返納、サポカー限定免許。それぞれに強制力がない故に、あなたがそれを選択する意思によって大事な相手に思いが伝わるかもしれない。

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