東京大学といえば、日本最難関クラスの大学。そこに通う学生の多くは、小さなころから塾通いをして名門中高を通ってきた、いわゆる「エリート」たちです。しかし、それがすべてではありません。一部には、まったくエリートらしからぬ道筋をたどって東大に合格した学生もいます。ここでは、元落ちこぼれや休学経験者など、「普通の東大生」らしからぬ道を辿って東大へ入学した、みなさんの知らない「リアルな東大生」の姿をお届けします。
今回お話を伺うのは、この春まで東京大学に在籍していた相生昌悟さん。この四月から社会人として働かれることになりますが、彼もまた、在学中に様々なことを成し遂げてきたと言います。本日は、相生さんが東京大学に至るまでの道のりを伺います。
◆高校2年まで成績は振るわず
「僕は、地方の公立校出身です。僕の生まれ育った県は、そこまで東大進学率も高くなく、県全体でみても10人いるかいないかというところでした。もちろん、有名予備校なんてありませんし、塾に通うことなんてできませんでした。それに、僕ももともとは東大志望じゃなかったんです」
通っていた母校全体でみても東大志望者が多くなかったという相生さん。「地方は地元志向」の原則にもれず、やはり地元の難関大学へ進学を希望する方が多かったようです。そして、それは相生さんも例外ではありませんでした。彼もまた、地元の難関大学を志望するごく普通の青年だったのです。
「僕はもともと成績がいいわけでもありませんでした。高校二年生まではずっと成績が振るわなかったんです。かといって勉強しなかったわけではありませんでした。むしろ、高校一年生の時からずっと勉強はしていたんです。それでも、いくら勉強しても思うように成績が上がらなかったんです」
彼が高校一年生の時から勉強していたのは、高校に漂うある雰囲気に対し、違和感を覚えていたからです。それは、周囲から感じられる「浪人しても、まぁいいよね」という雰囲気。そこから「周りの勉強スピードに合わせていてはいけない!」と確信し、高校一年生の時から勉強に取り組むようになったのでした。
しかし、いくら勉強すれども成績は思うように伸びません。いったいどうして成績が振るわなかったのか?その理由を、彼は「先を急ぎ過ぎていたから」だと分析します。今から振り返って考えると、自分は背伸びをして難しすぎる問題に手を出し、着実に解ける問題を増やしていかなかったことに失敗の原因があるのだろうと言うのです。
このような失敗は受験生に限らず、多くの成績が伸び悩む学生に当てはまります。勉強しても成績が伸びない原因の多くは、自分の実力に見合っていないことを無理してやっているから生じるのです。彼もまた、このパターンにもれず、焦りから背伸びしすぎてしまったのでした。
◆がむしゃらに努力しても意味がない
そんな彼が変わったのは、高校二年生の時。
「高校二年生になって、近くの県にある大手予備校で、カリスマ講師による特別講義が開催されることになったんです。せっかくだから参加しました。するとそこで、『がむしゃらに努力しても意味がない』って言われたんです。これは、僕にとって本当に衝撃的な言葉でした。今までの自分は何も考えずに勉強していたと思わされたのです」
この経験から、彼は変わりました。「がむしゃらな努力は意味がない」とすれば、どうすれば「がむしゃらでない努力」ができるのか? 成績を伸ばすために、どのように努力をすれば効果的なのかを考え始めたのです。
効率の良い勉強法を考え編み出した相生さんの成績は、ぐんぐんと伸びていきました。そうして実力を伸ばした先には、目標のない世界が待っていた。これではやる気が無くなってしまいます。
そこで彼は、自らの限界を知るために志望校の変更を決めました。東京大学を受験するとなれば、自分も挑戦者になれる。そのようなハングリー精神から、彼は日本でも最難関の大学を受験することを決めたのでした。
◆編み出した3つの勉強法
では、彼はどのような勉強法を編み出したのでしょうか?
「僕の勉強法は三つのステップから成ります。一つ目は現状分析。二つ目は理想把握。そして、三つ目は方法論構築と言います。この三つのステップを経ることによって、自分と目標とのギャップを正確に見定めて、自分自身を成長させていくのです」
彼の勉強法は、自分自身の状態を正確に分析するところから始まります。自分の現状はどのような状態か? 得意な科目、苦手な科目は何か? なぜ得意、もしくは苦手なのか? これらを分析することによって、出発点を見定めます。
その次に、現状の自分を改善してどういう自分になりたいかを把握します。得意なことなら維持したいのか、もっと得意になりたいのか。苦手なことなら、具体的にどれくらいのレベルにまで苦手を克服したいのか。これが目標地点となります。
そうして得られた出発点と目標地点に対して、どのような経路があるかを考えます。具体的にどのような勉強法を、どれくらいの期間にわたって行えば、達成可能だろうか? これを正確に把握することによって、がむしゃらでない努力を可能にしたのです。
筆者自身、彼と話していて、相生さんの聡明さが非常に感じられました。彼は常に言葉の定義や意味合いについて気にしており、それぞれの言葉をあいまいにすることなく、厳密に運用しようとしていたのです。出発点と目標地点を見定めることで培われてきた厳密さの一端を垣間見ることができました。
そんな彼は、大学に入学したら絶対にやりたいと考えていたことがあったのだとか。
次回記事では、相生さんが大学在学中に行ってきた活動について伺います。