【ホスト業界で論争】歌舞伎町のカリスマホストたちが困惑「手料理」を差し入れする女性客はアリかナシか

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ホストクラブにハマる客の中には、本気でホストに恋をしてしまい、彼らにカネだけでなく身も心も、もっといえば人生のすべてを捧げてしまう、そんな女性たちがいる。ホストはそうした彼女たちの「恋愛感情」をある意味でビジネスにしていると言えるが、最近、予想外のトラブルも増えているという。
【写真】ホストに差入れされる手調理の数々。凝っていてとてもおいしそうだ 歌舞伎町の住人たちを取材した著書『ホス狂い~歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る~』を持つノンフィクションライターの宇都宮直子氏がレポートする。

* * *「最近、『差し入れだよ』って店に手料理を持ち込んで来る姫に困っていて……」そうため息をつくのは歌舞伎町の有名ホストクラブで何度もナンバー入りを果たしてきたカリスマホストのヒロム(仮名)だ。「もちろん、お金を払ってお店に来てくれているうえでの行為ですし、決して安くはない持ち込み料も払ってもらっているけれど、正直手料理って、怖いですよね(苦笑)。衛生的な問題もあるし、何が入っているかわからない。だけど、テーブルでタッパーを広げられたら食べない訳にはいかない。これ、けっこう深刻な問題なんです」 実はこの「手料理の差し入れ問題」、夜の街界隈では昔から問題視されてきたようだが、近年になって広く知れ渡るようになってきたという。ある水商売系インスタグラマーが明かす。「もともと、風俗で働く女の子の間では、お客さんから差し入れされた手料理に爪や髪の毛などが混入していたり、薬物が仕込まれていたりというトラブルも起きていて、『手作りの差し入れは危険だから手をつけてはいけない』が暗黙のルールとされてきました。それが最近、ホストクラブでも問題になり始めた。1つのきっかけは昨年YouTubeで人気のホスト動画チャンネルに、ジップロックに入れたお手製の料理を担当ホストに差し入れて、食べさせる40代の女性客が登場し、大炎上したことだと言われています。 この動画が拡散されて広く伝わり、ネットユーザーの中で『ホストクラブに手料理を差し入れるのはアリかナシか』との大論争が巻き起こる騒ぎとなりました」 SNSでも6万フォロワーを誇る有名Twitterアカウント「新宿の女」が今年2月に《手料理、手作りホスクラに一度でももっていくやつは多分本当に社会不適合者》とツイート。瞬く間に「いいね!」がついた。 そんな“逆風”にもめげずに、毎週のように担当(※指名しているホストのこと)に手料理を差し入れている女性がいる。 ハンドルネーム・あおりんごさん(43才)はタレントのSHELLEY(38才)に似た華やかな女性だ。彼女のインスタグラムを覗いてみると《ホス狂い/現役料理人/歌舞伎町で1番料理の上手い姫(※ホストクラブに通う女性客のこと)/担当に差し入れをリクエストされる姫》との文言とともに、ホストクラブの店内と思われる煌びやかな卓上の上にキレイに並べられた「差し入れ料理」の数々がアップされている。 ここまで差し入れが“炎上”するなか、なぜ彼女はせっせと手料理を作って歌舞伎町に通うのだろうか。私はツテを辿ってあおりんごさんに接触し、彼女に本心を聞いた。ホス狂いの脳裏に浮かぶ「調理実習」での成功体験「だって、料理上手な奥さんや彼女って、会社や友達グループの中でも自慢の存在じゃないですか」(以下・「」内はあおりんごさんの発言)こう言ってにっこり笑ったあおりんごさんが続ける。「私は40代半ばで、歌舞伎町の姫の中では“お姉さん”の年代です。だけど、年齢が上がれば上がるほど比例して家事や料理のスキルもあがりますし、若い子に対抗できるのってそういう経験値の高さでしょう? 家庭分野のスキルでいえばその辺の小娘には負けません。 あとは、女の子って小さい頃に、調理実習とかバレンタインとかで、好きな男子に手作りのものをあげて喜ばれたという成功体験がありますよね? それが原体験として意識に残ってるのも、ホス狂いが手料理を差し入れたがる理由のひとつだと思いますよ。 男性って結婚しても『おふくろの味』って言い出したりとか、何か手料理に夢があったりするんですよね。『胃袋を掴む』って言葉がありますが、自分の作ったものを『美味しい』『また食べたい』と言われることは、お店でお金をジャンジャン使って彼のナンバーをあげることとはまた違った快感があると思います」 あおりんごさんは週に1度は愛する担当のもとに駆けつけ、頻繁にシャンパンを開けるなど惜しみなくホストにお金を注いでいるが、彼女にとって「差し入れ」で得られる喜びは別腹なのだという。「料理を食べてもらうことに対して、他の姫に“優越感”があるのも本音です。だけど私の場合は、それ以上に担当のことが好きだから持っていくので、そこでカレが喜んでくれたり、ヘルプの男の子たちにも振る舞って『うまいだろ』って自慢されることが嬉しいんですよね。結局、調理実習で作った菓子を好きな人に渡したり、彼氏にお弁当を作ってあげたりというのも、女の子が男の子に愛されたいためにやる“自己PR”じゃないですか」 実際に彼女が作ったこれまでの差し入れの写真を見せてもらうと、油淋鶏にエビマヨ、トマトソースのかかったハンバーグ、牛筋煮込みなどと和洋中の多彩なメニューが並ぶ。「差し入れ」という単語から想像されるような素朴さは一切なく、彩りや盛り付けもまるでどこかのレストランからテイクアウトしてきたもののように完成度が高い。「実は私は本職が料理人。料理学校の講師もやっていたし、自分で料理教室も開催していました。差し入れを始めたきっかけも、私の本職を知った前の担当から、カロリー計算をしたダイエットメニューを作ってくれ、と頼まれたことでした。というのも、元担当の店は歌舞伎町でも有数の有名店で、それ故に従業員のルックスにも厳しく、従業員全員でダイエットのグループLINEを作ってその日食べたものを、写真とともにカロリーや栄養価まであわせて報告する義務があったからです。 結局、その担当とは切れてしまったのですが、彼への差し入れの数々を見ていた今の担当から、『オレにも作って欲しい』と頼まれて、現在通っているお店にも差し入れるようになったんですよね。今では卓でヘルプの子たちも一緒に食べていますよ(笑い)」 それでも、ホストクラブへの手料理の持ち込みが「アリ」か「ナシ」かと聞かれると、答えは分かれるだろう。あおりんごさんのようにホストと信頼関係ができていて初めて「アリ」と言えるようなハードルの高い問題ではある。
歌舞伎町の住人たちを取材した著書『ホス狂い~歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る~』を持つノンフィクションライターの宇都宮直子氏がレポートする。
* * *「最近、『差し入れだよ』って店に手料理を持ち込んで来る姫に困っていて……」そうため息をつくのは歌舞伎町の有名ホストクラブで何度もナンバー入りを果たしてきたカリスマホストのヒロム(仮名)だ。
「もちろん、お金を払ってお店に来てくれているうえでの行為ですし、決して安くはない持ち込み料も払ってもらっているけれど、正直手料理って、怖いですよね(苦笑)。衛生的な問題もあるし、何が入っているかわからない。だけど、テーブルでタッパーを広げられたら食べない訳にはいかない。これ、けっこう深刻な問題なんです」
実はこの「手料理の差し入れ問題」、夜の街界隈では昔から問題視されてきたようだが、近年になって広く知れ渡るようになってきたという。ある水商売系インスタグラマーが明かす。
「もともと、風俗で働く女の子の間では、お客さんから差し入れされた手料理に爪や髪の毛などが混入していたり、薬物が仕込まれていたりというトラブルも起きていて、『手作りの差し入れは危険だから手をつけてはいけない』が暗黙のルールとされてきました。それが最近、ホストクラブでも問題になり始めた。1つのきっかけは昨年YouTubeで人気のホスト動画チャンネルに、ジップロックに入れたお手製の料理を担当ホストに差し入れて、食べさせる40代の女性客が登場し、大炎上したことだと言われています。
この動画が拡散されて広く伝わり、ネットユーザーの中で『ホストクラブに手料理を差し入れるのはアリかナシか』との大論争が巻き起こる騒ぎとなりました」
SNSでも6万フォロワーを誇る有名Twitterアカウント「新宿の女」が今年2月に《手料理、手作りホスクラに一度でももっていくやつは多分本当に社会不適合者》とツイート。瞬く間に「いいね!」がついた。
そんな“逆風”にもめげずに、毎週のように担当(※指名しているホストのこと)に手料理を差し入れている女性がいる。
ハンドルネーム・あおりんごさん(43才)はタレントのSHELLEY(38才)に似た華やかな女性だ。彼女のインスタグラムを覗いてみると《ホス狂い/現役料理人/歌舞伎町で1番料理の上手い姫(※ホストクラブに通う女性客のこと)/担当に差し入れをリクエストされる姫》との文言とともに、ホストクラブの店内と思われる煌びやかな卓上の上にキレイに並べられた「差し入れ料理」の数々がアップされている。
ここまで差し入れが“炎上”するなか、なぜ彼女はせっせと手料理を作って歌舞伎町に通うのだろうか。私はツテを辿ってあおりんごさんに接触し、彼女に本心を聞いた。
「だって、料理上手な奥さんや彼女って、会社や友達グループの中でも自慢の存在じゃないですか」(以下・「」内はあおりんごさんの発言)
こう言ってにっこり笑ったあおりんごさんが続ける。
「私は40代半ばで、歌舞伎町の姫の中では“お姉さん”の年代です。だけど、年齢が上がれば上がるほど比例して家事や料理のスキルもあがりますし、若い子に対抗できるのってそういう経験値の高さでしょう? 家庭分野のスキルでいえばその辺の小娘には負けません。
あとは、女の子って小さい頃に、調理実習とかバレンタインとかで、好きな男子に手作りのものをあげて喜ばれたという成功体験がありますよね? それが原体験として意識に残ってるのも、ホス狂いが手料理を差し入れたがる理由のひとつだと思いますよ。
男性って結婚しても『おふくろの味』って言い出したりとか、何か手料理に夢があったりするんですよね。『胃袋を掴む』って言葉がありますが、自分の作ったものを『美味しい』『また食べたい』と言われることは、お店でお金をジャンジャン使って彼のナンバーをあげることとはまた違った快感があると思います」
あおりんごさんは週に1度は愛する担当のもとに駆けつけ、頻繁にシャンパンを開けるなど惜しみなくホストにお金を注いでいるが、彼女にとって「差し入れ」で得られる喜びは別腹なのだという。
「料理を食べてもらうことに対して、他の姫に“優越感”があるのも本音です。だけど私の場合は、それ以上に担当のことが好きだから持っていくので、そこでカレが喜んでくれたり、ヘルプの男の子たちにも振る舞って『うまいだろ』って自慢されることが嬉しいんですよね。結局、調理実習で作った菓子を好きな人に渡したり、彼氏にお弁当を作ってあげたりというのも、女の子が男の子に愛されたいためにやる“自己PR”じゃないですか」
実際に彼女が作ったこれまでの差し入れの写真を見せてもらうと、油淋鶏にエビマヨ、トマトソースのかかったハンバーグ、牛筋煮込みなどと和洋中の多彩なメニューが並ぶ。「差し入れ」という単語から想像されるような素朴さは一切なく、彩りや盛り付けもまるでどこかのレストランからテイクアウトしてきたもののように完成度が高い。
「実は私は本職が料理人。料理学校の講師もやっていたし、自分で料理教室も開催していました。差し入れを始めたきっかけも、私の本職を知った前の担当から、カロリー計算をしたダイエットメニューを作ってくれ、と頼まれたことでした。というのも、元担当の店は歌舞伎町でも有数の有名店で、それ故に従業員のルックスにも厳しく、従業員全員でダイエットのグループLINEを作ってその日食べたものを、写真とともにカロリーや栄養価まであわせて報告する義務があったからです。
結局、その担当とは切れてしまったのですが、彼への差し入れの数々を見ていた今の担当から、『オレにも作って欲しい』と頼まれて、現在通っているお店にも差し入れるようになったんですよね。今では卓でヘルプの子たちも一緒に食べていますよ(笑い)」
それでも、ホストクラブへの手料理の持ち込みが「アリ」か「ナシ」かと聞かれると、答えは分かれるだろう。あおりんごさんのようにホストと信頼関係ができていて初めて「アリ」と言えるようなハードルの高い問題ではある。

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