「彼女に散歩」提案した40代婚活男性の痛恨のミス

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デートの際は相手を思いやることが大事。それができないと婚活はなかなか……(写真:shimi/PIXTA)
婚活をスムーズに進めていくのに大切なのは、“スマートな行動をする”ことだ。段取りをキチンと組んでスマートに行動できる人は、男性も女性も人気が高いのだが、婚活市場で活動している人たちのなかには、どうもスマートな行動ができない人が少なくない。
仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて、苦労や成功体験をリアルな声と共にお届けする連載。今回は、婚活におけるスマートな行動について考えてみたいと思う。
まずは、お見合いが始まる前から、スマートな行動ができず、つまずいてしまった男性の話からしたい。
結婚相談所でのお見合いは、ホテルのラウンジや落ち着いたカフェで、行われることが多い。ただ、都市部でいうと、どこのラウンジもカフェも、土日はたいてい混雑している。
なるべく予約ができる場所を取れればよいのだが、予約を受け付けているところはとても少ない。予約ができるところもあっても、そこには“予約枠”があって、席数が限られている。3週間先、1カ月先なら取れる確率も高いのだが、お見合いまで日にちが近いと、その枠はすでに埋まっていることが多い。
お見合いは初めてという会員が、ホテルのラウンジでお見合いをし、終えたあとに私に決まっていう言葉がある。
「どこを見てもお見合い客ばかり。世の中にお見合いをしている人がこんなに多いのかと、驚きました」
それくらい土日のホテルのラウンジは、お見合い客で大盛況だ。
先日、たかこ(36歳、仮名)が、新宿のホテルのラウンジで、まさとし(40歳、仮名)とお見合いをすることになった。
約束時間は11時。5分前に待ち合わせのホテルのラウンジ前に行くと、すでにまさとしは来ていたのだが、入口付近には、すでに10組を越える見合い客が待っていた。ウェイティングリストに名前を書こうとすると、ウェーターから、「30分は待ちますよ」と言われた。
まさとしは婚活を始めたばかりだったようで、その言葉に動揺してしまった。そして、たかこに言った。
「場所を変えましょう」
2人でホテルを出たのだが、適当なカフェが見つからない。まさとしは、その状況に焦りが増した。隣を歩いているたかこのことはもう眼中にない様子で、「どっかに入れる店はないかなぁ」「弱ったなぁ」と、ずんずん歩いていく。
お見合いのためにオシャレをし、ハイヒールを履いていたたかこは、まさとしの歩くスピードに必死でついていったのだが、段差のあるところで転んでしまった。
「だ、大丈夫ですか」
転んだたかこを見て、まさとしはさらにあたふたしてしまったようだ。
「ストッキングは伝線してしまうし、膝からはうっすら血がにじんでいるし、ハイヒールを履いてきたことを後悔しました」
結局、転んだ場所の近くに飲み物を先に買って席につくチェーン店のカフェがあり、そこに空いている席があったので、たかこが気をきかせて言った。「私があそこのお席を確保するので、飲み物を買ってきていただけませんか?」。
お見合いを終えて、たかこがこんな連絡を入れてきた。
「想定外のことが起こると、パニックになってしまう人なんだと思いました。仕事をしていれば予期せぬ出来事って起こるし、生活をしていたら自然災害やコロナのようなパンデミックが今後も起こるかもしれない。そうしたときに、その状況に応じてうまく立ち回れる人でないと、パートナーとしては不安です。お見合いは、お断りでお願いします」
これはこの2人のケースだけでなく、お見合いではよく聞く話だ。婚活業界には、“カフェ難民”という言葉もあるくらいだ。
予約のできないティーラウンジがお見合い場所になったときには、男性は少し早めに行ってまずは席を確保し、お見合い時間になったら、待ち合わせ場所に女性を迎えに行く。そして「お席は取ってあります」と、女性を席に誘導するのが、スマートだ。
この段取りを間違えると、見合いをする前から残念な結果になる。
ゆうこ(34歳、仮名)はとおる(41歳、仮名)とお見合いした後、交際になった。ゆうこは、これまであまり恋愛経験がなく、婚活もしたこともない。とおるが初めて交際に進んだ男性だった。
結婚相談所では、お見合いをするときに相手に伝えるのは、名字、もしくは下の名前だけだ。フルネームがわかると、SNSで検索したときにその個人にたどり着くことがある。個人情報を保護するために設けられているルールだ。
フルネームが明かされるのは、交際が成立してから。そこで、初めて連絡先の交換となる。そして、男性から女性にファーストコール(もしくはメールによるファーストコンタクト)をするというのが通例だ。
ファーストコールを終えたゆうこから、連絡がきた。
「時間どおりにファーストコールがかかってきました。1時間弱、長話をしてしまいました。今週の土曜日に夕食に誘ってくださったので、出かけてきます。『適当なお店を見つけて予約しておきます』とおっしゃってくださいました。男性と2人だけでお食事するのは、これまでの人生の中で数えるほどしかないから、なんだか今から緊張してしまいます」
こう言いつつも、声はどこか弾んでいた。ところが、そこから3日後に、こんな連絡が来た。
「『予約しようと思ったお店が、喫煙席しか空いていなかったのだけれど、そこを予約しました』とLINEが来たので、『ごめんなさい。タバコのにおいは苦手で』とお返事したんです。私、分煙しているお店でも食事をするのを避けているんです。そうしたら、予約なしではとても入れないような行列必至のお店に、飛び込みで行くというご連絡がきました」
男性慣れしていないゆうこは、最初の提案を否定して、次も否定するのは申し訳ないと思い、承諾をした。
「お食事に行くのが、一気に重たい気持ちになってしまいました」
案の定、デートはお店の前で30分近く待って、ようやく入店できたようだ。そうなることが予想できていただけに、ゆうこのテンションは行列を見たときから下がり、食事中の会話も楽しめなかったという。
そして、この交際はファーストデートを終えて、交際終了となった。
お見合いから仮交際に入って、まだ2人の関係性がしっかり築けていないときには、ランチにしろ、ディナーにしろ、お店はあらかじめ予約しておいたほうがスマートだ。
婚活している男性のなかにたまにいるのが、「僕はデートで行くような店に詳しくないので、店選びはお任せします」と、女性側に丸投げをする人。これはスマートなやり方ではない。
では、ゆうこやとおるのケースのように、予約していないと行列必至で待つようなお店に、男性が「飛び込みで行きましょう」と連絡してきた場合、女性側はどうすればよかったのか。「私が適当なお店を探して、予約しておきますよ」と申し出れば、解決したのではないか。
ただしこのときは、女性も男性が行こうとしていたお店と同じ価格帯のお店を選ぶのが、スマートなやり方だ。
お見合いから仮交際に入ったばかりの頃は、まだお互いの人間関係ができあがっていない。わかり合うためにはより多くの会話をして、お互いを知っていくことが大事なのだが、もう一歩踏み込んだ気遣いも大切だ。
ふみか(38歳、仮名)はしょうへい(42歳、仮名)とお見合い後、仮交際に入り、ランチデートをすることになった。
しょうへいは、カジュアルフレンチのコース料理が食べられるレストランを予約しておいてくれたので、まずはそこで楽しくランチをした。ランチを終えると、「腹ごなしに、少し散歩をしませんか?」と誘われた。お店の近くには都内でも有名なとても広い公園があった。
「そうですね」と、ふみかは答えたものの、その日は初めてのランチデートだったので、オシャレな清楚系ワンピースに5センチのハイヒールを履いていた。公園を散歩するには不向きな服装だった。
公園を歩きだすと、そこは思いの外広く、30分歩くとつま先が痛くなってきた。 “困ったな”と思いつつも、ふみかは言い出せずに歩いていたのだが、だんだん痛みに耐えられなくなり、ついにしょうへいに言った。
「そろそろ駅のほうに引き返しませんか?」
すると、しょうへいは平然と言った。「せっかくですから、公園を1周して帰りましょう」。
ここで、「ハイヒールなので、足が痛くなってしまいました」と正直に言えればよかったのだが、初めてのデートではそれを言い出すのも恥ずかしく、ふみかは、痛みを堪えて公園1周に付き合った。
しょうへいは、「都心でもこんなに緑があるのは気持ちいいですね」と言いながら、いろいろな話題を振ってきたが、足の痛いふみかは、“とにかく早く1周して、この散歩から解放されたい”とばかり考えていて、ちっとも会話に乗れなかった。
「拷問のようなデートでした」
ハイヒールはとても歩きづらい靴だ。男性が女性の服装に気づいてあげられたら、もっとスマートな対応ができただろう。
スマートな振る舞いのベースになっているのは、相手へ思いやりと気遣いではないだろうか。
スマートな行動というのは、先天的に身についているものではない。後天的に学んで身につけた人が多い。どうすることがスマートなのかを考え、そういう行動を自分でもできるように取り入れる。
さらに、スマートな行動に大事なのは、落ち着きと自信ではないか。ことに男性の場合、女性の前でおどおどしたり、話すときに視線が合わせられなかったり、前出のまさとしのようにテンパって隣を歩く女性の存在が見えなくなってしまうのは、自信のなさをアピールしているようなものだ。
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自信もまた簡単に身につくものではないのだが、自信ありげに見せるためには、前もってしっかりと段取りを組み、堂々と行動するように心がけることが大切。それだけで、相手に伝わる雰囲気は違ってくるものだ。
婚活を成功させようとするときには、「コミ力」や「会話」に注力しがちだが、実は「スマートな行動」もとても大切だということを覚えておいてほしい。
(鎌田 れい : 仲人・ライター)

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