「いくら稼がせてくれるんですか?」面接現場で飛び出した就活生“驚きの一言”

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早期化が進む就職活動。他の企業に先んじて有望な若者を確保しようと、多くの人事部は躍起になって選考を繰り返す。就活生もいちはやく内定をもらおうと、年明けから数多のエントリーシートとにらめっこ。面接官からの心証を良くするため、対策に対策を重ねる。 一般的な就活生は概ねそのようであるが、稀に人事へ立ち向かっていく、恐れ知らずの就活生もあらわれるようだ。そんな彼らのやや特殊なエピソードを紹介する。
◆面接官からの“難解な質問”への回答
「『月にいくら稼ぎたいですか?』っていう質問をされたんです」と、谷野正さん(仮名・当時24歳)は言う。一昨年の就職活動で、彼はとある会社の第1次面接へと足を運んだが、その時の出来事をこう振り返る。
「集団面接の何個目かの質問で『もしあなたが弊社に入社したら、月にいくら稼ぎたいという目標はありますか?』って聞かれたんです。目標が低すぎても、あるいは非現実的な額でも人事の心証は良くない。難解な質問のように思えました」
他の就活生は「30万稼ぎたいです」「いや私は30万以上」「40万が目標としてあります」と、現実的な額を順に答えていったらしい。しかし、谷野さんは悩む素振りすら見せず、あっけらかんとこう言い放ったという―――。「……えっと、逆に、いくらまで稼がせてくれるんですか?」。
◆その場の空気が凍ったが、まさかの結末に
一瞬だけ場の空気が凍ったものの、その質問に面接官が答えることはなく、うやむやに。その後はつつがなく進行したという。
「そしたら、その日のうちに次の選考に案内されて、2度目の面接中に内定をもらったんです。さすがにびっくりしました(笑)。その場で内定を受諾して、就活は終了しました」
内定がもらえたことにも驚きだが、そもそもなぜ「いくらまで稼がせてくれる?」という挑発的な回答をしたのか。「いやだって、稼げる分だけ稼ぎたいですよ(笑)。30万なんて現実的な額、僕の柄じゃないと思いました」と谷野さんは冗談交じりに振り返る。
なお、彼はその会社をすぐに辞め、今はディーラーの店長を務めている。いち企業の平社員に収まる器ではなかったようだ。
◆「人事だって女性の前ではデレデレ」
続いて話を聞いたのは会社員の前田誠也さん(仮名・当時22歳)。彼は、「ずっと営業職志望だったんです」と語る。そんな前田さんが経験したのは、営業職メインの外資系生命保険会社での圧迫面接である。
生命保険の営業には、加入の勧めを断られたり、飛び込み営業も多いため、強靭なメンタルが必要とされるとか。そのため、就活生に圧迫面接まがいのプレッシャーを与え続け、タフさをはかる採用企業も少なくない。前田さんが経験した面接でも、1次面接から、重役らしき面接官たちのしかめっ面が並んでいたらしい。
その圧力をはねのけるのはなかなか困難であるように思えるが、「僕は、圧迫面接への対策として、キャバクラでデレデレしている面接官の姿を想像しました(笑)。そしたら、厳つい顔をした人事が滑稽に思えてきちゃって」と前田さんは言う。
そのスタンスで、彼はできるだけに人事を見下すような態度をとり続けたらしい。
◆最低限の礼儀は保つよう心掛けた
「最初はちょっと怯みましたが、挑発的な目で見返してやりました。それで、意味が分からないような質問が来たら、『は?』って、『分かりませんが?』って言っちゃいました。おかげで面接中はずっと空気がピリついてましたよ(笑)。ただ、ずっとそのスタンスをとり続けるだけだとただの生意気な若者になってしまうから、マジメな質問にはちゃんと答えて、最低限の礼儀は保つよう心掛けました」と、前田さんは振り返る。
「内心、実はビクビクでしたけど、面接終了間際にその場で『君、合格』って内定出ちゃって(笑)。僕もまさか本当に内定をもらえるとは思ってなかったから、『え?本当ですか?』って聞き返しちゃいました(笑)」
おそらく彼の反骨精神が人事の心に刺さり、営業職に向いていると判断されたのであろう。適度に挑発的な姿勢、それは圧迫面接に屈しないためのひとつの手段として、理にかなっているかもしれない。しかしながら、前田さんはその内定を蹴り、今は別の会社の営業職で好調な業績を挙げているという。
就職活動において、模範回答を用意して「好青年」の仮面をかぶるのは肝要である。しかしながら、ここまで見てきた2人のように、少し奇を衒ったような態度、自然体のまま挑んでみると、案外上手く事が運ぶかもしれない。
<取材・文/日刊SPA!取材班(伊達ケント)>

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