1日午後0時20分頃、埼玉県戸田市美女木の市立美笹中学校に刃物を持った男子高校生(17)が侵入し、校舎3階で男性教員(60)を切りつけた。
高校生はその場で別の教員らに取り押さえられ、110番で駆けつけた警察官に殺人未遂容疑で現行犯逮捕された。男性教員は上半身の複数箇所にけがをして病院に搬送されたが、命に別条はない。美笹中の生徒にけがはなかった。
県警の発表では、高校生は戸田市の北にあるさいたま市浦和区に住んでいる。美笹中の卒業生ではなく、男性教員との面識もなかった。調べに対し、「誰でもいいから人を殺したかった」などと供述しているという。
美笹中の生徒らによると、この日は複数の教室で、在校生が試験を受けていた。男性教員は3階の1年生の教室で、試験の監督を務めていた。
捜査関係者などによると、高校生が刃物を手にしたまま教室に入ってきたため、男性教員は教室にいた生徒を外に避難させた。その後、高校生を取り押さえようとして、もみ合いになったという。別の教員3人が騒ぎに気づいて駆けつけ、廊下で取り押さえた。ほかの教室では当時、教員から教室内にとどまるよう指示された生徒もいたという。
保護者によると、美笹中は午後3時頃、生徒を集団で下校させ、保護者には可能なら迎えに来るよう求めた。夜には、緊急の保護者会を開き、事件について説明した。
県警は現場からナイフを押収した。侵入経路は判明していないが、校門は施錠されていなかったという。
3階には1、2年生の教室がある。2年生の女子生徒(14)は、「4時間目の試験が終わるときに、『救急車を呼んで!』という叫び声が聞こえ、(負傷した教員のために)止血用の包帯を渡した。1年生の教室前の廊下には数滴の血痕があった。怖かった」と話した。
美笹中は、JR埼京線の北戸田駅から約2キロ南西の住宅街にある。
◇ 学校に不審者が侵入したケースでは、2001年に児童8人が死亡、教師を含む15人が負傷した大阪教育大付属池田小の事件がある。文部科学省は02年、「不審者侵入時の危機管理マニュアル」を作り、全国に配布。18年改定のマニュアルでは、不審者に複数の職員で対応することや、凶器所持の確認などを盛り込んでいる。
全ての学校には09年から、学校保健安全法でマニュアルの作成が義務づけられた。ただ、その徹底には自治体ごとの温度差もあるとみられる。戸田市教育委員会は、学校側の取り組みを把握していないという。
隣のさいたま市教委は、全ての市立学校にマニュアルの作成指針を配り、できたマニュアルを提出させているとしている。