男女を問わず盗撮被害が増 怪しい場所での隠しカメラの見つけ方

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盗撮事件が相次いでいる。警察庁によると、全国の盗撮事件の摘発は2012年の約2400件から2021年には約5000件と10年で2倍に急増している。盗撮には小型カメラやスマホなどが使われており、被害に気づきづらいという実態がある。盗撮に気づき、対策することはできるのか。ネット・スマホ関連の事件やトラブル実態に詳しい成蹊大学客員教授でITジャーナリストの高橋暁子さんに聞いた。
【写真】カメラ機能付き眼鏡 * * *自宅トイレに仕込んだ小型カメラで盗撮 SNS内には、気軽に「#盗撮」などのハッシュタグを使い、家族や動物の普段の日常の姿を切り取った一枚が投稿されている。カメラを意識しない自然な姿を撮ったという意味のようだ。しかし、本当の盗撮はけしてこんな呑気で平和なものではない。 ある時、ネット上に以下のような言葉があふれたのには理由がある。「友人や知人の家に呼ばれて食事会はよくあること。それで盗撮されるとは思わない。怖すぎる」「なんでこんなに盗撮が増えたの? 自分も知らない間に撮られていたらと思うとぞっとする」 2022年4月、複数の知人女性を自宅に招いた男子大学生が、トイレなどに隠した小型カメラで盗撮をして、京都府迷惑行為防止条例違反容疑で逮捕された。男はほかにも自宅に呼ぶなどした複数人の女性を盗撮し、動画をネットに投稿していた。駅の階段などでスカート内を撮影される被害はよく耳にするが、他人の自宅に呼ばれて盗撮されるとはまず考えもしないだろう。 2023年1月には、静岡県で赤外線装置が付いたカメラで屋内プールにいた10代女性を盗撮、会社員の男が県迷惑防止条例違反容疑で現行犯逮捕された。赤外線は可視光より物質を透過しやすく、薄手の衣服や水着などなら透過してしまうが、この機能を悪用したものだ。こちらも、「まさかそんな機能を悪用するとは」とネット上で話題になっていた。 盗撮行為は、駅や電車など公共の場所では迷惑防止条例違反となり、お風呂やトイレなどの公共以外の場所では軽犯罪法違反となる。取締りの法令は違えど、どちらであっても被害者に対して恐怖を与え、自尊心を傷つける行為であり、けして許されるものではない。盗撮被害にあうのは女性が多いが、中には男性が被害にあうこともあり、誰にとっても決して他人事ではない。 冒頭で述べたように、盗撮はなかなか気づきづらいが、手口を知ることである程度警戒できるようになる。このような手口を知っておくことは被害を防ぐ上で大切だ。盗撮で1億5000万円稼いだ例も 2月には、ネット上で「Mr.研修生」を名乗っていた男が逮捕されている。男は100人以上の女性を盗撮し、動画販売サイトで盗撮動画を販売、ブログを運営するなどしていた。男は1本1000円程度で盗撮動画を販売、動画は10万回以上ダウンロードされており、約1億5000万円を売り上げていた。 盗撮動画は一定の人気のジャンルであり、盗撮サイト市場は数百億円規模と言われている。月額制の盗撮サイトや、盗撮写真・動画販売サイトなどもある。盗撮事件が続くことには、ストレス発散や性的指向だけでなく、お金になることも大きいのだ。 盗撮が容易になっていることも、被害の拡大につながっている。ペン型やUSB型、靴の先に仕込むものなど、小型で高性能の盗撮カメラがわずか数千円程度と安価に販売されており、入手しやすくなっているのが実態だ。 逮捕された男はカバン型カメラを利用。鞄の下部にレンズが取り付け、鞄の中に入れたスマートフォンと連動させて動画を記録していた。鞄の持ち手に仕込んだボタンで操作しており、商業施設で棚から商品を取るために背伸びをしたりかがんだりした女性が狙われていた。スマホのインカメラやアプリで発見も 2019年に民泊サービスを提供するAirbnbユーザー対象の調査によると、「借りた部屋に隠しカメラがあった」という回答は11%だった。盗難や破損等を恐れてつけたと考えられるが、見つけられていない可能性も考えると驚くような数字ではないか。 盗撮被害は、このように身近なものとなってしまっている。では、盗撮の不安を感じたらどうすればいいのだろうか。専門家に捜索を依頼するとか、専門の電磁波測定器、光検出器などの機器を使う方法もあるが、コストもかかりハードルが高い。 そのような場合は、スマホで確認することができる可能性がある。隠しカメラの多くは、赤外線を使用して暗いところでも撮影できるようになっている。スマホのカメラに、この赤外線が映るため、確認することができるのだ。 ポイントは、スマホのメインカメラ(背面)ではなく、自撮り用のインカメラ(前面)を使って確認すること。たとえばテレビなどのリモコンは赤外線を発しているが、その電源を入れてインカメラで撮影すると、裸眼では見えない赤外線が光って写る。インカメラを通すことで、赤外線を確認できるということだ。盗撮カメラがある場合、部屋を暗くしてスマホで隠しカメラがありそうな場所を確認することで、見つけられる可能性がある。 専用のアプリを使うのもいいだろう。「Glint Finder」はレンズが光ることで隠しカメラが発見できるアプリだ。隠しカメラはWi-Fiに接続し、クラウド上にデータを送信する機能を持っているので、「Fing」などのネットワークアナライザーアプリを使うこともできる。ネットワーク上にあるすべてのデバイスが把握できるため、見覚えがないものがあれば、隠しカメラの可能性があるのだ。 ただし、スマホで撮影時に音が鳴らない無音アプリを使って撮影しているケースなどもあり、紹介した方法ではわからないことも多い。 警察庁によると、盗撮被害の犯行場所別検挙件数は駅や電車内、ショッピングモールなどの商業施設が多い傾向にある。その他、公衆トイレなどの公共の場所では用心してほしい。必ず不審なものがないか確認したり、後ろを振り返るなどして警戒していることを周囲に示すことで、被害が減らせるのではないだろうか。
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SNS内には、気軽に「#盗撮」などのハッシュタグを使い、家族や動物の普段の日常の姿を切り取った一枚が投稿されている。カメラを意識しない自然な姿を撮ったという意味のようだ。しかし、本当の盗撮はけしてこんな呑気で平和なものではない。
ある時、ネット上に以下のような言葉があふれたのには理由がある。
「友人や知人の家に呼ばれて食事会はよくあること。それで盗撮されるとは思わない。怖すぎる」「なんでこんなに盗撮が増えたの? 自分も知らない間に撮られていたらと思うとぞっとする」
2022年4月、複数の知人女性を自宅に招いた男子大学生が、トイレなどに隠した小型カメラで盗撮をして、京都府迷惑行為防止条例違反容疑で逮捕された。男はほかにも自宅に呼ぶなどした複数人の女性を盗撮し、動画をネットに投稿していた。駅の階段などでスカート内を撮影される被害はよく耳にするが、他人の自宅に呼ばれて盗撮されるとはまず考えもしないだろう。
2023年1月には、静岡県で赤外線装置が付いたカメラで屋内プールにいた10代女性を盗撮、会社員の男が県迷惑防止条例違反容疑で現行犯逮捕された。赤外線は可視光より物質を透過しやすく、薄手の衣服や水着などなら透過してしまうが、この機能を悪用したものだ。こちらも、「まさかそんな機能を悪用するとは」とネット上で話題になっていた。
盗撮行為は、駅や電車など公共の場所では迷惑防止条例違反となり、お風呂やトイレなどの公共以外の場所では軽犯罪法違反となる。取締りの法令は違えど、どちらであっても被害者に対して恐怖を与え、自尊心を傷つける行為であり、けして許されるものではない。盗撮被害にあうのは女性が多いが、中には男性が被害にあうこともあり、誰にとっても決して他人事ではない。
冒頭で述べたように、盗撮はなかなか気づきづらいが、手口を知ることである程度警戒できるようになる。このような手口を知っておくことは被害を防ぐ上で大切だ。
2月には、ネット上で「Mr.研修生」を名乗っていた男が逮捕されている。男は100人以上の女性を盗撮し、動画販売サイトで盗撮動画を販売、ブログを運営するなどしていた。男は1本1000円程度で盗撮動画を販売、動画は10万回以上ダウンロードされており、約1億5000万円を売り上げていた。
盗撮動画は一定の人気のジャンルであり、盗撮サイト市場は数百億円規模と言われている。月額制の盗撮サイトや、盗撮写真・動画販売サイトなどもある。盗撮事件が続くことには、ストレス発散や性的指向だけでなく、お金になることも大きいのだ。
盗撮が容易になっていることも、被害の拡大につながっている。ペン型やUSB型、靴の先に仕込むものなど、小型で高性能の盗撮カメラがわずか数千円程度と安価に販売されており、入手しやすくなっているのが実態だ。
逮捕された男はカバン型カメラを利用。鞄の下部にレンズが取り付け、鞄の中に入れたスマートフォンと連動させて動画を記録していた。鞄の持ち手に仕込んだボタンで操作しており、商業施設で棚から商品を取るために背伸びをしたりかがんだりした女性が狙われていた。
2019年に民泊サービスを提供するAirbnbユーザー対象の調査によると、「借りた部屋に隠しカメラがあった」という回答は11%だった。盗難や破損等を恐れてつけたと考えられるが、見つけられていない可能性も考えると驚くような数字ではないか。
盗撮被害は、このように身近なものとなってしまっている。では、盗撮の不安を感じたらどうすればいいのだろうか。専門家に捜索を依頼するとか、専門の電磁波測定器、光検出器などの機器を使う方法もあるが、コストもかかりハードルが高い。
そのような場合は、スマホで確認することができる可能性がある。隠しカメラの多くは、赤外線を使用して暗いところでも撮影できるようになっている。スマホのカメラに、この赤外線が映るため、確認することができるのだ。
ポイントは、スマホのメインカメラ(背面)ではなく、自撮り用のインカメラ(前面)を使って確認すること。たとえばテレビなどのリモコンは赤外線を発しているが、その電源を入れてインカメラで撮影すると、裸眼では見えない赤外線が光って写る。インカメラを通すことで、赤外線を確認できるということだ。盗撮カメラがある場合、部屋を暗くしてスマホで隠しカメラがありそうな場所を確認することで、見つけられる可能性がある。
専用のアプリを使うのもいいだろう。「Glint Finder」はレンズが光ることで隠しカメラが発見できるアプリだ。隠しカメラはWi-Fiに接続し、クラウド上にデータを送信する機能を持っているので、「Fing」などのネットワークアナライザーアプリを使うこともできる。ネットワーク上にあるすべてのデバイスが把握できるため、見覚えがないものがあれば、隠しカメラの可能性があるのだ。
ただし、スマホで撮影時に音が鳴らない無音アプリを使って撮影しているケースなどもあり、紹介した方法ではわからないことも多い。
警察庁によると、盗撮被害の犯行場所別検挙件数は駅や電車内、ショッピングモールなどの商業施設が多い傾向にある。その他、公衆トイレなどの公共の場所では用心してほしい。必ず不審なものがないか確認したり、後ろを振り返るなどして警戒していることを周囲に示すことで、被害が減らせるのではないだろうか。

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