「一晩で3千万が消えた…」 オンラインカジノの相談深刻化 多い20~30代

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インターネットを通じて金銭を賭けるオンラインカジノに熱中する人が増え、ギャンブル依存症の支援団体への相談が急増している。
スマートフォンやパソコンがあれば誰でも24時間利用可能だが、若年層を中心に多額の金銭を失うなどし、生活が破綻するケースも相次いでいるという。支援団体は「深刻な事態。対策を進めなければ、依存症者が今後も増える」と指摘する。
「一瞬で勝負が決まるスピード感と、数百万をかけて勝ったときの高揚感がたまらなかった」。1カ月前までオンラインカジノにのめりこんでいた関東地方在住のアルバイトの男性(25)はこう話す。
きっかけは2年ほど前。スマートフォンでオンラインカジノの広告が目につき、興味本位でアクセス。バカラ賭博を試した。
最初に賭けたのは数万円。負けて全額を失うと、取り返したくなった。勝負は1回30秒ほど、一瞬で決まる。勝てば数百万円になることもあり、スピード感とスリルにはまった。
数枚所有していたクレジットカードは全て限度額まで使い、消費者金融にも手を出した。サイトは日本円ではなくドル表記で、勝敗によって大きく変動する金額も、ただの数字の羅列にしか見えなくなった。
当時、男性はエンターテインメント関係の仕事で全国を転々としていた。移動時間や空き時間はカジノに費やし、儲けは一時600万円まで増えた。交際相手と出かけた先でも、夜は布団の中でカジノに熱中。だが、その一晩で600万円を失った。
カジノを始めて2カ月足らず。借金が300万円に膨らんだことで「目が覚めた」。使っていたサイトのアカウントをロックし、アルバイトでこつこつと借金を返済し始めた。
約10カ月で借金が半分ほどに減ったころ、ふと「カジノで数万円くらい増やせないか」との思いが頭をよぎった。やってみると、久しぶりに100万円勝てた。
カジノにのめりこむ日々に戻り、3千万円まで増やした。銭湯に行っても、風呂に入らず脱衣所で1時間以上カジノに没頭した。だが、その3千万円も一晩で失ってしまうと、体の震えが止まらなくなった。
「自分は依存症だ。このままではやばい」。インターネットで相談ダイヤルを調べ、自ら電話した。今は自助グループに通いながら、約300万円の借金を返す日々だ。
だが、やりたい気持ちは今も消えてはいない。自助グループの参加者から会社の金を横領したことや、子供の養育費を使ったといった話を聞くと「自分も一歩間違えればそうだった」と思い、かろうじて踏みとどまっている状態だという。「自己責任と言われるとそうかもしれない。でも、誰もがはまってしまう可能性があることは知っておいてほしい」と男性は話す。
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」(東京)の田中紀子代表によると、令和元年に寄せられた相談のうち、オンラインカジノは188人中8人(4・3%)だったが、令和4年は10月時点で349人中45人(12・9%)まで増えた。集計は対面相談の件数のため、電話相談も含めるとさらに増えるという。
相談者は20~30代の若年層が多いといい、「1千万円を使い込むのがざら」(田中さん)。生活が破綻して犯罪に手を染めたり、失業、引きこもりになるなど、深刻な事態につながっているという。
オンラインカジノは、日本では賭博罪に当たる違法行為だ。田中さんは「現金ではなくクレジットカードなどで支払うので、大金をつぎ込みやすい。24時間アクセスでき、種類も多いので一気にのめりこむ。著名人が広告塔を務めていることもあり、安心して使ってしまう」と指摘。「広告の規制など、国は本腰を入れて対策すべきだ」と話した。
巧みな誘導、悪質サイトも 難しい取り締まり
国際カジノ研究所の木曽崇所長によると、国内では平成25年前後にオンラインカジノの「第一次ブーム」があり、新型コロナウイルスの感染拡大で「第二次ブーム」が始まったという。
国内でギャンブルの場所を開設する行為は刑法の賭博場開帳図利(とり)罪に該当するが、サイトは海外の事業者が合法的にライセンスを取得して運営しているケースが多く、日本から取り締まるのは難しい。誘い込み方も巧妙で、違法ではない無料版のオンラインカジノのサイトから有料版に誘導。個人がブログなどで宣伝し、登録者数に応じて成功報酬を受け取る「アフィリエイター」が紹介しているケースも多くあるという。
ネット上では「グレーゾーン」などと紹介されているオンラインカジノだが、木曽氏は「日本での利用は違法。消費者救済の対象にならないため、悪質なサイトでトラブルがあっても『泣き寝入り』になる」と警鐘を鳴らす。
国や行政も「オンラインカジノを利用した賭博は犯罪」と注意喚起を始めている。木曽氏は「広告規制などの対策を早急に進めていく必要がある」と指摘している。

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