ビキニを着用した幼女やソフトクリームを食べている女児を激写するなど、過激なサービスが行われているキッズアイドル撮影会。性的に消費され続ける少女たちの現状に迫った。◆度重なる突撃や批判に、警戒感が増す撮影会
実際にキッズアイドル撮影会はどんな現状になっているのか、確認するべく記者は「#撮影会」でTwitterを検索。参加を申し込むと、すぐに免許証の提出を求められた。
撮影会当日、集合場所に指定された郊外のショッピングモールに現れたのは、小学1年生の素朴な女の子と40代と思しき父親。料金の6000円を受け取ると、父親はこう話した。
「娘は歌やダンスが好きなんですが、人見知りで……。人前に立つことに慣れるために、芸能活動をさせているんです」
その口調からはお金目的でやっているようには思えず、どちらかというと習い事の一環と捉えている節がある。すると背後から主催者側の女性が現れる。
「ご新規さんなので、最初の10分は私も同伴させてもらいますね」
免許証の提出もそうだが、YouTuberの突撃や世間の批判に晒されているからか、イベント側はかなりの厳戒態勢だ。
◆中学1年生の少女が一日9人の成人男性を相手に
さらに刺激的なイベントが開かれているとの噂を聞きつけ、東京・渋谷の宮下公園で行われた一対一の撮影会にも潜入してみた。
モデルは中学1年生の女子で太ももあたりまでのショートパンツ姿。あどけない顔には、バッチリと化粧が施されている。話を聞くと「撮影はほとんどしないで、40分二人きりでしゃべっているだけのこともある」という。レンタル彼女のような役割で利用する人もいるのかもしれない。
取材を終えると、記者の携帯電話が鳴る。潜入取材を察知した主催者の抗議だった。
「ウチのモデルにいろいろ嗅ぎ回ってたらしいな。お前週刊誌だろ? 騙し討ちは困るんだよ! ロリコンが犯罪であるかのような記事を書かれたら、誤解を招く。〈中略〉ウチはそもそもカネ儲けでやっていない。フリーでやってるヤツのほうがヤバいだろ!」
しかしこの撮影会は一日に6人のアイドルがそれぞれ9つの枠で撮影に応じている。年頃の女の子が一日に9人の成人男性の相手をするストレスが心配される。
◆キッズアイドル撮影会の暴走になぜママは加担するのか
親たちはなぜここまでの惨状を止められないのか。現役キッズモデルの母である山本真美さん(仮名・34歳)はこう語る。
「今の業界は『SNSでどれだけの影響力を持っているのか』が超重要。有名イベントのオーディションやコンテストの書類審査でも各SNSのフォロワー数を記入する欄があり、そこが合否の分かれ目になる。だから親が率先して露出が多い衣装を着させたり、際どいポージングをさせたりした画像をTwitterで発信する。フォロワー数を増やすことが娘の幸せに繋がると信じている人が多い」
これだけでも少女たちに多大な悪影響をもたらしそうだが、母親たちの暴走は子供たちの性格の上書きにまで及ぶ。
「キッズモデルのSNSのアカウントは母親が管理している場合も多く、男性ファンへのメッセージでハートの絵文字を連発したり、あたかもモデル自身が甘えているような口調でメッセージを送ったり、まるでキャバ嬢のような娘像をつくっているんです」
◆時代錯誤なプロ意識を持つママたち
ここまで過激な方向へ暴走してしまう理由には、“ママ”ならではの事情もある。
「『体を張って当たり前』みたいな時代錯誤なプロ意識を持つ人が中心になってママ友グループをつくりがち。こうなると他の人たちも『自分も娘を頑張らせないと!』って正常な判断ができなくなる」
◆現在の規制では守れない子供たちの存在
18歳未満の「児童」を、性的な搾取や虐待から守るために’99年に施行された児童ポルノ禁止法。その後幾度となく改正の議論がされてきたが「いたちごっこにすらなれていない、完全に後追いなだけ」と怒りを露わにするのは児童性犯罪に精通する弁護士の奥村徹氏。
「“児童ポルノ天国”と国際社会から厳しく批判され、その圧力から始まった日本の児童ポルノ規制ですが、それから20年以上、議員立法なので、責任者不在が常態化。犠牲者が出てからでは遅いのですが、社会問題になり警察が改正させるべきと号令をかけてから、議員がイチから勉強を始めるような状態で、何も積み上がっていません。いまだ欠陥ばかりです」
◆児童ポルノの隙を突いた巧妙な手口
現行法では、主に児童ポルノ(性的好奇心を満たす目的の作品)を「製造」、「販売(提供)」、「所持」するといった行為を禁じている。キッズモデル撮影会で撮られている写真も該当するのだろうか。
まずはアイドル撮影会に多い、スカートをはいた児童を階段に座らせ、下の段から撮影した場合。
「児童ポルノの要件は『衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態』なので、スカートをはいている限り、いわゆる『逆さ撮り』は児童ポルノにあたりません」
次いで、オフ会で横行しているという着衣の女の子を後ろから抱っこで持ち上げている一枚。
「抱っこそのものは大丈夫ですが、児童の性器(乳首や陰部)を触る行為は服の上からでも一発アウトです。性器に当たっているかのように見えるだけでも疑わしい」
キッズアイドル撮影会の手法は、現在の児童ポルノの概念の隙を突いた非常に巧妙なものだとわかる。
◆日本の児童ポルノ規制史
’99年 日本で初めての児童ポルノ禁止法が成立
「日本人によるアジア(タイやフィリピン)での児童買春の横行」、「ヨーロッパで流通している児童ポルノの8割が日本製」と国際社会から厳しい指摘を受ける。また援助交際も社会問題化し始め、制定された
’04年 ハメ撮りそのものを規制する新設条項が追加
インターネットの普及が進み、児童買春の動画が流される。ハメ撮りなどを規制する「姿態をとらせて製造」という文言が追加。さらにこれまで罰せられなかった「閲覧(アクセスすること)」も規制
’14年 作品を持っているだけで処罰の対象に改正
デジタルを含む児童ポルノ作品を「単純所持」することも規制の対象に。また録画機器の小型化による盗撮も横行したため、「製造」だけでなく、当事者が気づいていない「ひそかに製造」した場合の規制も導入
【弁護士・奥村 徹 氏】奥村&田中法律事務所。大阪弁護士会所属。日本における児童買春・児童ポルノの事件担当として最も数多く経験を積んでいる
取材・文/週刊SPA!編集部 山本和幸