平和教材引用「はだしのゲン」差し替えへ…浪曲披露・他人の庭でコイ釣り、市教委「誤解生む」

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広島市教育委員会は、市立小中高校の平和教育に使っている教材を来年度に改訂し、漫画「はだしのゲン」を別の絵本などに差し替えることを決めた。
現代とは時代背景が異なり、一部を掲載するだけでは漫画の描写が誤解を生む恐れがあると判断したという。
「はだしのゲン」は、原爆で家族を失った少年ゲンが、たくましく生きる姿を描いた作品。英語やロシア語、アラビア語など24の言語に翻訳され、海外にも広まっている。
市教委は、平和教育用教材として2013年度から学年ごとに作っている「ひろしま平和ノート」のうち、高1と小3の教材で漫画の一部を引用。小3の教材では、ゲンたちが浪曲を披露して日銭を稼いだり、栄養不足で体調を崩した母親のために他人の家の庭でコイを釣ったりする場面が掲載されている。
市教委が校長や大学教授らを交えて教材改訂の必要性を議論する中で、「浪曲は児童になじみがなく、コイを盗んでもいいという誤解を与える」「時代背景の説明が必要で、学習目的を達成するまで時間と手間がかかる」といった指摘が出たという。
新しい小3の教材では、16歳の時に原爆で両親と妹3人を亡くした被爆者を描いた絵本などを採用する。高1では、12年に亡くなった「はだしのゲン」の作者の中沢啓治さんの体験談などを残し、漫画の場面を削除するという。
市教委の担当者は「漫画は市内のほぼ全ての学校の図書室に置いてあり、作品の意義を否定するものではない」としている。

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