地図記号を初めて使用した地図は1880年に陸軍参謀本部がフランスに倣い、作成した「迅速測図」だとされている。そして現在、国土地理院が定めた日本で使用されている記号は134種類にのぼる。
採用された中で最も古い地図記号は温泉マークだ。その起源は、江戸前期の1661年に遡る。土地争いに関する絵図で磯部温泉(群馬県安中市)を示す記号として、湯壺から湯気が立ちのぼる様子が描かれていたのだ。
JR信越本線磯部駅にも「日本最古の温泉記号発祥の地」と題する石碑がある。ただし、そこに描かれている図は、現在のデザインとは違って、揺らいだ湯気は1本しかない。
温泉記号は最もポピュラーな地図記号と言っても過言ではないが、その表記には厳密なルールがある。地図内で温泉マークを使う場合、表示する位置は原則として「主要な泉源の位置」と定められている。至るところで湯煙が上がる箱根や草津のような温泉街では、全ての泉源に記号を載せていたら地図が温泉マークだらけになってしまう。それを防ぐためだという。
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実はこの温泉マークを使用しているのは日本だけではない。日本統治時代の名残で、韓国や台湾は現在も同じデザインの記号を地図に掲載している。温泉マークは原型を残したまま現在まで使われているが、時代とともに形を変えた地図記号もある。それが学校を表す地図記号だ。1185年に作成された「仮製地形図」では、学校は巻物型のマークで表されていた。これは当時の学校で、四書五経などを巻物で学習させていたからだ。そしてその6年後、西洋式の教育制度の拡充に伴い、「明治24年図式」で小中学校は「文」、文の字を丸で囲んだものは高校といったように現在の形に変更された。文の字は「学問」の意味もあるので、学校を表す記号として採用されたのだ。現在、道案内はスマホのアプリを頼りがちだが、たまには紙の地図を開いてみると、新たな発見があるかもしれない。「週刊現代」2023年2月11・18日号より
実はこの温泉マークを使用しているのは日本だけではない。日本統治時代の名残で、韓国や台湾は現在も同じデザインの記号を地図に掲載している。
温泉マークは原型を残したまま現在まで使われているが、時代とともに形を変えた地図記号もある。それが学校を表す地図記号だ。1185年に作成された「仮製地形図」では、学校は巻物型のマークで表されていた。これは当時の学校で、四書五経などを巻物で学習させていたからだ。
そしてその6年後、西洋式の教育制度の拡充に伴い、「明治24年図式」で小中学校は「文」、文の字を丸で囲んだものは高校といったように現在の形に変更された。文の字は「学問」の意味もあるので、学校を表す記号として採用されたのだ。
現在、道案内はスマホのアプリを頼りがちだが、たまには紙の地図を開いてみると、新たな発見があるかもしれない。
「週刊現代」2023年2月11・18日号より