フィリピンの入管施設に収容され、過去の特殊詐欺事件で逮捕状が出ている4人の日本人について、現地の日本大使館は強制送還を正式に要請しました。
■フィリピン法相「押収した携帯が重要だと理解」
フィリピン レムリヤ法相:「我々は、この問題に関して、日本の警察に全面的に協力します」
30日、会見でこう語ったのは、フィリピンのレムリヤ法相です。
警視庁が特殊詐欺事件で逮捕状を出している渡邉優樹容疑者(38)と今村磨人容疑者(38)ら日本人4人について、日本大使館がレムリヤ法相に対し、強制送還するよう正式に要請しました。
レムリヤ法相:「(Q.引き渡しは可能ですか?)もちろん、十分に可能です」
来月8日にも、マルコス大統領が日本を訪問する予定であるため、フィリピン政府も、その前に問題を解決したい意向を示しています。
警視庁が一連の強盗・窃盗事件に関与した可能性があるとみている渡邉容疑者と今村容疑者。
レムリヤ法相:「(Q.渡邉、今村両容疑者の携帯電話は没収しましたか?)現時点では、押収品はすべて移民局が保管しています。移民局が日本政府に直接連絡しています。押収した携帯電話が捜査に重要だと理解しています」
残る2人についても30日、新たに藤田聖也容疑者(38)と小島智信容疑者(45)であることが明らかになりました。
■フィリピン収容所に異変…収容者「親分は独房出た」
これまでフィリピン国内で大きく報じられることのなかったこの事件ですが、30日の紙面を見てみると「ルフィ」とあります。法相が会見に応じるなどしていて、事件への注目度が徐々に高まってきているようです。
渡邉容疑者らが拘束されているのは、首都マニラにある「ビクタン収容所」。現在、ここにいる日本人は17人。その中に「ルフィ」はいるのでしょうか。
渡邉容疑者らは、およそ3年にわたって、ここで暮らし、SNSで様々な指示を送っていたとされています。
かつて入所したことがある人物によりますと、汚職がはびこり、「職員に金さえ払えば何でもできる」状態だったという収容所内。以前、自らも収容されていた韓国のルポライターは、日本の強盗事件などがフィリピンにも伝わった途端、収容所内で大きな動きがあったと話します。
ルポライター 金潤永(キム・ユニョン)氏:「27日夜に、日本の4人の容疑者(の所持品)を集中的に捜索した。その時から自由をかなり奪われました。きょうは、収容者全員に対して捜索した」
2回目の捜索で、携帯電話などが押収されたということです。収容所内では、比較的、自由に電話が使えるという夕食時に、中の人物に電話を掛けてもらいました。
金氏:「日本での事件で、収容者たちも大変ね」
収容者:「そうです、あいつはきのう独房から出ました」
金氏:「独房から誰が出たの?」
収容者:「あの親分」
■渡邉容疑者の“人物像” 大学入学後に“激変”
東京・狛江市の90歳女性殺害事件を含め、一連の強盗・窃盗事件に関与した可能性がある渡邉容疑者はどんな人物なのでしょうか。
渡邉容疑者が生まれ育った北海道別海町を取材しました。
全国一の酪農王国と言われ、人より牛の数のほうが多いというこの町で、少年時代を知る人物に話を聞くことができました。
少年時代を知る人物:「ずっと剣道をやっていて、真面目だったと聞いている。今回の件は、非常に驚いている」
高校時代の同級生は、次のように話しました。
高校の同級生:「すごく仲間思いというか、悪い印象は全然ない。勉強も普通以上にできてたかと思う。運動神経も抜群。結構何でもそつなくこなすことができるような、そんな感じの印象」
剣道に打ち込み、真面目な学生だったという渡邉容疑者。しかし、札幌近くの大学に入学した後は、生活態度が変化したといいます。
大学の同級生:「サークル仲間は皆、仲が良く、肝試しやキャンプをしたり、ほぼ毎日誰かの家で飲んだりしていた。当時は明るくて、社交的で人気もあり、わりとモテていたと思う」
■明らかな変化…同級生「羽振りのいいイメージ」
サークルの仲間たちと、よく一緒に遊んでいたという渡邉容疑者。1年生までは、授業にもきちんと出ていたといいますが…。
大学の同級生:「2年生の夏ごろからサークル仲間と毎日のように、すすきのでバイトを始めてから、日中に起きられなくなり、だんだん講義に出なくなった」
札幌の繁華街で夜のアルバイトを始めてからは、大学に来る機会も減っていったといいます。高校の同級生は、渡邉容疑者と札幌で会った際に、明らかな変化を感じたと話します。
高校の同級生:「『今、車、キャデラック乗っているんだよね』とか、結構羽振りのいいイメージでしたね。だいぶ高校から風貌が変わっていまして、ちょっとふくよかな感じになってた。ちょっと怖い感じ」
さらに、この数年後、電話で話した際には、こんなことも口にするようになっていたということです。
高校の同級生:「『今、何やっているの』とか、たわいもない話をして。これからフィリピンに行くみたいな話をしてきた。『フィリピン行って何するの?』という話をしていて、『人材派遣的な仕事をするんだ』みたいな感じで。電話の声からすると、フィリピンで一旗あげてやる的な感じ、そんな雰囲気の電話だった」
■“別のルフィ”都内に出現? “複数人”存在か
全国各地で起きている強盗・窃盗事件。指示役“ルフィ”を巡っては、これまでフィリピンの入管施設から犯行の指示を出していたとみられていました。しかし、ここに来て、新たな情報が入りました。
山口県岩国市で去年11月に起きた強盗未遂事件で、逮捕・起訴された男の証言から“別のルフィ”の存在が浮上しているのです。
「桃太郎」と名乗る人物らから、指示役の「ルフィ」に会うよう指示された場所は、東京・東村山市にある西武新宿線の久米川駅でした。
駅前にはスーパーや飲食店が立ち並び、子育て世代も多く利用する久米川駅。「ルフィ」は、その場で男に資金を渡すと、犯行に関わる簡単な指示をしたということです。この時、話し方のアクセントから、「ルフィ」は関西の出身ではないかと、男は感じたといいます。
一方で、この「ルフィ」が現れた“時期”に関しては、ある疑問が浮かび上がります。
東京に現れた「ルフィ」。しかし、数々の事件で「ルフィ」と名乗っていたとみられる人物らは、この時、すでにフィリピンで拘束されていました。つまり、国内にも別のルフィがいたことになります。
捜査関係者はフィリピンにいる人物以外にも、複数の人間が「ルフィ」を名乗っていたとみています。