高校で全国初「マンガ学科」誕生 世界で通用する”表情の描き方”を編集者が教える…体験授業は大盛況【熊本発】

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7月、熊本県立高森高校のオープンスクールに全国から130人の中学生が詰めかけた。お目当ては「漫画家になるための体験授業」。全国初となる公立高校のマンガ学科設置、その第一歩に密着した。
高森高校1年 白石えみりさん:すごく緊張もあるんですが、来年たくさん新入生が来てくれるとうれしいなという気持ちで、準備を頑張ってます
宮崎との県境に近い熊本県立高森高校は、朝から先生や生徒が総出で準備に追われていた。高校の未来を左右するといっても過言ではない、オープンスクールが始まろうとしていた。
高森高校 山中圭介校長:校長室に引っ込んでいられない。少しでも見て回って、自分にやれることがあったらやりたいなと思って
会場設営や学校紹介のプレゼンまで、全て手作りで中学生を歓迎する。
定員割れが続く高森高校は現在、全校生徒79人。県外からも生徒を呼び込もうと、2021年に熊本県と高森町、高森高校、そして町内に第2本社を構える出版社「コアミックス」が協定を結んだ。
4者が協力して取り組みを進め、高校で漫画を専門に学ぶ全国初の「マンガ学科」が2023年に誕生する。
高森町 草村大成町長:日本の漫画は世界に誇れる文化ですから。本物(の漫画家)を目指す生徒が志して来てくれるからには、こちらも本気で町としてバックアップする
学校の図書室には漫画コーナーが設置され、廊下の壁にも人気漫画のイラストが飾られるなど、雰囲気づくりは着々と進んでいる。
高森高校2年 阿蘇品歌音さん:人数が少ないというのが高森高校の課題だと思います。世界中に「マンガ学科」のおかげで高森高校という名前が知れ渡っていけば、在校生も高森町民としてもワクワクすることだと考えています
オープンスクールでは在校生が懸命に学校の魅力を伝えた。
北は北海道から南は沖縄まで、全国から集まった130人の中学生に向けてのメインイベントは、漫画家になるための体験授業だ。
出版社「コアミックス」の役員で漫画編集者の持田修一さんが教壇に立ち、世界で通用する「表情の描き分け方」を伝えた。
コアミックス 持田修一取締役:例えば「喜び」の表情も最初は口を閉じているんですね。喜びが大きくなればなるほど、どんどん口が大きくなっていくんですよ。笑いのポイントは口と目、眉毛ですよね
コアミックスが抱える数々の人気漫画作品、その1ページ、1ページが教科書。
コアミックス 持田修一取締役:作り手側が100%泣かせようと思って悲しい表情を書いても、読者は70%くらいのテンションでしか見てくれないんです。読み飛ばされちゃう。「120~130%の勢いで泣いている表情を描け」とよく言うんです。ウチの漫画のキャラクターが泣いてるシーンって、涙の量がすごく多いんですよ。ボタボタボタ~ッて。実際そんなに涙は流れないんですけど、キャラクターの感情を表現、伝えるためにデフォルメする
プロの編集者だからこそ語ることのできる作品作りのポイントが、次々に飛び出した。その後は実際に表情の描き分けにも挑戦。中学生とは思えないほど完成度の高い生徒も…。
熊本市内から来た生徒:めっちゃ楽しかったです。本格的な人に教えてもらえるので、自分にない知識を吸収できて良かったと思いました
小国町から参加の生徒:どういうところを読者が求めているかを説明してくださった。漫画や絵を描く上ですごく参考になるので、そういうところが魅力的だと思います
体験授業を終えた生徒たちは、高校から車で5分ほどのコアミックス第2本社へ。高森高校の生徒なら誰でも放課後ここにやってきて、本を読んだりマンガ制作の道具を自由に使えるようにする計画だ。最新鋭のデジタル機材を見学し、保護者たちも心を動かされた様子だった。
Q. こういう環境での学びはいかがですか?
保護者:時代は変わったなと思うのと、ぜひ娘が入れたらなと思います。進路は1択なんです
保護者:プロと同じ機材を使えるという話だったので、高校生から使えるならとてもいいんじゃないですかね
益城町からきた中学生:すごかったです。いろんな機材があってすごく楽しかった
保護者:やる気を引き出してくれるような高校だったので好感を持ったのと、コアミックスは子どもがとても好きな出版社で「終末のワルキューレ」などを家族で読んでいて、とてもいい刺激になりました
今後は機材の搬入やアトリエの設置など、ハード面の準備も加速させる。授業開始は2023年4月。全国から注目が集まる高森高校マンガ学科の船出まであと8カ月だ。
(テレビ熊本)

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