コロナ禍でオンライン中心の授業となり、友達と会う機会も限られた学生たちは今、何を感じているのか――。毎日新聞と博報堂DYメディアパートナーズは2022年夏、コロナ禍が若者に与えた影響を探ろうと、東京都内の大学生ら15人を集めた座談会を開いた。2日間で計約5時間にわたる討論から見えてきたものは、さまざまな制約の中で自身を見つめ直し、ポストコロナ時代の生き方を模索する姿だった。
「学校は変えられる」 生徒から“不合理な校則”見直す新たな動き 座談会は、SNS(ネット交流サービス)を使って若い世代と双方向型の新しいメディアを創造する「毎日新聞×Z世代プロジェクト」の一環として企画し、8月に都内で開いた。座談会での発言を基にAI(人工知能)を使ったラップも作り、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」で発信している。 武蔵野大2年の重久紀香さんは「コロナのおかげで自分を見つめ直す時間ができた」と話した。高校時代は「勉強して良い大学に行くことがゴール」と考えていたが、コロナ禍で生活は一変。10年間打ち込んできた吹奏楽の練習はできず、高校最後のコンクールも中止になった。そんな時にふと「大学で何がしたいんだろう。自分はどんな大人になるのか」と疑問が浮かんだ。 部活動が中止となり「時間だけは山のようにある」状況で目に留まったのが起業などを学ぶ武蔵野大の新学部のチラシだった。動画投稿サイト「ユーチューブ」の学部紹介ではIT企業出身の学部長が語りかけていた。「何かやりたいけど、何をしたいか分からない人はぜひこの学部に!」 当時、志望していたのは都内の有名私大。理由は「私大で一番良いところに行きたいから」。武蔵野大で何をしたいのか明確ではなかったが、「ここなら受動的な人生を変えられるかも」と感じた。周りの反対を押し切って志望校を変えた。「コロナのおかげで『良い大学に行きなさい』みたいな洗脳が解けた感じ」。重久さんの言葉には実感がこもっていた。 法政大2年の佐藤天(かける)さんは、コロナ禍で人とのコミュニケーションが制限されることに寂しさを感じていた。「この時間を無駄にしたくない」と頭を絞って思いついたのが、電車などを使わない散歩と自転車の旅だった。 川崎市の自宅から約30キロ離れた東京スカイツリー(東京都墨田区)まで友達と歩いたり、神奈川県藤沢市の江の島まで自転車で行ったりした。道の途中で、そこに暮らす人々や生活に思いをはせた。小さな幸せをいくつも見つけた気がした。 「不便な中にも幸せは眠っている」。それまでは効率よく資格を取ったり就職活動をしたりして、時間をかけずに成功することが「幸せの最短ルート」と考えていた。でも今は、効率や便利さに代わる価値観があるはずだと考えている。 国立豊田高専5年の永田弾(だん)さんは新型コロナウイルスの影響で、楽しみにしていたインド留学が白紙になった。自粛ムードも相まって気分は沈んでいたが、友達に誘われて入った「日本インド学生会議」での活動が転換点となった。 学生会議では週1、2回、インドの学生たちとオンラインで社会問題について議論した。彼らと交流するうちに「自分には熱意が無かった」と気付いた。コロナ禍で一度は「何もできない」と無力感を味わった。それでも勇気を持って飛び込んだ学生会議での経験を通して「コロナ禍で得たものは『自信』。自分はもっと成長できるはずだ」と思えるようになった。 人と人との接触機会が制限されたことで、コミュニケーションに対する考え方が変わった学生もいる。 青山学院大3年の堀百花(ももか)さんは大学進学のため上京した。休校が続いて友達を作れなかったため、人との交流を求めて音声配信アプリを始めた。「元々あまり社交的なタイプではなく、SNSがきっかけの出会いにも偏見があった」 ところが、そこで知り合った男性と仲良くなり交際するようになった。SNSだからこそ、自分と異なるさまざまなバックグラウンドを持つ人と出会い、多様な価値観に触れることができた。「友情や恋愛の始まりに対面もSNSも関係ない」。今はそう感じている。 悩みを率直に吐露した学生もいた。早稲田大3年の女子学生は「自分のやりたいことを見つけられていないことが心配」と明かした。「それをコロナのせいにしたくない思いと、でもやっぱりコロナのせいにしたいという思い。コロナを言い訳にしたい気持ちがある」 女子学生は、22年の夏から長期のインターンシップを始めた。最初は就職活動に役立つと思ってインターンシップ先を探していたが、最終的には将来につながるようなことをやってみたいと、その企業を選んだ。 「これからも、コロナ以外で制限がかかることや個人的な事情でできないことがきっとある。その時にマイナス面だけを捉えるのではなく、自分がどうやっていくのかが大事だと思う」【北村栞、岩本桜】
座談会は、SNS(ネット交流サービス)を使って若い世代と双方向型の新しいメディアを創造する「毎日新聞×Z世代プロジェクト」の一環として企画し、8月に都内で開いた。座談会での発言を基にAI(人工知能)を使ったラップも作り、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」で発信している。
武蔵野大2年の重久紀香さんは「コロナのおかげで自分を見つめ直す時間ができた」と話した。高校時代は「勉強して良い大学に行くことがゴール」と考えていたが、コロナ禍で生活は一変。10年間打ち込んできた吹奏楽の練習はできず、高校最後のコンクールも中止になった。そんな時にふと「大学で何がしたいんだろう。自分はどんな大人になるのか」と疑問が浮かんだ。
部活動が中止となり「時間だけは山のようにある」状況で目に留まったのが起業などを学ぶ武蔵野大の新学部のチラシだった。動画投稿サイト「ユーチューブ」の学部紹介ではIT企業出身の学部長が語りかけていた。「何かやりたいけど、何をしたいか分からない人はぜひこの学部に!」
当時、志望していたのは都内の有名私大。理由は「私大で一番良いところに行きたいから」。武蔵野大で何をしたいのか明確ではなかったが、「ここなら受動的な人生を変えられるかも」と感じた。周りの反対を押し切って志望校を変えた。「コロナのおかげで『良い大学に行きなさい』みたいな洗脳が解けた感じ」。重久さんの言葉には実感がこもっていた。
法政大2年の佐藤天(かける)さんは、コロナ禍で人とのコミュニケーションが制限されることに寂しさを感じていた。「この時間を無駄にしたくない」と頭を絞って思いついたのが、電車などを使わない散歩と自転車の旅だった。
川崎市の自宅から約30キロ離れた東京スカイツリー(東京都墨田区)まで友達と歩いたり、神奈川県藤沢市の江の島まで自転車で行ったりした。道の途中で、そこに暮らす人々や生活に思いをはせた。小さな幸せをいくつも見つけた気がした。
「不便な中にも幸せは眠っている」。それまでは効率よく資格を取ったり就職活動をしたりして、時間をかけずに成功することが「幸せの最短ルート」と考えていた。でも今は、効率や便利さに代わる価値観があるはずだと考えている。
国立豊田高専5年の永田弾(だん)さんは新型コロナウイルスの影響で、楽しみにしていたインド留学が白紙になった。自粛ムードも相まって気分は沈んでいたが、友達に誘われて入った「日本インド学生会議」での活動が転換点となった。
学生会議では週1、2回、インドの学生たちとオンラインで社会問題について議論した。彼らと交流するうちに「自分には熱意が無かった」と気付いた。コロナ禍で一度は「何もできない」と無力感を味わった。それでも勇気を持って飛び込んだ学生会議での経験を通して「コロナ禍で得たものは『自信』。自分はもっと成長できるはずだ」と思えるようになった。
人と人との接触機会が制限されたことで、コミュニケーションに対する考え方が変わった学生もいる。
青山学院大3年の堀百花(ももか)さんは大学進学のため上京した。休校が続いて友達を作れなかったため、人との交流を求めて音声配信アプリを始めた。「元々あまり社交的なタイプではなく、SNSがきっかけの出会いにも偏見があった」
ところが、そこで知り合った男性と仲良くなり交際するようになった。SNSだからこそ、自分と異なるさまざまなバックグラウンドを持つ人と出会い、多様な価値観に触れることができた。「友情や恋愛の始まりに対面もSNSも関係ない」。今はそう感じている。
悩みを率直に吐露した学生もいた。早稲田大3年の女子学生は「自分のやりたいことを見つけられていないことが心配」と明かした。「それをコロナのせいにしたくない思いと、でもやっぱりコロナのせいにしたいという思い。コロナを言い訳にしたい気持ちがある」
女子学生は、22年の夏から長期のインターンシップを始めた。最初は就職活動に役立つと思ってインターンシップ先を探していたが、最終的には将来につながるようなことをやってみたいと、その企業を選んだ。
「これからも、コロナ以外で制限がかかることや個人的な事情でできないことがきっとある。その時にマイナス面だけを捉えるのではなく、自分がどうやっていくのかが大事だと思う」【北村栞、岩本桜】