1998年1月の群馬県一家3人殺害事件で、両親と祖母を殺害された女性(45)が、SNSで事件についての発信を始めた。
事件は14日で発生から25年となったが、殺人容疑で指名手配された元トラック運転手小暮洋史(ひろし)容疑者(53)は今も行方がわかっていない。事件の風化も懸念される中、女性は「『私たちは覚えている』という圧力を彼に与え続けたい」と力を込める。
25年前の1月14日午後9時頃。女性は勤務先から群馬県群馬町(現・高崎市)の自宅に帰ると、小暮容疑者に後ろから襲われた。首を絞められ、手で口をふさがれたが、手にかみついて抜け出した。小暮容疑者は「取り返しのつかないことをした」と動揺した様子も見せた後、家を去った。
家には父親の石井武夫さん(当時48歳)と母親の千津子さん(同48歳)、祖母のトメさん(同85歳)がいたはずだった。しばらくして風呂場の近くに血だまりが見えた。駆け付けた警察官により、3人は浴槽や押し入れから遺体で見つかった。
小暮容疑者は、配達先の薬局に勤めていた女性に一方的に好意を寄せ、つけ回すなどの行為を繰り返していた。女性は事件後、「私の態度が事件に向かわせてしまった」と自分を責め、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。恐怖が消えず、他人との関わりも避けてきた。
一方で「家族というものに憧れ、救いを求めていた」。事件から5年ほどたった頃、結婚し、2人の子供も生まれた。新たな家族と暮らす中で、失った家族への思いも強くなっていった。
「私が忘れたら、誰も事件を気にしなくなる」。そう思い直し、事件に関する記憶をたどるようになった。昨年末からはインスタグラム(アカウントは@cold_case_1.14)で「情報の提供をお待ちしております」と呼びかけ始め、容疑者の顔写真や特徴なども記した。
3人に子供の成長を見せたかったが、かなわない。女性は「家族を奪われた喪失感は決して消えない。犯人には罪を償ってほしい」と話している。
◇ 群馬県警は昨年末までに延べ約59万5600人の捜査員を投入し、現在も58人態勢で捜査を続けている。
県警によると、小暮容疑者は身長約1メートル70。爪をかんだり手のにおいを嗅いだりする癖がある。県警には昨年末までに計3027件の情報が寄せられた。
情報提供は県警のフリーダイヤル(0120・547・590)へ。
◆群馬県一家3人殺害事件=1998年1月14日夜、電気工事業石井武夫さん方で、石井さんら3人が殺害された。石井さんは胸を、千津子さんは背中を刺され、トメさんは首を絞められた。