話始め10秒でバレる「話が下手な人」の最大の特徴

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説明上手な人と、そうでない人の違いとは(写真:takeuchi masato/PIXTA)
「なぜか、相手に話を聞いてもらえない」「伝えたいことと違う受け止め方をされてしまう」……。そんな経験をしたことが誰しもあるだろう。その大きな要因の1つは「場の定義」をしていないことだと、数多くの研修などで講師を務めるビジネス数学研究家の深沢真太郎氏は指摘する。本稿では「場の前提」とは何かについて、著書『「数学的」話し方トレーニング』から一部抜粋してお届けする。
私たちが日常でする話には「主張」があり、そしてその前に「導入」があります。そしてそこでは定義するという数学的な行為が必要です。数学で最初にする行為は定義であり、それをしないと議論や研究がスタートできません。例えば素数の研究をするのであれば、まず「素数とは~である」という共通の定義をしなければなりません。実は、この考え方が私たち人間のコミュニケーションに大いに役立つのです。では、具体的に何をどのように定義すればいいのか。
ポイントは大きく2つあります。
●言葉を定義する
●場を定義する
ここでは、2つ目のポイントの、場を定義するということについて説明します。具体的には次の3つのいずれか、あるいはすべてを定義することです。
●時間
●前提
●目的
まずは最もシンプルなものとして、時間を定義することについて説明しましょう。あなたはこれまでに話の冒頭で次のような発言をする人物に会ったことはありませんか。
「手短にお伝えしますが」「少しばかり長くなりますが」「いまから5分程度いただいてもいいでしょうか」
これらに共通するのが、その話の所要時間について定義をしていることです。定義とは「Aとは~である」と定める数学的な行為のことです。つまり先ほどの3つの発言は、このようなメッセージを伝えていることに他なりません。
「この話は、手短な内容のものである」「この話は、少しばかり長くなってしまうものである」「この話は、あなたの時間を5分程度いただくものである」
よく「話が長くなってしまう」という問題意識を持っている人がいます。しかし私は話の所要時間が長いこと自体は問題ではないと思っています。人生においては1分で終わる話もあればどうしても30分かかる話もあります。では何が問題かというと、所要時間を定義し伝えていない状態で、相手の想定より長い時間を奪って話をし続けることが問題だと思うのです。
あらかじめ相手に10分かかる話だと伝えておけば、あなたが10分間ずっと話しても問題はありません。しかし相手がせいぜい2~3分で終わるだろうと思っているところであなたが10分間ずっと話してしまうから、相手は「長い」と感じます。結婚式での来賓スピーチや学校での校長先生の挨拶など、あなたにも思い当たるシーンがいくつか想像できるのではないでしょうか。
このような聞き手のちょっとした心情やストレスを慮ることができると、話の導入で所要時間を伝えてあげようという発想が自然に生まれます。今日からすぐにできることですので、ぜひ意識してみてはどうでしょうか。
【演習問題】あなたが明日、ビジネスシーンにおいて誰かに話す状況を想像してください。その相手に「所要時間」に関するストレスを感じさせないためには、どんな言葉を伝えるといいでしょうか。
私は学生時代にサッカー部で汗を流していたこともあり、現在もサッカー観戦が好きです。特に日本代表の試合などはよくテレビで観戦しますが、実は試合内容はもちろんのこと、解説者の話し方にも関心を持って視聴しています。数多くの解説者の話し方を観察してきましたが、元日本代表選手でもある戸田和幸さんの解説は圧倒的にわかりやすく、かつクレバーな話し方をされるなと思っています。
そんな戸田さんが日本代表とブラジル代表の試合(2022年6月6日)終了後にご自身の動画チャンネルに公開した映像があります。そこでお話しされていたのは試合の感想と解説ですが、本題に入る前にこのような話をされていました。要点だけ抜粋して表現いたします。
皆さんこんにちは、戸田和幸です。昨日、新しくなった国立競技場で日本代表vsブラジル代表の試合を観てきました。僕はJFLからご招待いただいて、VIP席で観戦することができました。すごくいい席で試合を観ることができ感謝しております。ありがとうございました。おそらくこの試合を観たいと思ってチケットを購入しようと努力した方もたくさんいたと思いますし、残念ながら観られなかった人もたくさんいたと思います。僕は現地で試合を観られるという幸運に与りましたから、試合を観た感想と分析を動画にして公開したいと思います。
【参考】戸田和幸「SHIN_KAISETSU」「日本vsブラジル『世界最高レベルを知る』(動画:戸田和幸「SHIN_KAISETSU」/YouTube)さて、戸田さんはここまでの話を通じて聞き手に何を伝えているのでしょうか。表面的にはJFLへの謝辞を述べているだけの内容にも感じますが、私はこの先の本題を聞いてもらうための前提を説明した内容だと思っています。一般論として、スポーツ観戦は競技場で観戦するのとテレビで観戦するのでは得られる情報が大きく違います。つまり述べる感想や分析の前提が違うのです。戸田さんははっきりと、「私は現場で観戦したうえで話しますよ」と言っています。このような映像を視聴する人はおそらくサッカーファンであり目も肥えている人たちでしょう。サッカーに詳しい方であれば、その感想や分析が現場で観たうえでの発言なのかはおそらく気にするはずです(少なくとも私なら気になります)。もし戸田さんもそのことに敏感で、本題を話すうえでの前提をしっかり伝えておこうという意図でこの導入トークをしているとしたら、さすがだなと思います。このように、私たちの日常には前提が違えばすべてが違ってしまうことがたくさんあり、例えばあなたが誰かに「もっと頑張って欲しい」と伝えたいとします。このメッセージの前提が「これまでもよく頑張っている」なのか、「正直に言って物足りない」なのかによって、メッセージを受け取る側の解釈は変わってしまいます。前者は「エール」と受け取るかもしれませんが、後者は「ダメ出し(批判)」と受け取るでしょう。ですからどちらの前提で伝えるのかを、本題に入る前に情報として相手に伝えておかないと、コミュニケーションがうまくいかなくなります。場合によっては真逆の伝わり方になったり、人間関係において致命的な亀裂が生じるきっかけになったりします。前提:「これまでもよく頑張っている」メッセージ:「もっと頑張って欲しい」↓エールをもらった!前提:「正直に言って物足りない」メッセージ:「もっと頑張って欲しい」↓ダメ出し(批判)された……前提を伝えることはいらぬ誤解を生まないため「頭のいい人」はこのことがよくわかっています。だから話の導入において「この話は~という前提で展開されるものである」といった定義を行うのです。もしこの「前提を定義せよ」という提案ではイメージが湧きにくいという方がいらっしゃったら、次のような問いを自問自答してもいいでしょう。本題に入る前に話しておかないと誤解されてしまう可能性があることはないか?先ほどの戸田さんの事例を思い出しましょう。戸田さんは別にVIP席で試合を観たことを自慢したかったわけではありません。テレビで観戦していただけなのに、さも競技場にいて隅から隅まで観察していたかのような過剰な(テキトーな)表現や感想を言っているわけではないと伝えたいのではないでしょうか。つまりあのトークは要らぬ誤解を生まないための予防線を張った行為と捉えることもできます。戸田さんの導入話法がクレバーだなと私が感じるのは、このあたりも大きな理由なのです。ぜひあなたも今日から、自分が話をするときの前提を気にするようにしてみてください。先ほどの【演習問題】の続きとして、次のテーマで練習してみましょう。【演習問題】先ほどの【演習問題】で想像した状況において、その相手に伝えたほうがいい「前提」はあるでしょうか。具体的には、本題に入る前に話しておかないと誤解されてしまう可能性があることはないか考えてみてください。(深沢 真太郎 : BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家)
【参考】戸田和幸「SHIN_KAISETSU」「日本vsブラジル『世界最高レベルを知る』(動画:戸田和幸「SHIN_KAISETSU」/YouTube)さて、戸田さんはここまでの話を通じて聞き手に何を伝えているのでしょうか。表面的にはJFLへの謝辞を述べているだけの内容にも感じますが、私はこの先の本題を聞いてもらうための前提を説明した内容だと思っています。一般論として、スポーツ観戦は競技場で観戦するのとテレビで観戦するのでは得られる情報が大きく違います。つまり述べる感想や分析の前提が違うのです。戸田さんははっきりと、「私は現場で観戦したうえで話しますよ」と言っています。このような映像を視聴する人はおそらくサッカーファンであり目も肥えている人たちでしょう。サッカーに詳しい方であれば、その感想や分析が現場で観たうえでの発言なのかはおそらく気にするはずです(少なくとも私なら気になります)。もし戸田さんもそのことに敏感で、本題を話すうえでの前提をしっかり伝えておこうという意図でこの導入トークをしているとしたら、さすがだなと思います。このように、私たちの日常には前提が違えばすべてが違ってしまうことがたくさんあり、例えばあなたが誰かに「もっと頑張って欲しい」と伝えたいとします。このメッセージの前提が「これまでもよく頑張っている」なのか、「正直に言って物足りない」なのかによって、メッセージを受け取る側の解釈は変わってしまいます。前者は「エール」と受け取るかもしれませんが、後者は「ダメ出し(批判)」と受け取るでしょう。ですからどちらの前提で伝えるのかを、本題に入る前に情報として相手に伝えておかないと、コミュニケーションがうまくいかなくなります。場合によっては真逆の伝わり方になったり、人間関係において致命的な亀裂が生じるきっかけになったりします。前提:「これまでもよく頑張っている」メッセージ:「もっと頑張って欲しい」↓エールをもらった!前提:「正直に言って物足りない」メッセージ:「もっと頑張って欲しい」↓ダメ出し(批判)された……前提を伝えることはいらぬ誤解を生まないため「頭のいい人」はこのことがよくわかっています。だから話の導入において「この話は~という前提で展開されるものである」といった定義を行うのです。もしこの「前提を定義せよ」という提案ではイメージが湧きにくいという方がいらっしゃったら、次のような問いを自問自答してもいいでしょう。本題に入る前に話しておかないと誤解されてしまう可能性があることはないか?先ほどの戸田さんの事例を思い出しましょう。戸田さんは別にVIP席で試合を観たことを自慢したかったわけではありません。テレビで観戦していただけなのに、さも競技場にいて隅から隅まで観察していたかのような過剰な(テキトーな)表現や感想を言っているわけではないと伝えたいのではないでしょうか。つまりあのトークは要らぬ誤解を生まないための予防線を張った行為と捉えることもできます。戸田さんの導入話法がクレバーだなと私が感じるのは、このあたりも大きな理由なのです。ぜひあなたも今日から、自分が話をするときの前提を気にするようにしてみてください。先ほどの【演習問題】の続きとして、次のテーマで練習してみましょう。【演習問題】先ほどの【演習問題】で想像した状況において、その相手に伝えたほうがいい「前提」はあるでしょうか。具体的には、本題に入る前に話しておかないと誤解されてしまう可能性があることはないか考えてみてください。(深沢 真太郎 : BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家)
【参考】戸田和幸「SHIN_KAISETSU」「日本vsブラジル『世界最高レベルを知る』(動画:戸田和幸「SHIN_KAISETSU」/YouTube)さて、戸田さんはここまでの話を通じて聞き手に何を伝えているのでしょうか。表面的にはJFLへの謝辞を述べているだけの内容にも感じますが、私はこの先の本題を聞いてもらうための前提を説明した内容だと思っています。一般論として、スポーツ観戦は競技場で観戦するのとテレビで観戦するのでは得られる情報が大きく違います。つまり述べる感想や分析の前提が違うのです。戸田さんははっきりと、「私は現場で観戦したうえで話しますよ」と言っています。このような映像を視聴する人はおそらくサッカーファンであり目も肥えている人たちでしょう。サッカーに詳しい方であれば、その感想や分析が現場で観たうえでの発言なのかはおそらく気にするはずです(少なくとも私なら気になります)。もし戸田さんもそのことに敏感で、本題を話すうえでの前提をしっかり伝えておこうという意図でこの導入トークをしているとしたら、さすがだなと思います。このように、私たちの日常には前提が違えばすべてが違ってしまうことがたくさんあり、例えばあなたが誰かに「もっと頑張って欲しい」と伝えたいとします。このメッセージの前提が「これまでもよく頑張っている」なのか、「正直に言って物足りない」なのかによって、メッセージを受け取る側の解釈は変わってしまいます。前者は「エール」と受け取るかもしれませんが、後者は「ダメ出し(批判)」と受け取るでしょう。ですからどちらの前提で伝えるのかを、本題に入る前に情報として相手に伝えておかないと、コミュニケーションがうまくいかなくなります。場合によっては真逆の伝わり方になったり、人間関係において致命的な亀裂が生じるきっかけになったりします。前提:「これまでもよく頑張っている」メッセージ:「もっと頑張って欲しい」↓エールをもらった!前提:「正直に言って物足りない」メッセージ:「もっと頑張って欲しい」↓ダメ出し(批判)された……前提を伝えることはいらぬ誤解を生まないため「頭のいい人」はこのことがよくわかっています。だから話の導入において「この話は~という前提で展開されるものである」といった定義を行うのです。もしこの「前提を定義せよ」という提案ではイメージが湧きにくいという方がいらっしゃったら、次のような問いを自問自答してもいいでしょう。本題に入る前に話しておかないと誤解されてしまう可能性があることはないか?先ほどの戸田さんの事例を思い出しましょう。戸田さんは別にVIP席で試合を観たことを自慢したかったわけではありません。テレビで観戦していただけなのに、さも競技場にいて隅から隅まで観察していたかのような過剰な(テキトーな)表現や感想を言っているわけではないと伝えたいのではないでしょうか。つまりあのトークは要らぬ誤解を生まないための予防線を張った行為と捉えることもできます。戸田さんの導入話法がクレバーだなと私が感じるのは、このあたりも大きな理由なのです。ぜひあなたも今日から、自分が話をするときの前提を気にするようにしてみてください。先ほどの【演習問題】の続きとして、次のテーマで練習してみましょう。【演習問題】先ほどの【演習問題】で想像した状況において、その相手に伝えたほうがいい「前提」はあるでしょうか。具体的には、本題に入る前に話しておかないと誤解されてしまう可能性があることはないか考えてみてください。(深沢 真太郎 : BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家)
さて、戸田さんはここまでの話を通じて聞き手に何を伝えているのでしょうか。表面的にはJFLへの謝辞を述べているだけの内容にも感じますが、私はこの先の本題を聞いてもらうための前提を説明した内容だと思っています。
一般論として、スポーツ観戦は競技場で観戦するのとテレビで観戦するのでは得られる情報が大きく違います。つまり述べる感想や分析の前提が違うのです。戸田さんははっきりと、「私は現場で観戦したうえで話しますよ」と言っています。このような映像を視聴する人はおそらくサッカーファンであり目も肥えている人たちでしょう。サッカーに詳しい方であれば、その感想や分析が現場で観たうえでの発言なのかはおそらく気にするはずです(少なくとも私なら気になります)。
もし戸田さんもそのことに敏感で、本題を話すうえでの前提をしっかり伝えておこうという意図でこの導入トークをしているとしたら、さすがだなと思います。
このように、私たちの日常には前提が違えばすべてが違ってしまうことがたくさんあり、例えばあなたが誰かに「もっと頑張って欲しい」と伝えたいとします。このメッセージの前提が「これまでもよく頑張っている」なのか、「正直に言って物足りない」なのかによって、メッセージを受け取る側の解釈は変わってしまいます。
前者は「エール」と受け取るかもしれませんが、後者は「ダメ出し(批判)」と受け取るでしょう。ですからどちらの前提で伝えるのかを、本題に入る前に情報として相手に伝えておかないと、コミュニケーションがうまくいかなくなります。場合によっては真逆の伝わり方になったり、人間関係において致命的な亀裂が生じるきっかけになったりします。
前提:「これまでもよく頑張っている」メッセージ:「もっと頑張って欲しい」↓エールをもらった!
前提:「正直に言って物足りない」メッセージ:「もっと頑張って欲しい」↓ダメ出し(批判)された……
「頭のいい人」はこのことがよくわかっています。だから話の導入において「この話は~という前提で展開されるものである」といった定義を行うのです。もしこの「前提を定義せよ」という提案ではイメージが湧きにくいという方がいらっしゃったら、次のような問いを自問自答してもいいでしょう。
本題に入る前に話しておかないと誤解されてしまう可能性があることはないか?先ほどの戸田さんの事例を思い出しましょう。戸田さんは別にVIP席で試合を観たことを自慢したかったわけではありません。テレビで観戦していただけなのに、さも競技場にいて隅から隅まで観察していたかのような過剰な(テキトーな)表現や感想を言っているわけではないと伝えたいのではないでしょうか。つまりあのトークは要らぬ誤解を生まないための予防線を張った行為と捉えることもできます。戸田さんの導入話法がクレバーだなと私が感じるのは、このあたりも大きな理由なのです。ぜひあなたも今日から、自分が話をするときの前提を気にするようにしてみてください。先ほどの【演習問題】の続きとして、次のテーマで練習してみましょう。【演習問題】先ほどの【演習問題】で想像した状況において、その相手に伝えたほうがいい「前提」はあるでしょうか。具体的には、本題に入る前に話しておかないと誤解されてしまう可能性があることはないか考えてみてください。(深沢 真太郎 : BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家)
本題に入る前に話しておかないと誤解されてしまう可能性があることはないか?
先ほどの戸田さんの事例を思い出しましょう。戸田さんは別にVIP席で試合を観たことを自慢したかったわけではありません。テレビで観戦していただけなのに、さも競技場にいて隅から隅まで観察していたかのような過剰な(テキトーな)表現や感想を言っているわけではないと伝えたいのではないでしょうか。つまりあのトークは要らぬ誤解を生まないための予防線を張った行為と捉えることもできます。戸田さんの導入話法がクレバーだなと私が感じるのは、このあたりも大きな理由なのです。
ぜひあなたも今日から、自分が話をするときの前提を気にするようにしてみてください。先ほどの【演習問題】の続きとして、次のテーマで練習してみましょう。
【演習問題】先ほどの【演習問題】で想像した状況において、その相手に伝えたほうがいい「前提」はあるでしょうか。具体的には、本題に入る前に話しておかないと誤解されてしまう可能性があることはないか考えてみてください。
(深沢 真太郎 : BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家)

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