7人に1人、日本に約1700万人いるとされる「境界知能」の人たち。
言語化が苦手、仕事の段取りを覚えられない、行動がワンテンポ遅い、対人関係の距離感が極端、金銭管理ができない、ダマされやすい……困っているのに気づかれなかった人々の実態とは?
発売即重版が決まった話題書『境界知能の人たち』では、当事者を見てきた第一人者の医師が、全体像をわかりやすく解説する。
(本記事は、古荘純一『境界知能の人たち』の一部を抜粋・編集しています)
日本には障害のある人が公的な支援を受けることには法的根拠が存在します。
身体障害者福祉法では身体障害者手帳を、精神保健福祉法では精神障害者保健福祉手帳を、そして発達障害者支援法では独自の認定制度はないものの、精神障害者保健福祉手帳を取得することができます。
18歳未満には療育手帳が交付されますが、厚生労働省の報告では、18歳未満の手帳取得者の3分の2は、療育手帳となっています。
療育手帳は現在各自治体が独自に認可発行しています。加えて必ずしも医師の診断がなくても発行ができます。
その理由として、ほかの手帳は発行までに6ヵ月の観察期間を要しますが、その短縮を図るために簡略化されていること、そして地域によっては関与できる医師がほとんどいないといった事情などが考えられます。
その判定は、自治体によりまちまちですが、主として知能検査の結果で線引きが行われています。70で線引きをするところもあれば、誤差を考えて74のところもあり、さらに80としている地域もあります。療育手帳の判定基準が地域によってバラバラなものを、統一化する作業が進められています。
しかしながら療育手帳の判定基準を統一するにしても、診断書としての医師の所見が関与しない状態は続くことになります。現在手帳を取得している人が、統一基準が施行された場合、支援の対象外と判断されることもありえます。
そもそも18歳までは療育手帳で、18歳以降にあらためて精神障害者保健福祉手帳を取得する根拠などは、明確にはならないと考えられます。
医師は、精神障害者保健福祉手帳の診断書を作成することができます。
ただし、原則として医療機関では、半年以上の診察期間をおかないと診断書作成ができないことになっています。実際、多くの精神疾患の診断基準には6ヵ月以上その状態が続くことが挙げられています。
予約が取れない、1回目の診察日までかなりの期間待たされる、次の診察の予約がまたなかなか取れない、あるいは検査をして「診断はできない」とされ、さらに再診察も断られる……こうしたことはよくあります。
厳密な診察を行った結果、数回目になって結局診断できないと断られることもあります。私は、その中に境界知能の人が多く含まれていると考えています。
支援につながる診断を受けて、公的書類を作成してもらうには、想像以上に時間がかかるのです。これで諦める人も多くいるのではないでしょうか?
発達障害や知的障害については、「親の会」などのNPO法人があり、インターネットを通じて支援についての情報を得ることができます。相談に訪れた場合、団体を紹介してもらうことも可能です。
しかしながら、境界知能の人は、人口の14%が該当するにもかかわらず、支援者のサイトはなく、インターネットでわずかに当事者のサイトが存在する程度です。当事者の人は、物事の管理・運営をすることが得意ではないので、なかなかネット上に情報が蓄積されていかないのでしょう。
しかしそれ以上に、「境界知能」や「知的障害」に対する社会の誤解と偏見が根強い点も無視できません。同じ体験談でも、闘病体験や喪失体験は共感が得られやすく、情報交換の場も多くありますが、知的障害や境界知能については、当事者とは関係なく上の立場からその様子を知ろうとする「同情」にとどまっているようにも思えます。
さらに「日本に1700万人いるとされる「境界知能」の人たち…当事者を見てきた医師が明かす「その実態」」では、7人に1人いるとされ、知的障害と平均値のボーダーにある境界知能の実態に迫っていく。
【つづきを読む】日本に1700万人いるとされる「境界知能」の人たち…当事者を見てきた医師が明かす「その実態」