世界遺産・姫路城(兵庫県姫路市)で1日、18歳以上の入城料が改定され、市民以外は1000円から2500円へ大幅に値上げされた。
市民の入城料は据え置かれた。こうした「二重価格」は近年、各地で導入されているが、姫路城のように2・5倍もの差を付けた例は珍しく、広がるか注目される。(姫路支局 坂木二郎)
2500円という入城料は、天守が現存する国内の12城で最高額で、2番目の松本城(長野県松本市)の約2倍となる。
一方、市民は1000円のままとなり、入城時に窓口でマイナンバーカードなどの身分証を提示すれば、市民向けの入城料が適用される。これまで300円だった小中高校生の入城料は、市民以外を含めて無料となった。
市民と市民以外で二重価格を設定するケースは近年、全国で相次ぐ。多くの施設では、差額は数百円程度に収まっている。
札幌市の観光名所「さっぽろテレビ塔」は今年1月、展望台の高校生以上の入場料を200円引き上げて1200円とした一方、市民は800円に値下げした。運営会社は読売新聞の取材に「札幌市内にある他の観光施設の料金を考慮して決めた」と答えた。
鹿児島市も昨年10月、「かごしま水族館」など観光客の多い14施設について、市外からの利用者の一般料金を市民より100~500円高く設定した。市財政課の担当者は「あまりに料金差があれば観光客が減るとの議論があり、今回の料金に落ちついた」と話した。
姫路市が思い切った料金設定をした背景には、江戸時代初期に大天守が完成した姫路城は多額の維持管理費がかかるという事情がある。市の試算では、補修や石垣の耐震化で、2025年度から10年間で280億円が必要とされる。
市は、入城者数の減少を織り込んだ上で幅広い金額を検討し、2500円が市の収入を最大化できると判断したという。市の担当者は「維持管理に必要な収入を確保することを考えた。本当に城を見たい人は、料金が2・5倍に上がっても来てくれるはず」と話す。
市は当初、外国人観光客を対象にした値上げも検討したが、「外国人差別だ」などの批判が相次いだ。代案としたのが市民と市民以外で分ける方法で、差額を設ける理由について「市民は税金を負担し、城の保存・継承に貢献している」とする。
姫路城の管理事務所によると、1~4日(日曜~水曜)の入城者は計約8600人。前年の同時期(2~5日)に比べると、約1600人減った。
城周辺の飲食店では、値上げで客足への影響を懸念する声が聞かれた。姫路城大手門近くで60年以上、喫茶店を経営する女性(83)は「お城があって、我々の経営が成り立つ。大幅な値上げがどう影響するのかわからず心配だ」と漏らした。
航空・旅行アナリストの鳥海高太朗さん(47)は「維持管理に苦労する施設は多く、こうした二重価格は広がっていくだろう。ただ、市民と市民以外で2・5倍もの差を付けたことはどこまで理解を得られるかわからず、市は今後、入城者数がどうなるか検証していく必要がある」と指摘した。
ロシアで生まれて姫路市で育ったコラムニスト・小原ブラスさん(33)は「『二重価格』と言うと誤解や反発を招きかねないので、『住民割引』という趣旨を丁寧に説明することが大切だと思う」と語った。
佐滝剛弘・城西国際大教授(観光政策)の話「(姫路城の価格差は)少し差がありすぎるように感じる。市外の人も姫路城に来訪したついでに食事や買い物でお金を落として地域を潤している面を考慮に入れるべきではないか。大幅な値上げで日本人観光客が減り、期待するほど文化財を守るための収入が得られず、逆効果になる可能性もある」