2月8日に投開票が行われる衆院選。通常国会冒頭での衆議院解散は60年ぶりで、さらに16日間という戦後最も短い期間での選挙となる。また2月に投開票が行われる衆院選は、1990年以来、36年ぶりだ。
今回の選挙については、「衆院選費用の855億円を他の用途に使えたのでは」「自民党の議席を増やすためだけの選挙だ」など、世間ではさまざまな批判がなされている。その一つとして指摘されているのが、「雪国における冬季の選挙戦の大変さ」だ。他の地域との“格差”が生まれているのではという声があがっているのだ。
積雪が多い地域では、有権者が投票に行くこと自体が難しい。また政治家たちが十分な選挙活動をすることも困難だ。そういった意味で2月の衆院選は、すべての有権者や候補者にとって平等に行われているといえるのか。実態を調査した。
秋田県内のある候補者の選挙事務所で働くスタッフに話を聞くと、「平等に行われていると信じたい」とは言うものの、「マイナス要因が多すぎる」と不満を漏らす。
「まず、選挙ポスターの掲示が難しい場所があります。市の選挙管理委員会の方が除雪をして掲示板を立てていますが、除雪をするにも限界があるため非常に少なくなっています。また、街頭演説に関しても、スピーカーの音が雪に吸われてしまい、響かないという現象も発生しています。こうなると支援者の方になかなか声を届けることができません。
演説の場所も限られています。今まで演説ができた場所も、除雪した雪が道路脇に積まれて車がすれ違うだけでやっとな状況で使えないことが多い。そうなると選挙活動を大きく見直すしかありません。雪のために1時間で行ける場所に、2時間以上かかるといったこともあります」
投票率への影響も懸念されている。対策を考えてはいるものの、できることは少ないという。
「お年寄りの方からは『寒いから外に出たくない』といった言葉も聞きます。公共交通機関の遅延や運休もありますし、雪が降っている状況で運転したくないという方もいます。雨でも選挙に行く人は減少するので、積雪の影響で投票率はさらに下がるかと思われます」
青森県でも、積雪によるマイナス要素は大きく、県内の選挙事務所スタッフによると異常事態が発生しているとのことだ。
「青森の一部地域では621ヵ所に設置されるはずの掲示場が今回は縮小されて97ヵ所です。除雪をしながら看板を立てるのは非常に大変だと業者の方から伺っています。街頭演説も、道路脇に除雪した雪が大量に積もっているために、歩道での演説は交通の障害になってしまいます。ですので、演説は縮小せざるを得ません」
青森県でも候補者陣営が気にしているのは投票率だ。それ以上に『公平性』が保たれているのかという疑問も出ている。
「真冬だと、車移動をするにも悪路や渋滞といったネガティブな要因がいたるところで発生するので、投票に行かない人も多い。候補者同士の条件は同じですが、有権者の投票する権利、参政権に対しては相当な影響を与えていると思います。選挙運営のあり方としては、格差が生じているのは間違いないです」
また福島県の豪雪地帯では、除雪が間に合わない、職員が時間までに到着できないなどの理由から当日の投票の開始時間を1~2時間遅らせたり、特に積雪が多い投票所を近隣の地区に変更するなどの措置がとられるという。こういった要素も投票率に明らかに影響しそうだ。
冬季の選挙における地域格差について大城聡弁護士に話を聞くと、「まだ投票率に影響が出るかわかりませんが、公正な選挙ができる日程が組まれているのかは疑問視するべき」とのことだ。
「今の段階で選挙権が侵害されているとまでは断言できませんが、選挙後に雪が降る地域で選挙運動が実際にどのような制約があったのか、今までの衆議院選挙の投票率と比べるなどの検証をするべきです。
国民主権は憲法の前文に掲げられた理念です。選挙で国会議員を選ぶ行為は憲法に書いてある非常に重要な権利。季節や天候によって投票が難しくなる地域がある場合は、それらを考慮した日程で選挙は行われるべきです」
地域によって投票率に格差が生じることに関しては、投票の機会を奪われているとの見方もある。
「『選挙期間の短さ』や『国民の判断材料となる行為の減少』も検証のポイントです。主権者である国民が投票するためには十分な判断材料が必要です。判断材料がなければ誰に投票するか実質的な選択の機会を奪われることになります。短い選挙期間と雪の影響で地域格差があることは事実でしょう。特に掲示板が設置されないことについては重大な問題です」
真冬の超短期決戦となった今回の衆院選。積雪が多い地域では、選挙活動や投票行動に確実に支障を来しており、そうでない地域との格差が生じている。勝敗に物言いがつかないような公平な選挙が望まれる。
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取材・文・写真:白紙緑