〈自宅で女子高校生を監禁、強姦、コンクリート詰めに…出所後、アパートに暮らす元少年を追った「本当にここで暮らしているのか」〉から続く
史上最悪の少年犯罪と呼ばれる「綾瀬女子高校生コンクリート詰め殺人事件」。
【衝撃画像】顔はボコボコ、血まみれに…女子高生が4人の少年たちにコンクリ詰めにされた事件現場の写真を見る
綾瀬事件を取材する「ニュースステーション」ディレクター(当時)の山裕侍氏は、服役を終えた元少年Cの行方を追い、張り込み取材を重ねた末、ついに本人と対峙した。そこでCが語った言葉とは――。山氏の著書『償い 綾瀬女子高校生コンクリート詰め殺人事件 6人の加害少年を追って』より一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/最初から読む)
事件を報しる週刊誌の記事 著者撮影
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「どこかで話を聞けませんか?」
「自分のことで手がいっぱいなんで、悪いけど……」
断られそうな気配。ここは畳みかけるしかない。
「仕事は?」
「しています」
「遺族に連絡はしてますか?」
「してないですね」
「事件を思い出すことは?」
「していますよ、いつも」
Cが立ち止まった。質問に答える気があるようだ。警戒しているが、拒絶はしていない。
「ほかの関係者とはどうですか?」
「会っていない。どこにいるかわからない」
「どんな仕事を?」
「話したくない 」
「短歌とかは?」
「もうしていないですね。今忙しいから余裕がない」
東京拘置所に勾留されているとき、叔母の指導で短歌を習っていた。裁判の被告人質問で弁護士からうながされて披露したこともあった。「減灯後 しみじみ響く セミの声 心和んで なかなか寝れず」。東京高裁は判決のなかで〈本件を反省し、原判決後も弁護人の熱心な指導等により、内省を深め、勉学、読書、短歌などを通じて自省の日を送り、成長の跡が相当に窺えることなど、同被告人のため斟酌できる事情もある〉としていた。
「生活は落ち着きましたか?」
「まだ落ち着いていないですね」
「生活費は自分で稼いでいる?」
「そうです」
「刑務所では刑務作業ばかりで反省する機会がないと言われていますが?」
「それは本人次第じゃないか。ちゃんとやろうと思えばできるし。逆に何も言われないところでちゃんとできれば、それはそれで社会に出てもやっていける。少年院みたいに『君の問題点はこうで、何々を更生しろ』と言われて、いざポンと社会に出るより、何も言われないなかで自分で考えてやるという、そっちのほうが本当に身につきますよ」
刑務所でのことを聞いたら嫌がるかと思ったが、むしろ饒舌だ。
「いろいろと失敗とかもあったけど、やっぱそういうなかで考えたりして、どっちが良いかわからないですよ、それは。だから制度というよりも本人がどうやるかがいちばん。本人が動かなかったら何もならない」
「自分自身は刑務所のなかでいろいろと考えた?」
「あー。まあ、考えますよね、すごい考えますよね」
聞かれたくないことだとわかっていたが、どうしても質問しなければならない。
「被害者に対して申し訳ないという気持ちか?」
「あ、いろいろな自分の生き方とかもあるし……」
二審の裁判でCの担当弁護士は、Cは4人のなかでも最年少で、AやBの指示を受けての犯行において従属的な立場だったと主張した。そして〈犯行後、人間性に目覚めた成長を遂げ、罪の責任の自覚を深め、両親も被害者らに対する陳謝の念を示し、監督、監視の至らなかったことを反省し、同被告人と共に一生をかけての贖罪を誓っている〉として、保護処分が相当だと一審の量刑不当を訴えた。
だが、東京高裁は判決で〈被告人らの中で最年少であり、本件犯行当時15歳ないし16歳であったことなどを考慮しても、同被告人について、保護処分が相当であるとは到底認められず、所論は失当である〉と弁護側の訴えを退け、一審よりも重い懲役5年以上9年以下の不定期刑を下している。
被害者のX子さんを強姦、暴行しただけではない。自室を監禁場所として使うのを承諾したのはほかならぬC自身だ。1988年12月上旬、X子さんが逃走を試み、警察に通報を図ったことがある。腹を立てたA、B、Cが彼女の顔面を多数回にわたり殴った。
12月中旬にはBとCがX子さんの顔面などを手拳で数十回にわたり殴打して、顔面が腫れ上がり変形したのを見て「でけえ顔になった」などと言って笑った。1989年1月4日の死に至る暴行では、CはBとともにX子さんの顔面を回し蹴りし、倒れると無理やり引き起こして、さらに蹴りつけるなどした。彼女は転倒して部屋にあったステレオにぶつかり痙攣を起こした。暴行にはAとDも加わり、4人で次々と顔面、腹部、太腿部などを手拳で殴打し、足蹴りするなどした。Aが1.7キロもあるキックボクシング練習器の鉄製脚部を持ち出し、ゴルフスイングのように太腿部などを力まかせに何度も殴った。B、C、Dらも代わる代わる太腿部などを鉄球で数十回殴打した。
(山 裕侍/ノンフィクション出版)