ハンバーガーチェーン「バーガーキング」の日本事業が約700億円で買収される。
昨年11月、香港の投資ファンド「アフィニティ・エクイティ・パートナーズ」が、アメリカの「ゴールドマン・サックス」に売却する契約を締結。700億円という額は、時価総額・約400億円と言われる大手居酒屋チェーン「ワタミ」や、時価総額・約580億円と言われる長崎ちゃんぽんの「リンガーハット」をも上回る規模である。
バーガーキングは、決して業績不振で安く買い叩かれたなんてことはなく、業績好調ゆえに高値で買ってもらえたということだ。
日本のハンバーガーチェーン業界では、「マクドナルド」の圧倒的な独走が続き、業界2位の「モスバーガー」とも大きな差があるが、近年のバーガーキングは絶好調。
転機となったのは2017年、アフィニティが日本事業を買収したこと。2019年時点では国内で77店舗しかなかった店舗数が、2025年12月30日時点で337店舗まで急拡大。特に昨年の出店攻勢はすさまじく85店舗も新規出店していた。
バーガーキングと言えば“日本上陸→撤退→再上陸→業績不振”という憂き目を見てきた“不遇の王”のイメージが強かったため、正直なところ好調だと聞いてもすぐにピンとこない人も多いだろう。
しかし、現在の日本のバーガーキングはゴールドマン・サックスが700億円の価値があると高評価したのである。いま、企業価値が高く評価されているそんなバーガーキングについて、フードジャーナリストの山路力也氏に解説していただいた。(以下「」内は山路氏のコメント)
まず700億円という買収額について山路氏は「決して割高ではない」と語る。
「買収というのは基本的に、将来どれだけ伸びるか、そこに投資する価値があるかどうかで判断されるものです。そういう意味では、700億円という額は『バーガーキングにはそれだけのリターンが見込める』と評価されたということ。
重要なのは“いまの利益”ではなく、“これからの拡大力”。ブランド力やオペレーション、商品力、そして日本市場でまだ取り切れていない需要を総合的に見て、投資に値すると判断されたのでしょう。不調な会社がこの額で買われることはありません。
一定の成長フェーズで売却するのは、投資の世界では自然な出口戦略です。好調だからこそアフィニティは売り、好調だからこそゴールドマン・サックスは買った。今回の買収は経営不振の救済ではなく、成長企業を次のステージへ進めるための取引だったと言えます」
だがバーガーキングには“苦戦”のイメージがつきまとっていた。
バーガーキングは1993年、「西武商事(現・西武不動産)」が米バーガーキングとフランチャイズ契約を結び、日本市場に初上陸。けれど、それからの歩みは決して順風満帆とは言えなかった。
1996年には「JT」(日本たばこ産業)が事業を引き継いだものの経営は安定せず、2001年には一度、日本撤退を余儀なくされる。その後、2007年に「ロッテ」と経営支援会社「リヴァンプ」の共同出資によって日本再上陸を果たすが、業績は芳しくなく2010年には韓国ロッテリアが運営会社を買収。結果として、約20年のあいだに運営主体は4度も入れ替わることになった。
その原因は“ブランドそのもの”ではなく、“日本での運営のあり方”にあるという。
「これはバーガーキングというブランドの問題というより、日本で展開してきた運営会社側の問題が大きいでしょう。西武、JT、ロッテ系など、いろいろな会社がバーガーキングを手がけてきましたが、共通して言えるのは、その時代に合った明確な戦略を打ち出せなかったことです。
特に不振の原因として大きかったのが、マクドナルドや既存の国内バーガーチェーンに“寄せてしまった”こと。価格帯やサイズ感、商品構成を日本市場に合わせようとするあまり、マックやロッテリアに近づいてしまった。結果として、バーガーキングならではのオリジナリティがぼやけてしまっていました」
本来の強みである直火焼きや大きいサイズは、「日本では受け入れられない」と判断されがちだったそうだが、近年はその前提自体が崩れつつある。
「いまはむしろ、他のバーガーチェーンがやっていないこと――直火焼きパティや大きなサイズ感こそが差別化になる時代です。時代の変化に合わせて、その価値をきちんと打ち出せる運営会社に変わったことが、現在の好調につながったのです」
記事後編は【店舗数急増「バーガーキング」が「モスバーガー」を抜く日…「マクドナルド」を煽る“弱者の戦い方”が強みに】から。
【つづきを読む】店舗数急増「バーガーキング」が「モスバーガー」を抜く日…「マクドナルド」を煽る”弱者の戦い方”が強みに