〈「ベッドの上でバイブが…」60歳を過ぎて“ラブホテル清掃”の仕事を始めた男性が見た『衝撃の光景』〉から続く
ベッドの上では見知らぬ人が使った「器具」がウネウネと動き、中には血痕の付いたシーツも。60歳を超えて仕事と収入が激減した男性が飛び込んだ、ラブホテル清掃の仕事はなかなかハードな内容だった。果たして人生の後半を過ごす上で、この仕事は天職か、それとも――。
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人生100年時代ともいわれる一方、年金制度の先行きが危ぶまれる昨今、60歳や65歳での「リタイヤ」はもはや許されない。私たちは定年退職を迎えた後も、生涯にわたって働く必要がある時代に突入している。とはいえ、老境に入って体力が衰えていても従事できる仕事には、どんなものがあるのだろうか?
これまでフリーライターとして活動してきた神舘和典さんが、60歳を超えて「人生で初めての就職活動」を行い、さまざまな職業を体験したルポ『60歳からのハローワーク』(飛鳥新社)から「ラブホテル清掃員」として働いてみた際のエピソードを抜粋してお届けする。(全4回の2回目/つづきを読む)
人生の後半で飛び込んだラブホテル清掃の仕事、その実情は……(画像はイメージです)RyujiKanda/イメージマート
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「客室のセットアップ、行きますよ!」
ササキさんの号令で、空室になった部屋に向かう。メンバーは、リーダーのササキさん、30歳くらいの女子、ミズモトさん(同)との3人だ。
バックヤードには、セットアップ用のワゴンが置かれている。そこには掃除用具と、補充用のアメニティが載っている。ただし、伊豆のホテルとは内容が少し違う。こちらのワゴンには、歯ブラシやタオルのほかに、コンドームやローションも載っている。コンドームは、スタンダードなタイプが2つ、薄さ0.03ミリのものが1つだ。
3人の役割分担は、一番手間と時間のかかる浴室をササキさん、トイレをミズモトさん。コンドーム、ティッシュ、有線放送のチャンネル設定……などベッド周りのセットアップを日雇いの僕が担当した。その後、クリーナーとフロアワイパーで、床を掃除して、ミズモトさんとのペアでベッドメイクをする。セックスでグシャグシャに乱れているシーツをマットレスからはがし、洗濯済みのシーツに取り替える。
シーツはオスメスの体液のにおいがした。枕カバーも替える。女性の長い毛髪が生々しく2本からまっていた。このホテルでは、シーツやタオルの洗濯は外注していない。バックヤードにある4台の家庭用洗濯機で洗い、乾燥機で乾かし、スタッフがたたんでいる。
洗う人間はプロではない。業務用の強力な洗濯機でもない。当然落ちない汚れがある。
血痕のついたシーツが目立った。夫婦もカップルも生理日は自宅のベッドは汚さずにラブホテルでセックスするのだろう。あるいは生理日でも、性欲が抑えられないのか。
バイブが動いていたのは、最初に入った部屋のベッドだった。お客さんがスイッチを切るのを忘れたのか、あるいはわざとか。バイブにはローションと女性のアソコからしたたった液体がグッチョリついていたが、ササキさんに命じられて消毒した。
ラブホテルは店舗型性風俗特殊営業に定義されながらも、登記上宿泊施設にしているお店が多い。すると、性的な行為に使う玩具を部屋に常備してはいけない。しかし、ここではベッドのサイドに堂々とバイブが設置されている。実はこのバイブ、亀頭状のグリグリを肩や腰に当てると筋肉がほぐれる効果が期待できる。つまり、大人のおもちゃと健康器具の“二刀流”。建前としては、マッサージのために置かれている。
二刀流バイブはこのホテルでは客室の常備品。無料。だからなのか、宿泊客のほぼ半数が利用していた。バイブを愛用するカップルがそんなにいるとは。驚いた。
それにしても、利用したらもともとあったところに戻すなり、せめてヘッドにかぶせたコンドームを取り除いて捨てるなり、本体はベッドの隅やテーブルに置いて部屋を出るのがマナーではないか。しかし、どの部屋でも、使った後はコンドームをかぶせたまま生々しくベッドに放置されていた。
客回転のいいホテルなので、1部屋のセッティングを終えると、すぐ別の部屋へ移動する。次から次へとセットアップしていく。どこかの部屋が空くと、3チームが競うようにそこへ向かう。早い者勝ちでセッティングをする。実に勤労意欲のある職場だ。
移動中に廊下でお客さんと出くわすことも多い。するとワゴンを廊下のはじに放置し、スタッフは近くのカーテンの裏に身を隠し、お客さんがエレベーターに乗るまで息をひそめる。
実作業では、ティッシュペーパーのセットに苦労した。角を三角に折ってケースから取り出しやすいように収めるのだが、なかなかうまく折れない。小学校低学年のころ折り紙を上手に折れなかったことを思い出した。
満室になると、掃除は一段落。スタッフ部屋で洗濯をしたり、バスタオルやフェイスタオルをたたんだり。手を動かしながら横目でモニター画面をチェックする。満室でも新規のお客さんはやってくる。みんな楽しそうだ。幸せそうだ。キャッキャとはしゃいでいる。世代のせいなのか、土地柄なのか、女性が男性をリードして入ってくるケースが多い。女性が料金を支払うカップルも目立つ。
満室のとき、新規のお客さんはエントランスの一角に3部屋あるウェイティングのブースにアテンドされる。空室になりその部屋のセットアップが終わると、ウェイティングしているカップルに館内電話で部屋番号を伝える。ところが、それを待てずに始めてしまう男女もいた。
すると、アニメ声のフロント嬢がやめるように促す。
「お客様、まもなくご案内できますので、お楽しみはもう少しお待ちください」
お客さんはギョッとして、カメラがどこにあるのか、あわてて探している。
〈「ラブホは、他の仕事よりも…」高卒女性や40代女性が“一風変わった職業”を選んだ納得のワケ〉へ続く
(神舘 和典/Webオリジナル(外部転載))