「これで今までの苦労は水の泡だよ。高市さんが、自民党が選挙で大勝できるなんて考えているとしたら、とんだ浅知恵としかいいいようがない」そう自民党の重鎮が吐き捨てる。
<首相、衆院解散検討 2月上中旬投開票>
1月10日付の読売新聞朝刊一面のトップ記事が出る前夜から、ネット版の速報を目にした永田町や霞が関では文字通り蜂の巣をつついたような大騒ぎとなっている。今後の政局の行方にノンフィクション作家の森功氏が迫る。
前編記事『【独占直撃】高市政権「電撃解散」報道の震源地はどこだ!永田町を操る「大物官邸官僚」を直撃した』より続く。
冒頭の発言のように多くの与党、官邸幹部たちは、解散報道は寝耳に水だったという。自民党幹部がこう嘆く。
「今井(尚哉内閣参与)さんが読売のスクープにかかわっているのは間違いないでしょうが、最終的に読売が報じられたのは総理本人から聞いたからではないか。
解散は麻生(太郎副総裁)さんや鈴木(俊一幹事長)さんだけでなく、ほとんど誰も知らなかったから、あるいは右バネ(右翼)のついた総理側近からの話でしょうが、そのせいでまるでクーデターに遭ったような気分で、党内が混乱しています。そのくらいメチャクチャです」
外形的には、高市首相は8日に収録されたNHKの党首インタビューから一転、翌9日に解散に舵を切ったように見える。その9日に首相は、日本維新の会と政府・与党連絡会議を開き、同じ日には木原稔官房長官を交えて国民民主党の玉木雄一郎代表とも会っている。
NHKでは10日、維新の吉村洋文共同代表と国民民主の玉木代表が同じ党首インタビューの番組に生出演。吉村が9日の与党連絡会議で「通常国会の冒頭解散という具体的な日時の言及こそなかったが、高市総理と(解散について)やり取りをした」とする一方、国民民主の玉木代表は「まったく聞いていない」と話した。
仮に吉村の言う通り、自民党幹部にも伝えていないのに、維新という他党の党首と解散についてやりとりしたとなれば、むしろ大問題だ。麻生や鈴木、萩生田をはじめ自民党幹部が怒るのは無理もない。
また国民民主に対しては、通常国会で予算審議に協力する約束を取り付けていただけに、それを放り出して予算の年度内成立をダメにする結果になる。したがって玉木が「聞いていない」と言うのも頷けるが、なにより自民党をはじめ与野党が気にかけるのは、来る総選挙の行方である。
本当に自民は大勝できるのか。
「今度の解散は元宿(仁事務総長)さんの選挙調査をもとに勝てると踏んだからと伝えられていますけれど、去年11月のもので、しかもさほどいい数字ではなかった。その元宿さんも解散については初耳だった。解散は、なぜか高い支持率が続いているあいだにやってしまえ、という確信犯で、予算審議はもとより連立の枠組みまですべてをぶち壊してしまった。これで選挙に勝てるとも思えないけれど、仮に勝ってもイバラの道です」(先の自民党幹部)
2月に予想される総選挙では、すでに立憲民主と公明の選挙協力が始まり、そこに国民民主も合流するのではないか、という観測が流れている。
となると、総選挙後の自民党がとれる連立の選択肢は、今と変わらず維新以外にない。吉村がそこを見据えた上で「解散のやりとりをした」と言っているとも思えないが、自民にとっては選挙後に残る連立相手として想定されるのは参政党くらいだ。
読売新聞をはじめ新聞などは早期解散について「自民単独過半数奪還の好機」とばかりに囃し立ててきた。だが、いざそれが現実となると、甘くない。
12日から総選挙で自民が衆院過半数の233議席を大幅に超える260議席を獲得するという怪文書が永田町に出回っているが、それも意図した情報操作としか思えず、解散・総選挙はとんだ皮算用になりかねない。官邸官僚が描いたシナリオに首相が乗った衆院解散は、政界を大混乱に陥れている。(文中敬称略)
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