家族が亡くなると、通帳や証券口座の名義変更や解約など、さまざまな相続手続きが必要になります。その過程で、高齢の家族が誰にも知らせずに貯金を続けていたり、何十年も使われていなかった口座に思いがけない大金が残されていたりと、家族すら知らなかった“隠れ資産”が見つかるケースも少なくありません。金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2023年)』によると、60代の2人以上世帯では、平均で2,026万円の金融資産を保有しています。「使いきれなかった資産」がそのまま遺産化することもあり、長寿化が進む中、こうした“眠ったままの資産”がどのように扱われるかは、多くの家庭にとって現実的な課題となっています。
「えっ、これ……ばあちゃんの通帳?」
都内在住の32歳会社員・高山沙也加さん(仮名)は、亡くなった祖母の遺品整理の最中に、仏壇の奥から出てきた一通の封筒を見つけました。中には、色あせた銀行の通帳が3冊。いずれも、亡くなる直前まで記帳された形跡がありました。
「祖母は90歳で亡くなりました。認知症も少し進んでいて、晩年は介護付きの施設で暮らしていました。私たち家族は、すでに持ち家も売却して、資産管理も済んだと思っていたんです」
通帳に記載されていたのは、大手都市銀行と地銀の普通預金口座。中には数万円程度の残高のものもありましたが、最後の1冊だけ、明らかに異彩を放っていました。
「記帳を見ると、毎月2万円がきっちりと入金されていたんです。最初は年金かと思ったけれど、口座引き落としの年金受取とは別の口座だったのでおかしいなと」
高山さんがよく見ると、入金元の名義には見覚えのある名前が。
「実は、伯父の名前でした。祖母が『お兄ちゃんは昔から優しい』って言っていたけど、まさか毎月仕送りをしていたなんて…」
伯父に確認すると、20年以上にわたって祖母に“お小遣い”として送金を続けていたとのこと。
「『母さんは年金も少ないし、ちょっとした楽しみにでもなればと思って』と話していました。でも祖母はあまり使っていなかったようで、一部使われた形跡はあったものの、通帳には400万円以上が残っていました」
高山家ではその後、相続手続きの過程で、この通帳の扱いをめぐって少し揉めることになります。
「名義は祖母だけど、入金していたのは伯父。つまり“名義預金”に当たる可能性があるんです」
実際、国税庁の定義によれば、「実質的な所有者と名義人が異なる預金」は、贈与や相続の対象として厳密に判断されるべきとされています。特に相続税の課税対象になるかどうかは、「誰が資金を出したか」が大きな争点になるのです。
「最終的に、家族間で話し合って“祖母の資産”として計上しましたが、こういうケースは、下手したら税務署から指摘されることもあると知ってゾッとしました」
高齢者の預金が家族に知られないまま放置されるケースは、決して珍しくありません。特に認知機能の低下や体調不良により、金融機関へのアクセスが難しくなると、通帳やカードの所在が不明になったり、取引履歴が残らなかったりすることもあります。
いざというときに混乱しないためにも、家族間でお金の管理について話し合っておくことが大切です。