子育て中の保護者にとって、子どもにスマホを持たせる「適切な時期」はいつなのか。平均的な所持開始年齢は年々低下しているが、ITジャーナリストで成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは、そのタイミングと持たせ方に、細心の注意が必要だと語る。(全4回の第2回)
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講演会で保護者から受けるご相談は、大きく二つに分かれます。一つは「既にスマホに依存してしまっている子どもにどう対処すればよいか」という悩み。もう一つは「これからスマホを持たせるにあたり、何歳から始めるのが適切か」という問いです。まだスマホを持っていないお子さんの保護者にとって、いつ、どのように持たせるかは悩ましい問題です。
まず、知っておきたいのは、スマホ、ゲーム、SNSといったデジタルツールは、非常に「ハマりやすい」性質を持っているということです。なぜなら、これらのサービスの多くは、専門家が「1秒でも長くサービスを使い続けてもらうこと」を徹底的に研究して開発したものだからです。
本来、民間企業であれば、社員の人件費や開発費、サーバー代とかかかるはずですが、はじめは無料です。それは、みんなが使えば絶対にハマり、時間を使ってくれ、広告を見てくれて、広告費で“ペイ”できることを知っているから。その後は、課金してくれると自信を持っているんです。
これを知れば、何の準備も対策もせずに無防備な状態で子どもを“この世界”に送り出すことが、いかに大きなリスクかを理解できるはず。「飛んで火にいる夏の虫」とは、まさにこのことです。
何も準備せずに、子どもにスマホを持たせれば、ほぼ確実にその魅力に引き込まるでしょう。結果として、睡眠時間の減少、友人関係の希薄化、学業への集中力低下など、何らかの弊害が生じる可能性があります。
そうならないためにも、最初の段階が何よりも肝心です。親が子どもの特性を理解し、フィルタリングや時間制限といった機能を活用しながら、子ども自身がスマホを賢く使いこなすための手助けをしてあげる必要があります。
では、スマートフォンを持たせる「適切な時期」は、具体的にいつなのでしょうか。
各種調査データによれば、平均所持開始年齢は10歳前後まで低下していますが、個人的には、小学生、特に低学年のうちはまだ早いと考えています。その理由は、単に端末を物理的に管理するのが難しく、破損や紛失のリスクが高いというだけではありません。高価なデバイスの価値を正しく理解し、責任を持って大切に扱えるほど、成熟していないからです。
もし一つの目安を挙げるとすれば、中学受験などの大きなライフイベントが一段落し、生活リズムが整った中学1年生のタイミングが考えられます。逆に、最も避けるべきなのは受験期に持たせることです。新しい刺激に夢中になってしまい、勉強に支障をきたす可能性が極めて高いと言えます。もし受験を控えているのであれば、その時期は避け、合格後や新生活が始まってから導入することをお勧めします。
もちろん、小学生のうちから塾や習い事の連絡手段として、通信機器が必要になるケースもあるでしょう。その場合は、機能が限定されたGPS付きの防犯ブザーや、通話とSMSに特化したキッズ携帯で十分対応可能です。どうしてもスマホを持たせる必要がある場合でも、「塾への行き帰りの連絡用」など、目的を明確にして管理しましょう。
そして、スマホを持たせる際、重要となるのが、親子間での「契約」、すなわち家庭内ルールの設定です。これは、使い始める前に行うのが鉄則です。一度自由に使える状態を経験させてしまった後で制限を加えようとしても、子どもは強い抵抗感を示し、なかなか納得してくれません。
持たせる前に、親子で「なぜ今、スマホが必要なのか」を一緒に確認することから始めます。例えば、部活動が始まると、練習日程や集合場所の変更といった連絡がグループLINEで頻繁に共有されるようになり、「持っていないと不便だ」という具体的な状況が生まれます。こうした必要性を共有することが、最初のステップです。
次に、親として「勉強がおろそかになるのではないか」「夜更かしをして生活リズムが崩れるのではないか」といった懸念を正直に伝えます。その上で、「こうした心配をなくすためには、どうすれば良いと思う?」と問いかけ、利用時間や場所、アプリの追加といったルールを子ども自身に考えさせ、提案させるのです。
子どもが自ら考え、主体的に決めたルールであれば、納得感を持って守ろうという責任感が芽生えます。
もちろん、スマホを使い始めた後で、「利用時間をもっと長くしてほしい」「新しいアプリを使いたい」と希望することがあります。その際は、親子で話し合いながら「確かに塾が終わるのが遅くなったから、利用終了時刻を夜9時から10時に変更しようか」といった形で、状況に応じて柔軟に見直していけば良い。最も大切なのは、一方的にルールを押し付けるのではなく、親子が継続的に対話を重ね、共にルールを運用していくことなのです。
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第1回【「やめなさい」は逆効果…スマホ依存の子に言ってはいけない「NGワード」と心理的ワナ】では、子どもをスマホ依存から守る方法を伝えている。
高橋暁子(たかはし・あきこ)成蹊大学客員教授、ITジャーナリスト。SNSや情報リテラシー、スマートフォンやインターネットに関連する事件・トラブルとその対策を専門とする。NHK「あさイチ」「クローズアップ現代+」などメディア出演多数。元小学校教員であり、高校生の母でもある。近著に『スマホで受験に失敗する子どもたち』(星海社新書)などがある。
デイリー新潮編集部