東京・赤坂の個室サウナ「SAUNATIGER」で火災が発生し、夫婦2人が死亡した問題で日テレNEWSとFNNプライムオンラインは12月17日、警視庁が司法解剖を行い、結果は「死因不詳」だったと速報で伝えた。これに紀藤正樹弁護士は自身のXに「死因不詳という場合は極めて異例」と投稿した。一方で、2つの記事は警視庁が死因を「高体温症死か、焼死の可能性が高い」と見て捜査を進めているとも報じた。(註)
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【写真】「現場は悲惨な状態に…」 火災現場となったサウナの個室
捜査が進むにつれ、被害者夫婦が個室サウナに閉じこめられ、極度の暑さに苦しみながら死亡した状況が浮かび上がってきた。担当記者が言う。
「火災が発生した個室サウナではドアノブが外側も内側も外れて下に落ち、夫婦は中に閉じ込められてしまいました。非常用ボタンは備え付けられており、押された形跡は残っていました。しかし『SAUNATIGER』のオーナーは警視庁に『非常用ボタンからつながる受信盤は、2年前ごろから電源を入れたことがない』と説明しています」
助けを求めても何の反応もない。1分1秒、耐えがたい暑さが夫婦を襲う。何とか個室サウナから脱出しようと、2人は懸命の努力を続ける。
「暑さを少しでも和らげようとしたのでしょう、現場にはスノコが立てかけられていました。さらに夫の手には皮下出血があり、扉のガラス戸を拳で必死に叩いた跡も残っていました。また現場には燃えたタオルが残されていたのですが、これも意図的にサウナストーンの上に置いた可能性が浮上しており、一部メディアが捜査関係者の話として報じています。個室サウナの中には高温の感知器があり、夫婦はこれを火災報知器と誤解。煙や火が出れば消防に通報されて、助かると考えたかもしれないというわけです」(同・記者)
被害者夫婦は個室サウナの入口付近で折り重なるようにして倒れていた。しかも夫は妻の上に覆い被さっていたという。複数のメディアが「夫は最後まで妻を守ろうとしていたのだろう」と報じた。
医師で医学博士の加藤容崇氏は、がん遺伝子検査と病理が専門。さらにサウナ愛好家としても知られており、サウナが健康にもたらす効能についても研究を重ねてきた。「日本サウナ学会」の設立者の一人であり、代表理事を務めている。
死因が不詳との発表に、加藤医師は「まだ司法解剖を行っただけで、顕微鏡検査など詳細な検査までは進んでいないため、今のところは不詳ということだと思います」と言う。
「被害者のご遺体を解剖し、司法解剖した医師が肉眼的に(顕微鏡ではなく)見て調べたという段階で『死因不詳』だと発表したのではないでしょうか。極度の熱中症で死亡した場合、高体温と脱水で全身の臓器がダメージを受けるという『多臓器不全』が死因というケースがあります。この多臓器不全が起きたかどうかを診断するには顕微鏡検査が必要です」
現場から燃えたタオルが発見されたほか、サウナ室の背もたれや壁にも焦げた跡が残っていた。そのため消防関係者を中心に「一酸化炭素中毒で死亡した可能性があるのではないか」との推測が出ていた。
「一酸化炭素中毒で死亡すると、皮膚がピンク色になります。この色で死因を推測するわけですが、室温など状況よってはピンク色は消えてしまいます。被害者のご夫婦は現場から救出され、搬送先の病院で死亡が確認されました。この時点でピンク色が消えていた可能性があると思います。いずれにしても現場の状況から考えると、個室サウナに閉じこめられたことで重度の熱中症に陥り、意識を失って倒れてしまった可能性が考えられのではないでしょうか」(同・加藤医師)
フィンランドは自他共に認める“サウナ王国”であり、そのために死亡例の研究も進んでいるという。
「飲酒したにもかかわらずサウナに入ったり、中で眠ってしまったり、失神したりして死亡した事例が蓄積され、それを解析した論文がフィンランドで発表されています。サウナで熱中症が重篤化すると、極度の脱水状態となって血液の循環量も不足していきます。そして『循環喪失』の状態になると、最短15分ほどで死亡してしまうことが報告されています。循環が止まると、まさに食用の生肉を60度から70度の温度で調理したのと同じ状態になってしまうわけで、そのまま放置すると全身の皮膚が焼け焦げてしまいます」」(同・加藤医師)
あまりの暑さに夫婦が「熱失神」を起こして意識を失ってしまえば、脱水症状も血液循環量の減少も悪化する一方になってしまう。そして「循環喪失」が起きると、残された時間は15分もない──。
被害者の夫婦は2時間コースを選んだことが分かっており、午前11時から午後1時まで利用する予定だった。そして火災報知器は正午過ぎに鳴った。
「報道でもドアノブが注目されています。私も様々なサウナを体験しましたが、ドアノブが使われている出入り口は一つも見たことがありません。これだけでも安全性を考えると大問題ですが、百歩譲って非常用ベルさえ動いていたならば、ご夫婦が亡くなるという悲劇は防げたはずです。さらに通常のサウナ施設ならば、様々なアクシデントに対応するためのマニュアルが作成されており、その内容を研修などで確認しています。果たして『SAUNATIGER』はマニュアルを作成していたか、どのような研修を行っていたのかも捜査してほしいと思います。警視庁は業務上過失致死罪も視野に入れていると報道されています。確かに私から見ても運営会社の安全意識に問題があったと判断せざるを得ず、“人災”と批判されても仕方がないのではないでしょうか」(同・加藤医師)
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註:「【速報】赤坂のサウナで2人死亡火災 司法解剖の結果『死因不詳』-警視庁」(日テレNEWS:12月17日)は《焼死や高体温症死の可能性》、「【速報】サウナで死亡の2人の死因『不詳』も熱中症か焼死の可能性高いと判明…従業員不在で業務上過失致死の疑いも 警視庁」(FNNプライムオンライン:同)は《熱中症か焼死の可能性が高い》
デイリー新潮編集部