旧統一教会から資金提供を受けた政治家9人「教団に“弱み”を握られた」状況か

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岸田新内閣発足後も閣僚と旧統一教会との関係が次々と明らかになっている。カルト問題を取材してきたジャーナリスト・鈴木エイト氏がジャーナリスト・藤倉善郎氏協力のもと、旧統一教会と金銭の授受があった国会議員30人の実名をリストにまとめた。自民党が27人と圧倒的に多い。このうち「政治資金を教団に貢いでいた」政治家が22人だ。
【リスト、写真8枚】石破茂氏、下村博文氏らの名前がある旧統一教会や関連機関との間に金銭授受があった議員。他、カルト問題を取材する鈴木エイト氏、萩生田氏など 一方で、「教団関係者から資金提供を受けていた」政治家が9人いる(「貢いでいた政治家」との重複1人含む)。

石破茂・元幹事長は同教団の関連団体・世界日報の元社長から10万円の寄附を受け、下村博文・元文部科学相も世界日報の元社長から6万円の寄附を受けた(教団側への会費支払いもある)。下村氏はそれまで教団の名称変更を認めなかった文科省(文化庁)が、突然、名称変更を認証した当時の大臣であり、関与があったのではないかと疑惑が指摘されている人物だ(本人は否定)。 また、末松信介・前文科相は教団関係者からパーティー券を購入してもらっていたことを公表し、他に高木宏壽・代議士も教団の関連団体・世界平和連合から25万円分のパーティー券購入を受け、野党では玉木雄一郎・国民民主党代表が世界日報元社長から3万円の寄附を受けた。 旧統一教会は日本の信者から多額の寄附を吸い上げ、日本を資金源としてきたことで知られる。その教団が「票」だけではなく、関係者や関連団体を通じて日本の政治家に資金まで提供するのは、よほどの狙いがあるのではないか。 しかも、教団から資金提供を受けているのは有力政治家が目立つ。鈴木氏は、教団側は資金提供によって政治家の“弱み”を握ったと指摘する。「社会的に批判を受けてきた旧統一教会には、有力な政治家に資金面でも協力することで、政治的に教団を守ってもらおうという組織防衛の意図はもちろんあると思う。それは単にスポンサーになるということではありません。旧統一教会関係者から資金提供を受けることは政治家にとってもリスクがある。露見すれば今回のように批判を浴びるからです。 教団側にすれば、資金提供することで、“当法人からお金をもらいましたよね”とその政治家を揺さぶるカードにも利用できるわけです。政治家と旧統一教会の関係がここまでクローズアップされたことは、教団が隠し持つ政治家揺さぶりのカードがより強くなっていると見ることもできる」 リストに挙げた政治家と教団側の金銭のやり取りは“氷山の一角”と見られる。 政治資金規正法では、パーティー券の購入は20万円までは政治資金収支報告書で購入者を公表しなくていい。パー券を小口に分けて購入するのは、献金を明らかにしたくない企業や政治家の常套手段だ。今回、末松前文科相が旧統一教会関係者から4万円分のパー券購入を受けていたことを公表したのは、岸田文雄・首相が内閣改造前に各大臣に同教団との関係を調査するように指示したからに他ならない。 明るみに出ていないケースはまだまだあるはずだ。 旧統一教会問題を長く調査してきたジャーナリストの有田芳生氏が同教団の政界工作の一端をこう指摘する。「私が入手した教団の内部資料には、女性信者を中心とするPRチームが国会でのロビー活動で毎月500万円を使っていたという記載がある。そのお金はどう使われたのか。教団の政界工作資金についてはまだほとんど解明されていません。これから国会でも徹底的に調べる必要がある」教団側から巨額の報酬 旧統一教会の政界工作は日本国内だけにとどまらない。 この8月12日、旧統一教会の関連団体「天宙平和連合(UPF)」がソウルで開催した国際会議で安倍晋三・元首相の追悼セレモニーを盛大に行なった。 会議にはカナダのハーパー前大統領、米国のポンペオ前国務長官らが出席し、トランプ前大統領がビデオメッセージで「安倍元総理の暗殺は恐ろしい犯罪であり、地球全体にとって最悪な損失です。彼は良き友で、偉大な人物だった」と語った。 UPFが昨年開いた会議にはトランプ氏とともに安倍氏もビデオメッセージを寄せ、山上容疑者はその映像をネットで見て安倍氏を標的にしたという指摘もなされている。同教団は昔から、各国の元首経験者クラスの政治家を招いて国際会議を開き、世界のVIPを“広告塔”として利用してきたことで知られる。 この追悼セレモニーの翌日、TBSは米国統一教会の元幹部アレン・ウッド氏の重大な証言を報道した。「ブッシュが大統領の任期を終えて韓国に講演に行ったときは1回のスピーチにつき100万ドル(約1億3000万円)を支払いました。レーガンにも1回100万ドルを支払いました」(8月13日付TBS NEWS DIG) 旧統一教会の国際イベントに出席したVIPには教団側から巨額の資金が提供されていたというのだ。教団の国際的な政界資金工作のすさまじさを物語る。 日本からも過去、少なくない政治家が同教団の国際イベントに参加したり、メッセージを送って“広告塔”になっていたことが明らかになっている。 そうした政治家たちは、本当に同教団からの謝礼を受けたことがないのかという疑問が浮かぶ。疑惑を持たれないためにも、国民にしっかり説明する責任があるはずだ。※週刊ポスト2022年9月9日号
一方で、「教団関係者から資金提供を受けていた」政治家が9人いる(「貢いでいた政治家」との重複1人含む)。
石破茂・元幹事長は同教団の関連団体・世界日報の元社長から10万円の寄附を受け、下村博文・元文部科学相も世界日報の元社長から6万円の寄附を受けた(教団側への会費支払いもある)。下村氏はそれまで教団の名称変更を認めなかった文科省(文化庁)が、突然、名称変更を認証した当時の大臣であり、関与があったのではないかと疑惑が指摘されている人物だ(本人は否定)。
また、末松信介・前文科相は教団関係者からパーティー券を購入してもらっていたことを公表し、他に高木宏壽・代議士も教団の関連団体・世界平和連合から25万円分のパーティー券購入を受け、野党では玉木雄一郎・国民民主党代表が世界日報元社長から3万円の寄附を受けた。
旧統一教会は日本の信者から多額の寄附を吸い上げ、日本を資金源としてきたことで知られる。その教団が「票」だけではなく、関係者や関連団体を通じて日本の政治家に資金まで提供するのは、よほどの狙いがあるのではないか。
しかも、教団から資金提供を受けているのは有力政治家が目立つ。鈴木氏は、教団側は資金提供によって政治家の“弱み”を握ったと指摘する。
「社会的に批判を受けてきた旧統一教会には、有力な政治家に資金面でも協力することで、政治的に教団を守ってもらおうという組織防衛の意図はもちろんあると思う。それは単にスポンサーになるということではありません。旧統一教会関係者から資金提供を受けることは政治家にとってもリスクがある。露見すれば今回のように批判を浴びるからです。
教団側にすれば、資金提供することで、“当法人からお金をもらいましたよね”とその政治家を揺さぶるカードにも利用できるわけです。政治家と旧統一教会の関係がここまでクローズアップされたことは、教団が隠し持つ政治家揺さぶりのカードがより強くなっていると見ることもできる」
リストに挙げた政治家と教団側の金銭のやり取りは“氷山の一角”と見られる。
政治資金規正法では、パーティー券の購入は20万円までは政治資金収支報告書で購入者を公表しなくていい。パー券を小口に分けて購入するのは、献金を明らかにしたくない企業や政治家の常套手段だ。今回、末松前文科相が旧統一教会関係者から4万円分のパー券購入を受けていたことを公表したのは、岸田文雄・首相が内閣改造前に各大臣に同教団との関係を調査するように指示したからに他ならない。
明るみに出ていないケースはまだまだあるはずだ。
旧統一教会問題を長く調査してきたジャーナリストの有田芳生氏が同教団の政界工作の一端をこう指摘する。
「私が入手した教団の内部資料には、女性信者を中心とするPRチームが国会でのロビー活動で毎月500万円を使っていたという記載がある。そのお金はどう使われたのか。教団の政界工作資金についてはまだほとんど解明されていません。これから国会でも徹底的に調べる必要がある」
旧統一教会の政界工作は日本国内だけにとどまらない。
この8月12日、旧統一教会の関連団体「天宙平和連合(UPF)」がソウルで開催した国際会議で安倍晋三・元首相の追悼セレモニーを盛大に行なった。
会議にはカナダのハーパー前大統領、米国のポンペオ前国務長官らが出席し、トランプ前大統領がビデオメッセージで「安倍元総理の暗殺は恐ろしい犯罪であり、地球全体にとって最悪な損失です。彼は良き友で、偉大な人物だった」と語った。
UPFが昨年開いた会議にはトランプ氏とともに安倍氏もビデオメッセージを寄せ、山上容疑者はその映像をネットで見て安倍氏を標的にしたという指摘もなされている。同教団は昔から、各国の元首経験者クラスの政治家を招いて国際会議を開き、世界のVIPを“広告塔”として利用してきたことで知られる。
この追悼セレモニーの翌日、TBSは米国統一教会の元幹部アレン・ウッド氏の重大な証言を報道した。
「ブッシュが大統領の任期を終えて韓国に講演に行ったときは1回のスピーチにつき100万ドル(約1億3000万円)を支払いました。レーガンにも1回100万ドルを支払いました」(8月13日付TBS NEWS DIG)
旧統一教会の国際イベントに出席したVIPには教団側から巨額の資金が提供されていたというのだ。教団の国際的な政界資金工作のすさまじさを物語る。
日本からも過去、少なくない政治家が同教団の国際イベントに参加したり、メッセージを送って“広告塔”になっていたことが明らかになっている。
そうした政治家たちは、本当に同教団からの謝礼を受けたことがないのかという疑問が浮かぶ。疑惑を持たれないためにも、国民にしっかり説明する責任があるはずだ。
※週刊ポスト2022年9月9日号

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