安倍晋三・元首相が2022年に銃撃されて死亡した事件で、殺人罪などに問われた無職山上徹也被告(45)の第14回公判が4日、奈良地裁であり、山上被告は安倍氏の妻、昭恵さん(63)ら遺族に対し「非常に申し訳ないことをしたと思っています」と初めて謝罪した。
事件に関して「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者には意味があった」と独自の意見を述べた一方、安倍氏を殺害したことについて「間違いだった」とも語った。
被告人質問は5回目のこの日が最終日。前日に出廷していた昭恵さんは、法廷に現れなかった。山上被告は、約45分間にわたる弁護側の質問の最後、ゆっくりとした口調でこう述べた。
「昭恵さんを始めとして、安倍元首相のご家族には何の恨みもありません。私も肉親を亡くした経験があるので、弁解の余地はありません。非常に申し訳ないことをしたと思っています」
教団を巡っては、東京地裁が今年3月に解散を命じる決定を出すなどし、社会の批判が高まっている。被告は「私としてはありがたい。世の中にとってもあるべき姿ではないかと思います」とも述べた。
検察側の「事件を起こしてよかったと思っているか」との質問には、「少なくとも教団の被害者にとっては意味はあったが、全体として考えると、色々なことが関わってくるので一概には言えない」と答えた。「事件を起こすことで報道されたいという考えはあったか」と問われると、しばらく黙った後、「その方が教団に打撃を与えられるという意味では、あったと思う」と語った。
23年4月には、和歌山市で岸田首相(当時)の演説会場に爆発物が投げ込まれる事件が発生。SNSを中心に山上被告とは別に安倍氏を狙った人物がいたとする誤情報も広まっている。
裁判官からは、罪との向き合い方や今考えていることを尋ねられ、被告は「選挙中の襲撃事件の模倣犯を生むことにつながっているように思いますし、陰謀論ですとか、自分が行ったことに原因があることと思っていますので、非常に責任は重いと思っています」と述べた。
「安倍元首相が殺害されなければいけなかったのは、間違いだったと思っております」とも語った。
次回期日は18日で、検察側が論告求刑、弁護側が最終弁論を行い、結審予定。判決は来年1月21日に言い渡される。
被告人質問に先立ち、起訴前に山上被告の精神鑑定を担当した大阪赤十字病院の和田央(ひさし)医師の証人尋問が行われた。
和田氏は22年7月~23年1月、被告と計21回面談した。尋問での説明によると、被告は、安倍氏を標的とした理由について、「日本の教団関係者に乱射すると確実に僕が悪くなる。あえて安倍氏にした」などと述べた。一方で、「傷を負わせる程度でよかった」とも語ったという。
和田氏は鑑定結果として、被告に精神障害は認められないとした上で、「被告の人柄と家庭状況が事件を引き起こした」と説明した。